あらすじ
SFマガジンに掲載された「宇宙ラーメン重油味」「たのしい超監視社会」をはじめとした、『横浜駅SF』で話題の、SF界若手最注目の奇才による初短篇集。全六篇収録。
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『横浜駅SF』で鮮烈なデビューを飾ったSF界の鬼才、柞刈湯葉の短編集。
ジョージ・オーウェルの名作『1984年』を大胆にオマージュした「たのしい超監視社会」、消化管のある奴は全員客!と宇宙人に合わせた美味しいラーメンを提供するラーメン屋が題材の「宇宙ラーメン重油味」、部屋に突然巨大な岩が現れた男を描いた「記念碑」など、全6篇のユーモラスな短編小説を収録。
中でも私がいちばん好きなのは、表題作の「人間たちの話」です。
火星で見つかった、メタンを生成する岩。果たしてこれは、"生命"ということができるのか?人類と宇宙生命のファースト・コンタクトなのか?という議論と、姉の子供と暮らすことになった研究者の生活。この二つを軸に"他者"というテーマを描き、科学的な面白さだけでなく、少ししんみりとした人間ドラマとしての面白さも楽しめる珠玉の作品です。
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短編集
ジョージオーウェルの1984を彷彿とさせる現代版監視社会の作品やルネマグリットの記念日を題材にした作品など、好きなものがテーマになっている作品がありとても好きな小説でした。
タイトルになっている人間たちの話も大好きです。
とても読みやすくどの年齢層にもオススメできそうです。
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柞刈湯葉の空想世界を巡る旅。
SFはジャンルとして初読だった。凝りすぎたSF設定、インテリうんちく、長尺の小賢しい自分語りに「やれやれ…」と思っていると、人間社会への風刺に加えて心に響かせる文学性が隠れている。
現実とは広く乖離した世界の中に妙に現代的でリアルなテーマが隠れている。胸を撃つ言葉がある。
難易度はそこそこ高い。彼の世界を楽しみながら漂流して「これって実は…」を発見して欲しい。
Posted by ブクログ
短編集。収録作品は以下の6編。
●冬の時代
●たのしい超監視社会
●人間たちの話
●宇宙ラーメン重油味
●記念日
●No Reaction
この中で元々読んだことがある作品がある。2025年4月に読んだ『ベストSF2021』(竹書房)というアンソロジーに『人間たちの話』が入ってた。この短編を単独で読んだとき「火星に生命がいるかというSF的な話の合間に、人間関係が希薄な30歳独身男性と12歳少年が家族になろうとする。いいはなし。」という印象を持った。でも、この作品は元々アンソロジーのためではなく2020年に出版された『人間たちの話』というこの短編集のために書き下ろしされた作品だったらしい。
この短編集、収録作品の解説を作者が自分で書いている。私は出版文化には詳しくないけれど、作者自身による解説が収録されているって新鮮。
一つ一つの話は完全に独立した話だけれど、収録順にはとても作者の意図を感じた。
作品が書かれた年代的には最後に収録された『No Reaction』が一番古い。作者はこの作品を書きあげた時に「もしかして自分は商業作家になっていいのではないか」と思ったらしい。この小説は主人公が透明人間で、不透明人間(=ふつうの人間)の社会で色々な苦労を重ねている。透明人間がいくら奮闘しようとも透明人間は声まで透明なので誰にもその声は届かない。でも不透明人間に届かなくても意思はあるし、自分のような透明人間にも気づかれない「超・透明人間」がいるかもしれないから彼らのために自分の思いを言葉にし続けたいという願いを主人公は持っている。
私はその透明人間の独白を「ふんふん。そうなのかぁ。」と受け止めることになる。読者だからだ。
何かの作品を読むにあたって、私は決して作者に読者の期待を全部背負って創作活動して欲しいわけではないけれど、もし作者が読んでいる人の事を時々意識してくれてるとしたら嬉しいもんだなぁ、と思った。
私、「超・透明人間」みたいな存在だったら良いなぁと。
短編集を通して読むと『人間たちの話』がアンソロジーで読んだ時と印象が少し変わってくる。孤独なもの同士が寄り合う話じゃなくて、自分とは違う、別のものと言葉を交わす事が出来た時のひっそりとした喜び、みたいなものがある。外国人に言葉が通じた時みたいな。最初から読後感の良い話だったのがさらに味わいが良くなって本当に良かった。
皮肉が頻繁に挟まれながらも文体が軽やかで読みやすく、どの作品も自分とは違う存在への憧憬が感じられて気持ちが軽くなるような読後感があった。それでいて6編とも全く違う設定の話なのでバラエティに富んでいる。素敵な一冊だった。
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『記念日』はカフカ『変身』と村上春樹『TVピープル』と似た香りがする。といっても、冒頭の不条理さと巨大な石を他人が意に介さない挙動にそれを感じただけであるが。
『変身』は10代に読んだことあまりにも有名な書き出ししか印象に残っておらず、結末の方向性(ハッピーorダイ)も覚えていないにもかかわらず引き合いに出す豪胆さ。
『TVピープル』は直近に読んでいるし、あるPodcastでも話題に出ているのを聴いてる。ラストの不穏さが不気味である。
翻って『記念日』はなぜか前向き。明らかな不条理に巻き込まれているのに、最後には親近感すら感じておりなんだかハッピーな終結。岩の存在によって正気のない世捨て人感がある主人公に人間味がちょい足しされる。
