あらすじ
失踪した公安警察官を追って、鑓水、修司、相馬の三人が辿り着いたのは瀬戸内海の離島だった。山頂に高射砲台跡の残る因習の島。そこでは、渋谷で老人が絶命した瞬間から、誰もが思いもよらないかたちで大きな歯車が回り始めていた。誰が敵で誰が味方なのか。あの日、この島で何が起こったのか。穏やかな島の営みの裏に隠された巧妙なトリックを暴いた時、あまりに痛ましい真実の扉が開かれる。――君は君で、僕は僕で、最善を尽くさなければならない。すべての思いを引き受け、鑓水たちは力を尽くして巨大な敵に立ち向かう。『犯罪者』『幻夏』(日本推理作家協会賞候補作)に続く待望の1800枚巨編!
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Posted by ブクログ
太田さんの3人組ラスト!鑓水1番好きだからとても楽しかった。
戦時中こんなことがあったんだなと。私が当事者だったら、国が大丈夫って言ってるし、みんな残るし、みたいな正常性バイアスで逃げれないだろうな。
現在のメディアにいたとしても長いものに巻かれて動けない側だと思うから、ちゃんといけないことはいけないしこれは違うってわかってて動いてくれる人たちほんとかっこいいし尊敬する。
鑓水が適当なこと言いながら適当な態度で、ちゃんと修司や他の人のこと守ってあげてるのがかっこいいー!
最終章めちゃくちゃ泣けた。
Posted by ブクログ
怖かった…
ここ数日、アフリカのホームタウン問題に、アメリカのチャーリー・カークさん、フランス、ネパール、ドイツ…世界中がえらい事になっているのにTVでは全然報道されない。
というかここ数年TVの報道の在り方に疑問が生じてもうそれほどTVを付けていない。
だから、今生きている現実と本があまりにもリアルすぎて怖かった。
正直、TVの言っていることを鵜呑みにしてのほほんと生きていられた頃に戻りたい。
でもそんなことしてたら、また気付いた時には何も言えなくなっている時代に戻ってしまうんじゃないかという恐怖もある。
今はTVも新聞もネットの情報も全てどこかに何かに忖度しているんだろうと疑いの目をもって見ている。
正しい情報を得る力が欲しい。
それに負けない強い精神力が欲しい。
戦時中の描写も生々しくて本当に怖かった。
入り込みすぎて出口が分からなくなった頃にふっと時代が現在に戻る。そこでハッと気付いてようやく息ができる。
こんなに読んでいて怖かったのいつ以来だろう。
この本はフィクションだから、ホッと終わるけど、現実世界、まだ間に合うのか⁉︎間に合ってほしい!と祈りながら本を閉じた。
Posted by ブクログ
フィクションとしてもちろん面白かったですが、戦時中の話は読んでいて胸が苦しくなりました。そして、この3人のシリーズはどれを読んでも面白いです。
Posted by ブクログ
相変わらず社会派ミステリーとして圧倒的な読み応えと面白さでした。
報道の自由が奪われていき、弾を補充するように人の命が投入されては消えていった戦時の話の数々を通して、「今現在があの時にどんどん近づいていっていないか?」という警鐘を鳴らす作品。
社会派作品としてのメッセージ性の強さや素晴らしさはもちろん、ストーリー展開もすごく良い。
文量がかなりあるけれど、中盤から終盤にかけて頁をめくる手がどんどん早くなるし、止まらなくなる。太田愛先生の作品らしく今回もまるでドラマを見てる時のような、ハラハラドキドキを味わえました。
やっぱり太田愛先生はすごまじい…『犯罪者』も『幻夏』も良かったけれどこちらの作品もすごくすごく良かった。読み終わったあと、なかなか余韻が抜けなかったです。
あと鑓水、相馬、修司のキャラクターや関係性がとても良く、読んでいるうちに愛着が強まって同シリーズをもっともっと読みたくなりました。
これだけ重厚感ある話が続いていると、次の作品も自然とハードルが上がってしまい執筆が大変だとは思うのですが…。それでもシリーズの続きを強く期待しています。
Posted by ブクログ
戦時中、国民総動員に向かうプロパガンダとして、新聞や放送などジャーナリズムが国家によって操作されていくことの恐ろしさをまざまざと感じた。
結局、あの大戦はだれが向かわせ誰にとって有益なものだったのだろう。日本中を焼け野原にし数百万人を死に至らしめ、学ぶことも個人の意思もすべて取り上げられ、飢えや病が蔓延した時代。
加害者も被害者も大きさの違いはあれど・・・
真実を知りながらも公安という組織が日本中を統制し、声を上げられなかった人々はその罪を抱えながら戦後を生きていく。
焼け野原に降り立ったのは米人だったが、もしアメリカがこなかったら日本はロシアか中国に支配されていたのだろうかと思うと、空恐ろしくなる。
そして、奇跡の復興を果たした日本の好景気を後押ししたのが、対岸の朝鮮戦争であったということも悲しい現実だったのだ。
私たちが知らないうちに国家によって統制していくようなことが悲しい現実にならないよう正しいものを見極める知恵を持たないといけない。知識ではなく知識を。
立ち向かった3人の男性たちと、罪を忘れずに戦後を真摯に生き抜いた人たちと警察や国家権力との攻防に引き込まれた数日間だった。