あらすじ
小さなセミに秘められた、壮大な進化の物語
アメリカに、13年、あるいは17年に一度だけ何億匹も大量発生し、
数週間だけ凄い声で鳴き交わして死んでゆく、へんてこなセミがいます。
どうしてそんなに長い間地中にいるの? 13年と17年なのはなぜ?
いったい「素数ゼミ」って何ものなの??――
イラストもふんだんでわかりやすい、子どもから大人まで楽しめる科学読み物です!
<目次>
1章 アメリカの奇妙なセミ
不思議な生き物、セミ
50億匹のセミ!?
2章 小さなセミの秘密
アメリカ中がセミだらけ?
謎を解くカギは「気温」?
とてつもない時代「氷河時代」
3章 セミの歴史を追って
祖先ゼミの受難
不幸中の幸い「レフュージア」
奇妙な性質のはじまり
4章 素数ゼミの登場
13と17の秘密
「素数ゼミ」の登場
魔法の数字の不思議
5章 そして、現代へ
長い旅の末に
終わりに――「進化」ってなんだろう
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Posted by ブクログ
漢字 大人レベル
フリガナ あり(ごく一部)
文字の大きさ 小
長さ 長い(126ページ)
出版年 2005年
内容 13年あるいは17年周期で羽化する「素数ゼミ」の謎を解明する。
感想 一見難しそうに見えるが、とても読みやすい。最小公倍数など多少の算数の知識は求められるものの、著者の語り口が易しく、前提となることを何度も繰り返し説明してくれるので、算数や理科に苦手意識があってもついていけると思う。生き物の不思議と、突き詰めて研究することの面白さに目を開く一冊。
Posted by ブクログ
素数ゼミについてずっとフシギに思っていたこと――なぜ北アメリカだけなのか? なぜ周期が13年や17年と長いのか? そしてなぜ素数年なのか? そうした疑問がこの1冊で氷解。
子どもにもわかるように書かれているが、内容は高度。なかでも、挿まれている図表が重要な役回りをはたしている。文章だけだったら、理解にかなりの時間がかかったかもしれない。
著者は数理生態学が専門。アメリカでの研究生活も長い。他の生物学分野が専門で、日本にいたのなら、この積年の謎は解けなかったかもしれない。それにしても、見事な謎解き。
Posted by ブクログ
昆虫の学会で、若い研究者さんたちを優しく導く、著者の吉村仁先生、ナイスです!
この本は、そんなやさしさあふれる?吉村先生のロングセラーです。ページ数も少なく、フリガナ付き、やさしく読みやすく、小中学生以上にピッタリ。まるで30分の科学ドキュメント番組をみているようです。
石森愛彦さんのイラストもすばらしい!
読んでよかった。素数ゼミ(周期ゼミ)は知っていましたが、基本のとこ、誤解していることが多かったです。
わたしが誤解していたことは、1.サイズが普通のセミと同じ、2.全米に生息、3.全米で発生年がそろってる、4.アメリカには素数ゼミしかいない、など。そんなことなかったです。
吉村先生は、「素数ゼミの謎」を理解しやすいように「3つの謎」に分解し、それを順々に説明されています。
昔から13年と17年周期で現れる「素数ゼミ」は、ふつうに知られていたようです。
吉村先生はその現象に「地球の壮大な歴史」と「数字」の視点で論理を組み立てて、素数ゼミの進化のミステリーに解決の道筋をつけられました。パラダイム・シフトですねぇ。
この本は1996年「アメリカン・ナチュラリスト」に寄稿された論文がもとになったそうです。この本が出版された2005年でも、すべてを説明できているわけではないようですが。
吉村先生は、この研究の端緒を、「セミを調べることで「地球の壮大な歴史の不思議」と「数字の不思議」がわかる」からと書かれています。なんか後付けのように感じてしまいます(笑)
「数字」については、わずかな差が大きな違いになるため、生き残りの可能性を緻密に計算されたのでしょう。
では「地球の壮大な歴史」は?吉村先生はどうしてこの着想を得られたのでしょうか?これは「吉村仁の謎」ですね(笑)
いずれにせよ、孤独な集団である「周期ゼミ」と、孤独な数字である「素数」を、吉村先生が「進化」で結び付けた大傑作でした。
Posted by ブクログ
すごくわかりやすく、納得のいくような説明で面白かったです!