無機質な岩との内省的なコミュニケーションによって人間として生きてることの実感が生まれて、さらには死に向かう現実を真っ向から見据えてみようという意識の変化がうかがえる。
ということで、『記念日』が一押しかというとそうでもなく、『No Reaction』も『たのしい超監視社会』もえぐ面白い。その他の作品も。概して全作品に人間の業を抉ってくるシニカルさがある。読みながらハッと息を呑む。
日常にモヤモヤとする言語化未満の感情を抱えている皆さまには、ぜひ手に取ってハッとしましょう。
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SF短編小説集。
元々が科学の素養のある著者であり、現象をわかりやすく文章に組み入れることで、すっと内容が入ってくる。
それでいて、それぞれの作品に個性を持たせていて心地よい読後感だ。程よいシニカルさとエンタメ。
それにしても、「豚兄弟」には笑った。
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柞刈湯葉先生の作品を初めて読みました
自分を合っているのかどれも読みやすく楽しめた
お気に入りは記念日
大きな岩=恋人(家族捉えても良さそう)と解釈した
主人公に対してそんな風に見るなよと思う一方でそうかもとも思う
特にワンルームでは一人増えるとプレッシャー(?)という意味では大きな岩一つに相当するかも
にしてもあれはコミュニケーションとか取れてるのか?
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面白かった!好きなタイプのSFでした。
どのお話も、その世界のごく一部、ひとときを切り抜いただけ、のようなショートストーリーで、どの世界もこれからも続いていきそうなところがとてもいい。
私たちの今生きる世界とはちょっとだけ違う世界をちょろっと覗いて、おもしろ〜と呟いて、また現実に戻ってくる感じ。
少女終末旅行っぽさがある「冬の時代」、ポップなSF感のある「宇宙ラーメン重油味」、主人公の考え方が面白い「人間たちの話」
が特に好きだった。
読み終わってから見る表紙のイラストがまた格別。
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1.「たのしい超監視社会」がよかった
監視社会といえば、ディストピアのようなイメージがあったがそれのパロディ的になっている面白さがあった。実際に現実に監視社会を構築しようとすると予算やリソースの問題もあるし1人の権力者が力でねじ伏せる感じではなく、相互監視社会になるのかもね。どんな環境でも慣れていって、たのしく過ごしていきたいね。
2.なにかが起きそうで起きない
「冬の時代」と「記念日」は何かが起きそうで起きない感じが勿体無いというか、なんというか。続きを読者にまかせて想像させる技法かもしれないが、、、普通に続きがあっても面白かったと思う。短編の良さでもあり、物足りなさでもあるかな。
3.表現がよかった
訳本じゃないし現代の本だから圧倒的に読みやすい。「一酸化水素」って表現いいよね。中2っぽいSFな感じがする。それに対して、「宇宙で光速度が普遍」というのは許せない。「不変」の誤植かな。
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著者の作品を初めて読みました。ラノベタッチで読みやすく、短編ごとに設定が凝っていてそれぞれもっと読みたかったです。
漫画化するといいかも? 他の作品も読んでみたくなりました!
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SFの短篇ってアイディア勝負な世界だと思ってて、「たのしい超監視社会」はその面では秀逸だった。
他はアイディアとしては普通だけど、作者の生物学的な視点からみた人間に対する解釈とか考え方が結構おもしろかった。
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「宇宙ラーメン重油味」「たのしい超監視社会」という短編のタイトルから、奇抜でブッ飛んでるハイテンションな短編集を期待しましたが、どちらかというと、しっとりと落ち着いた感じの作品集でした。
しみじみと一番好きだなぁと思ったのは表題作の「人間たちの話」。(当初期待していたような)楽しい気持ちになる話ではないのですが。著者の柞刈湯葉先生は元・生物学者なのだとか。物語の主人公が「地球外生命体が発見されるとしたら、そこは会議室だろうな」(うろ覚え)みたいなことを考えてるのが、リアルな感じしました(笑)。
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普段考えないようなことを身近なところから気づかされる作品だった。
死ぬことは機能である。という考えは前向きに死をとらえる。というよい気づきになった。
それぞれの短編がそれぞれ面白かった。
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すごい深みのある作品というわけでも、すごい科学技術を描いているというわけでもないが、不思議に読後感は悪くない。
ちょっとだけシニカルな視線が小気味よい。
この人の他の作品を読みたくなった
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SFとは想像力を広げるものだ。著者の方の見える世界には脱帽でまだ私の頭は狭いものだと気付かされ、同時に自分だけの世界ではないことに改めて感じる。
