【感想・ネタバレ】組織―――「組織という有機体」のデザイン 28のボキャブラリーのレビュー

あらすじ

50にのぼるグローバル企業、公的組織をデザインした
元マッキンゼー東京支社長の集大成!

戦略による差別化が限界に達した現代の、
組織の本質を語る。

著者は東京大学で建築を学び、ハーバード大学で都市デザインを研究、マサチューセッツ工科大学(MIT)でMBAを取得。建築事務所を経て、マッキンゼーに入社。同社で2002年まで東京支社長を含め活躍し、国内外の無数の企業の組織デザインに関わった人物です。同社を退職後は、経済産業研究所、メガバンク、産業再生機構、東京大学をはじめとする大学など、さまざまな営利・非営利の組織に関わり、中でもビジネススクールを持たなかった東京大学で、エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)を立ち上げ、企画・推進責任者として、既存の大学のビジネススクールとは一線を画すプログラムを成功させたことで知られています。

本書は、国内外の無数の組織に関わった著者のエピソードを交え、強い組織のポイントをユニークなフレーズ(ボキャブラリー)を中心に説明します。経営者、管理職、リーダーにとって参考になるフレーズが必ず見つかります。(以下例)

◎「『小さな幸せグループ』こそが、組織の変化を阻害する大問題である。」⇒日本の組織の、まじめで正確なオペレーションを実現しているのは、出世に興味はなく、自分のやり方とペースで仕事をこなし、日常生活の中に楽しみを見つけている少人数のグループ。ところが、組織改革の場面では彼らが最大の障害となる。

◎「『性怠惰説』に基づく組織をデザインせよ。」⇒日本人はまじめだが、「見られていない」と感じると堕落する性質を持っている。「性善説」「性悪説」でもない性怠惰説に基づく組織づくりが重要だ。

◎「座りにくい椅子を用意する。」⇒座り心地を悪くすると、座っているよりは組織内を動き回まわって、今それまで会わなかった人に自分から出向いて行って会い、情報を手に入れるようになる。組織外にも出かけて行き、お客さんにより頻繁に会うようになる。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

元マッキンゼー東京支社長の横山氏の「組織デザイン」についての本。「組織論」ではない。氏の「組織デザイン論」の全体像を示したこと自体に意味がある。

主体を誰にするか、ガバナンスの観点、パーパスなどの位置付けなどいろいろと自分なりには、付け加えたいところが出てくるが、それこそボキャブラリーを増やすことはもとより文法を改変することも視野に入れてよい。

以下、意訳も含め、各章にコメント。

組織をデザインする目的は、人の行動を変えること・・・つまり変革論
・人の行動を変えること、すなわち行動変容こそが組織を変える目的である・・・そのとおり
・組織をデザインする上で重要なのはボキャブラリー・・・本書では28ある
・ほとんどの組織のデザインが、素人仕事・・・これは致し方ない面もある
・「小さな幸せグループ」こそが組織の変化を阻害する大問題・・・「性怠惰説」の裏返しか
・「外界との接点」からの発想を最優先すると、優れた組織になる・・・大事
・「性怠惰説」に基づく組織をデザインせよ・・・組織は、ほっておくと何もしない方にいく
・「優しいが実は冷たい」組織ではなく、「厳しいがどこか温かい」組織を志向する
・組織ごとに異なる「体内時計」は能力差につながる・・・「時間による差別化」は、やはり重要
・座りにくい椅子を用意する・・・フォーシングデバイス

組織デザインはプロフェッショナル組織である
・組織の「美意識」に注目する・・・大事
・企業カルチャーは最大公約数にすぎない。各部門にはサブ・カルチャーが存在する
・組織は隅から隅までデザインしてはいけない・・・玄人ならではの視点
・「問題意識」では人は行動を起こさない。「いつまでに」という時間軸を持たせて、「危機意識」に昇華させる・・・「デッド」ラインの重要性
・組織図をいじることが組織デザインだと勘違いする人が多すぎる
・過去、現在、未来を通じて「正しい」組織を求めない。変化できる組織を志向する
・組織は永続しないもの、そう割り切る方が賢明である
・組織デザイナーには戦略立案時に考えるべき二つの落とし穴がある・・・戦略とは「強みへの立脚」であり、また「コインの裏返し」ではない

マッキンゼーの7Sを組織デザインに使う
・マッキンゼーの組織の7Sは、組織の問題を採集・整理する枠組みとして使う・・・チェックリストとして使う
・戦略執行体制としての組織には、デザインする手順がある
・都市デザイン同様、組織においても「ミニ・プラン」アプローチが有効である
・マッキンゼーの7Sのうち、最優先すべき「S」は、シェアドバリューである

意思決定システム、業績モニター評価、人材育成が組織の3要素である
・組織の意思決定システムをデザインしなおすことには、大きな戦略的価値がある
・どんな評価であっても組織に不満は出る。「(評価対象者を)よく見た評価」でありさえすればよい
・「人材重視」のはずの日本の組織だが、実際は人材育成がおざなりである

組織デザインの普遍性、時代性
・組織図の箱、線、配置の意味するあいまい性を理解せよ
・ネットワーク型組織を一般解とするのは危険である。それを成り立たせる特殊状況を棚上げしてはいけない
・組織デザインは4段階に発展する。 ハード論=[実体論=形態=組織の箱→〈機能論=機能のパーツ→構造論=機能のパーツの集まり〉]→ソフトウエア論=OS?

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2021年05月03日

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