元々読みたくって、学校の図書室で探していたら、ありました。図も入ってるし、内容もまとまっていて「こういうことだからなのか!」と読んだら、すぐわかりました。絵も細いけど可愛くて好きです。
あまり長くないので軽く読めます。
Posted by ブクログ
13年、17年周期に大量発生するセミの謎。言ってしまえばそれは生き延びてきた結果なのかもしれませんが、お話は氷河期まで遡りはては数学のお話にまでなってそれをかつ小中学生に分かりやすく説明されてとてもロマンがあって面白かったです。
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今年の夏ももう終わり。夏といえば、ここ一週間で元気な鳴き声が聞こえなくなったセミ。セミといえば、13年あるいは17年に一度だけアメリカの一部の地域ごとに大量発生する「素数ゼミ」という奇妙なセミの秘密が本書で解明されている。
そのような周期で成虫し、地方で億単位の匹数で発生する数種類のセミ。それまでは、ジッと地中で、その時を待っている。その謎を日本人の科学者が初めて解いたもの。
「素数」という言葉に得も言われぬ抵抗感がある方もいるが、これらのセミは、氷河時代を乗り越え、まさに「風雪に耐える」を幾度も経験しているため、絶滅を回避してきた逞しさがヒシヒシと伝わってくる。
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僕はこの本を読み終えて、素数ゼミについて今よりも詳しくなりたいと思いました。文字だけでなく、イラストもあったのでよりイメージが湧きました。さらに、なぜそのセミが13年または、17年に登場するのかが、素数の性質を使った物だったので驚きました。
Posted by ブクログ
素数ゼミは13年のものと17年のものがいます。
アメリカ全土で13年または17年周期にセミが一斉に羽化するわけではありません。
今年はこの地域の素数ゼミが羽化して、来年は別の地域の素数ゼミが羽化するという具合です。
幼虫の期間が長い理由は気温の影響です。
これは氷河期が影響しています。
気温が低いと成長に時間がかかりますし、寒いと幼虫の間に死んでしまう個体も増えます。
そうなりますと、羽化してもまわりに仲間がいないため繁殖の機会が得られないケースも出てきます。
そこで、氷河期と言えども盆地など比較的暖かい場所に、素数ゼミは固まって生息するように進化していきました。
次は発生のタイミングです。
バラバラのタイミングで羽化したのでは、羽化したときに仲間の数が少ないくては繁殖の機会は減ってしまいます。
そこでタイミングを合わせて羽化するようになりました。
それでは、なぜ13年や17年なのか?
元々、北部では14~18年周期のセミがいて、比較的暖かい南部では12~15年周期のセミがいたそうです。
15年周期のオスとメスからは15年周期の子ゼミが生まれ、18年周期のオスとメスからは18年周期の子ゼミが生ます。
しかし、セミには繁殖相手が何年周期のかはわかりません。
もし周期の違うオスとメスが交雑すると、子ゼミは周期がずれてしまいます。
(たとえば15年周期のオスと18年周期のメスから17年周期の子ゼミ生まれるなど)
周期がずれて羽化したセミは繁殖の機会を得られずに、死んでいきます。
こうして、なるべく交雑せずに世代を経た種のみが生き延びます。
交雑は発生周期の最小公倍数の年に起こります。
そうなると発生周期が素数であるほうが最小公倍数が大きくなり、交雑の回数は少なくなります。
これが現代に13年ゼミと17年ゼミが残った理由だそうです。
Posted by ブクログ
アメリカに、13年周期、17年周期で大量発生する、素数ゼミと呼ばれるセミがいるそうです。
なぜ、13年と17年という素数の周期で、いっぺんに同じ場所で大量発生するのか?その謎に迫った本です。
地球の歴史と生命の進化の関係の壮大さと、壮大な中にある完璧な法則性に、感動しました。
Posted by ブクログ
TV番組で紹介されていて、面白そうだったので読んでみました。素数自体も不思議な存在なので、素数で出てくるセミもとても不思議だったけれど、そうなるためにものすごい時間をかけて、進化してきたんですね。こんな風に他の生き物についても勉強したくなりました。
Posted by ブクログ
いやー,おもしろい本でした。しかも,納得させられてしまいました。
・13年と17年周期に出てくるセミたち
・なんでこの期間なのか。
・なぜ,同じ場所で大発生するのか
について,一つ一つそのなぞを解いていきます。
素数と言えば,「1と自分自身しか約数を持たない数」のこと。5年生の算数で習います。素数同士の最小公倍数は,そうじゃない数同士よりも結構大きめの数となります。これが,このセミが生き残ってきた原因でもあるのではないか…というのです。
これ以上話をするとネタバレになるのでよくないので,やめておきます。
ま,ドキドキしながら,著者の理論を読んでみてください。
