あらすじ
日本は「夢の新薬」を守れるのか?
研究の果実を狙うアメリカ。せめぎあう欲望と倫理。〈神の領域〉に踏み込んだ科学者たちの運命は――。
国家の競争に巻き込まれてゆく「フェニックス7」。
一方、研究施設周辺では、謎の失踪事件が頻発していた。
真相を追う刑事はその全貌に戦慄する。
果たして、生命の神秘という神の領域に、我々は拙速に突き進んでよいものだろうか。
真山仁が放つエンターテインメントの新境地、驚愕の結末へ!
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Posted by ブクログ
脳細胞を再生させる新薬。残念ながら、完治するわけではない。一時的に発症前の状態に脳を戻せる。有効期限は数年、その後は死を迎える。この薬は、日本で承認されるだろうか?
恐らく日本では承認されない。治験も消極的。半面、海外(USAなど)では、承認、実用化される、きっと。
この違いは何だろうと、悩む。誰のための新薬か、と。苦しんでいる患者ともっと苦しんでいる家族のためには誰も動かない?のか。「99%成功していても、最後の1%で、多くの開拓者が壁に立ちはだかられ破滅していく」のとおり、日本は壁だらけなのかもしれない。
「未承認の薬があったら、使用するか」と、主人公が父に問うが、一蹴される。少なくとも、自分の母親の痴呆を死を受け止めているハズなのに。やはり、医者の立場としては、勧められないのかもしれない。けど、自分で使うなら…。
きっと、私は使用を躊躇わない。人間としての尊厳は死守したい。外国で合法なら、渡航してでも、と。
短くても、人間らしい最期を、と考えるのは罪悪ですか。現実を直面していない戯言でしょうか。
Posted by ブクログ
読書備忘録609号(上下巻)。
★★★★。
下巻終わって・・・、まあいい感じで終わりました。
アルツハイマー病を治す奇跡の人口万能幹細胞(IUS)フェニックス7。IPS細胞の上級グレード細胞ですね。
主なプレイヤーは以下の通り。
①アルキメデス科学研究所:奇跡の新薬としてフェニックス7の開発を東大先端生命科学研究センターと連携して進めている。
②政府:国家の威信を掛けて日本の経済再生プロジェクトとして後押しする。
③アメリカ:フェニックス7に対し政治介入して奪うことを画策する。
④宮城県警:アルキメデス科研の所在地、宮城県で高齢者の行き倒れ死を捜査する。
ここからは完全なネタバレ。
アルキメデス科研の理事長氷川はアルツハイマー病家系であり、自分もその兆候が現れていることで焦り、フェニックス7の開発を加速させたい。
ただ、フェニックス7は処方後に脳細胞の増殖が止まらなくなり、脳を破壊することがあるという問題を抱えていた。
その解決の為には原因因子を特定するため人間を使った治験(人体実験)が必要。アルキメデス科研所長の篠塚は、徘徊老人を拉致しフェニックス7を処方することで闇の治験を進める。しかしやはり脳の膨張で死者が出てしまう。もともと徘徊老人であることから、死体をそれらしく遺棄する。
徘徊老人の行方不明事件から数か月後に、死体で発見されることに違和感を覚えた宮城県警は最終的にアルキメデス科研の闇に行きつく。
捜査の手が伸びてくるアルキメデス科研。人間での治験を米国に移すことを画策する氷川。フェニックス7は日の目を見るのか!それとも司法の手に掛かって消滅するのか!という感じです。
徘徊老人はフェニックス7の処方でボケる前の状態を凌駕するくらい回復する。どうせボケが進み死ぬ運命だった老人たちは無条件に感謝する。例え副作用で死ぬことになったとしても・・・。
これは人助けなのか?神の領域に踏み込んだ犯罪なのか?
最後の終わり方はなるほど!あるかも知れないなぁ、と思わせるものでした。