監視社会をテーマに書かれたものは今の自分の常識を考えなおさせてくれる気づきになった。
どれもそうだが基本的には楽しく読めて読んだ後に深さを感じられる、自分の中でこのような世界となれば自分はどう感じるのだろうか?どう生きるのだろうか?と反芻できるものは、とても良い作品に出会えたのだろうと思う。
科学的なことが多く書かれているものもあって、そこは物語よりそっちに引っ張られることもあったので読むためには科学的な知識があればより楽しめるんだろうなとも思った。
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SF短編集、完全にジャケ買い。
以前読んだハードな(硬派ではなく難解な)SF短編集と比べてしまうのは申し訳ないが、読みやすく、登場人物の思考や人物像も明確で、没入して読むことができた。キャラクターがいきいきしている物語は読んでいて楽しい。
得体の知れない事物が物語の最後にどうなってしまうのか、気になって読み進めることができるのがこの短編のいいところで、短編だからこそ長すぎずこのワクワク感が適度に持続した状態で結末を迎えてくれるのが好み。
柞刈湯葉 他の作品も読んでみたい。
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SF短編だけど面白かった。
「たのしい超監視社会」みたいな作品を読むたびにジョージオーウェルの1984を読んでて良かったなって思う。他の作品もなかなか良かったように思いました。作者の名前覚えとこ。
Posted by ブクログ
表題作「人間たちの話」が衝撃だった。
プロローグやエピローグの部分は、端的にいえば、人間の悩みなんて宇宙から見ればちっぽけなものというのと近いと思う。
しかし、プロローグでその伏線を張り、生命や家族の定義について深く議論し自分も一緒になって苦しんだ上で、エピローグで改めて突きつけられると、まるでそのことに初めて気付かされたような感覚があった。
また、それでもこれは「人間たちの話」であり、宇宙からどう見えようと人間たちにとっては預かり知らぬ話なんだとも思った。
Posted by ブクログ
柞刈湯葉のSF短編集。
「水域」そっくりで懐かしさすら覚える椎名誠オマージュの「冬の時代」、地球外生命の「発見」が人間のアイデンティティに帰着する表題作などを含む全6篇。
一作ごとに気持ちを切り替えないといけない短編集は個人的にものすごく苦手にしていて、今作もあまりのめり込めなかった。
ただし作者には注目しているので、今後は長編だけ読んでいくことにしたい。
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たのしい超監視社会が好きでした。
今のわれわれの感覚からすると行き過ぎた監視社会、実現しそうで怖いです。
イデオロギーから異なるとお互いを理解する難易度が跳ね上がりますよね。
監視社会云々より、こういったすれ違いの避けられなさが伝わってきて何とも言えない気持ちになりました。
Posted by ブクログ
子どもの頃星新一を良く読んでいたことを思い出しながら読んでいた。
発想や舞台設定が重要になるSFにおいて短編というスタイルは相性が良いのだろうか?
タイトル通りSF世界で生きる人間に焦点を当てた作品なのでSFを普段読まない人にも読みやすいと思った。
Posted by ブクログ
科学ってリアルで現実的で、空想とは対極に位置するような印象だったけれど、リアルを知っているからこそ、そこから空想が広がっていくのだなと思った。対極ではなく延長上だったのか、と。これがSFかと感心した。
Posted by ブクログ
SFを集めているからなのか不思議な味わいの作品が多かった印象。
設定としてはたのしい超監視社会が好きだった。
この設定の世界(戦争は嫌だが)ならうっかり楽しく生きてそうな自分が想像できる。
No Reactionも割と好きな展開だった。
Posted by ブクログ
柞刈湯葉の作品は、どれも打率が高いと感じている。打席に立てば3割4分くらい打つバッターの印象だ。
本作にしても短編集なのにどのお話にもオリジナリティがあり、SFだしエンタメでもある。
小川哲に近いものを感じる。
小川哲、柞刈湯葉、宮内悠介の3人は仲良くなれると思う(私とではなく、3人でという意味で)。実際、小川哲と宮内悠介は仲が良いらしい。
兎に角、SF短編でサクッと楽しみたいなら読んでみると良い。
星は3つ。3.7くらいある。
Posted by ブクログ
宇宙人やテクノロジーといったワクワクあるいは恐々とするものにフォーカスするのがSFというジャンルの王道。
にもかかわらず、<人間たちの話>とは、どういうことなんすか?
という不可解な気持ちで読み始めた短編集。
感想としてはたしかに、表題作もそれ以外の作品も、全編通して人間たちの話でした。
氷河期の日本を旅する二人組、国による超監視下にあるのになぜか幸せそうな人々、宇宙開発に独自の冷めた目線で臨む研究者、異星人を相手にラーメンを作る料理人、部屋に現れたでかい岩と共同生活する青年、不透明人間にひたすらぼやいていく透明人間。
世界観や設定のユニークさよりも、そこに生きている人間たちがどう思って、どう動くのかにスポットが当てられているように感じました。
こんな世界もありえそうだな、という共感みたいなものが、ややこしい科学的説明だけではなく、キャラクター起点で沸き起こってくるような。
決してSF要素薄味なわけではなく、深いテーマも尖った設定も盛り沢山だけど、あくまで人間側に寄り添って描かれているからこそ、読んでいて疲れないし自然に感情が入ってくるような作品でした。