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素数ゼミの存在は前から知っていたが、なぜ素数ゼミがとりわけ注目されるのか、別に素数でなくてもいいんじゃないか?という私の疑問に答えてくれた本書であった。結論を知って私の考えの浅はかさを思い知った。生物とは悠久の時をかけて進化しているのだと。つまり、彼らの存在のキーとなるのは昔の地球環境であると理解した。彼らは、長い時間をかけて淘汰を勝ち残った強者だと感心した。
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進化のロジックが数理によって解明されていく、数理生態学という学問の楽しさと数学の美しさに詰まった本。
読むまでは、「数学」と「生態学」がどう結びつくのか見当がつかなかったが、数学苦手な自分にも、児童向けのやさしい説明で(ざっくりと)理解できた。
久々に数学がやりたくなった。
Posted by ブクログ
13年または17年ごとに大発生するという、素数ゼミ。なんで他の素数ではなく13年、17年なのか?という話。
なんとなくその周期になった訳ではなく、ちゃんと理由があると言うことが、わかりやすく解説されていました。
小学生でも、本を読み慣れた子なら4年生くらいから読めそうです。
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13、17年おきに大量発生する素数ゼミの謎を分かりやすい言葉とイラストで紹介する本です。なぜ素数なのか?なぜ長く地中で暮らすのか? 様々な疑問を丁寧に解き明かします。
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子どもがどうしても読んでほしいというので読みました。わかりやすかったです。まだ小1だったので、ところどころかみ砕いて読んだのですが、最後まで集中して聞いていました。
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北米の「13年ゼミ」や「17年ゼミ」は知っていましたが、なるほど、素数ゼミとはうまく名付けたし、実際に「素数」であることが意味を持っていることを平易に解き明かしてくれていて、面白く読めました。
著者の吉村さんは数理生態学が専門とのことなので、実際には様々な数理モデルを駆使して解明したのでしょうが、この本ではうまくかいつまんで説明してくれています。
私自身は数理生態学が専門ではありませんが、私の出身研究室は数理生態学の分野ではおそらく日本で一番有名なところで、私が在学していた当時の教授も優秀な数理生態学者でした。農学部だったので、害虫の発生予測を数理モデルにして、被害が出る前に対策することが一つの目標です。したがって「モデルによって得られる結果をいかに平易に現場(農業従事者)に伝えるか」も当然、重要なテーマだと思います。(教授はその点でも優秀だったと思っています)
この本の著者のように、うまく伝える科学者がもっと増えるといいな、と思いました。
ちなみに行動生態学・進化生態学的にも、興味深い材料だなー、と感じました。
Posted by ブクログ
数学は苦手だ。はっきり言って算数からダメだった。しかし、この本を読むと数、数学というものの果てしない魅力の一端を知ることが出来る。
数学は嫌い。でも謎解きは好き。という人にはオススメ。
こういう、苦手な物の魅力を教えてくれる本に早く出会っていたら、もっと人生の幅が広がっていたかもなぁ…と後出しみたいな感慨もわくのである。
Posted by ブクログ
13年と17年に一度、大量に発生する「素数ゼミ」。
なぜ同じ場所で繰り返し大量発生するのか、なぜ一定の周期で羽化するのか、なぜこんなに長い間羽化しないのか…
これらの疑問に「進化」=繁殖と交雑という視点から考察しています。
中学生くらいでも読める文体と量。
生命の進化の凄さを感じますが、文末にもあったように、近年の人間による急激な環境の変化に彼等が対応できるか、少し心配です。
Posted by ブクログ
生き残りのための選択肢。知らないセミだけど、彼らは生き残るために自然に選択している、
あれこれ理屈を捏ね回さなくても、長い時間をかけて自然に進化している。生命ってそして素数って不思議。
400匹のセミの写真がちょっとだけ気持ち悪い。
挿し絵もリアル。子供の時はセミは捕まえられるくらい平気だったのに、久しぶりにみたら、絵でもなかなか。
Posted by ブクログ
多分子供向けの本だと思うんですが、ずっと家にあったまま読むこともなかったので思い切って読んでみました。
夏の苦手なものの1つであるセミの話ですが、かなり興味深かったです。ずっと昔から生き延びてきたセミって凄いなとしみじみ。
Posted by ブクログ
アメリカには、幼虫である期間が13年と17年(どちらも素数年)であるセミがいる。ところが、12、14、15、16年の幼虫期間をもつセミはいない。このなぞに迫ったのがこの本である。実に明快なロジックを使いなぜ、13、17年なのかを解説してみせ、なかなか面白いが、ロジックの破綻ポイントである「なぜ、11年や19年ではないか」にはまったく触れないという二流学者のやり口がちょっと残念。