あらすじ
失踪した公安警察官を追って、鑓水、修司、相馬の三人が辿り着いたのは瀬戸内海の離島だった。山頂に高射砲台跡の残る因習の島。そこでは、渋谷で老人が絶命した瞬間から、誰もが思いもよらないかたちで大きな歯車が回り始めていた。誰が敵で誰が味方なのか。あの日、この島で何が起こったのか。穏やかな島の営みの裏に隠された巧妙なトリックを暴いた時、あまりに痛ましい真実の扉が開かれる。――君は君で、僕は僕で、最善を尽くさなければならない。すべての思いを引き受け、鑓水たちは力を尽くして巨大な敵に立ち向かう。『犯罪者』『幻夏』(日本推理作家協会賞候補作)に続く待望の1800枚巨編!
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Posted by ブクログ
上下巻に及ぶ長編社会派ミステリー、言論、報道の自由について考えさせられる。下巻は所々涙腺が緩んだ。
曳船島編では白虎の判明が明らかになり戦時中の過去が明かされる。報道の制限から始まり偽報道の蔓延、気がつけば言いたいことも言えない世の中の悲惨さの失敗から正光達が命を賭け行動に移した理由が分かり胸が熱くなる。
真実を報道する番組のメインキャスターに清廉潔白な人気者が携ることに対し、国民のコントロールが効かなくなると邪魔と判断した人間を社会的に抹消する政治家、そこと繋がる警察。リアルでも沢山あるのかもしれないと思うし報道されたことだけを信じるのではなく、そこから一歩自分で考えて意見を持ちたいと気づかされた。
子供達の笑い声を守るため。鑓水達3人組とその周りの登場人物達みんなカッコよかった、、!
Posted by ブクログ
(上下巻とも感想内容は同じ)
本書は<鑓水、修司、相馬>が活躍する3部作の最後のシリーズ。前2作品は既読。このシリーズのこの3人組(!?)が大好きで、シリーズ最後のこれを読んでしまったらあとがなくなる、それは寂しすぎる!! との思いから、読むのを先延ばしにしまくってきた本。最近作者の本を調べたら、この後に数冊新作が出ていて、そちらの方も評判は上々だったので、だったらこの本を安心して読める…と、読むことにした。
いや~、相変わらずすばらしかった。
本書では3人組のうち鑓水に焦点が当たっているのも、鑓水をいちばんのお気に入りにしている私にはうれしい内容になっていた。が、先の戦争=太平洋戦争を絡めているだけに、あの軽薄っぽい鑓水が実は…とシリアス度全快。
そうなんだ、鑓水はクオーターだったんだ。と、これまでの内容と合わせて鑓水のキャラクターに妙に説得力があった。
抜群のストーリーテリングは流石としかいいようがない。謎の提示の仕方も丁寧。そして上巻から下巻への超ロングパスも奇麗にきっちりと回収されている。
巻末の参考文献の量を見て、まあ、絶句しました。半端ない覚悟でこの作品に望まれた太田愛さんの心意気をそこに見た思いです。
いつかぜったいに再読間違いなしの本書と言い切れます。
鑓水たちにはまたいつかお目にかかりたいものですが、いかがでしょうか、太田さん。
ネットで調べてみたら、戦後の渋谷にたしかに存在していたんですね、ひばり号。写真が上がっていました。
◆私の覚書◆
下巻
p42
死んだ仲間の時間は若いままで止まってる。生き残った人間は歳を取って、仕事や家庭を持って、白髪ができて、お祖父ちゃんと呼ばれるようになって。あの老人たちが死んだ仲間と一緒に歌える歌は軍歌だけなんだと思うと、あれもひとつの鎮魂の形なんだと思えるようになった。
p44
海軍将校だった鑓水の祖父は、時枝や正光、白虎、松林たちと戦ったのだと思った。正光秀雄が生きた時代は、鑓水にとって教科書の中の歴史ではなく、祖母を通して直接鑓水の現在に繋がっているのだ。
p451
そもそも言論の自由ってのは、為政者の側が国民に保障するものであって、あちら様が振り回すもんじゃないでしょうが。
===データベース===
生放送に映った不審死と公安警察官失踪の真相とは?感動のサスペンス巨編!
白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。正光秀雄96歳。死の間際、正光はあの空に何を見ていたのか。それを突き止めれば一千万円の報酬を支払う。興信所を営む鑓水と修司のもとに不可解な依頼が舞い込む。そして老人が死んだ同じ日、ひとりの公安警察官が忽然と姿を消した。その捜索を極秘裏に命じられる停職中の刑事・相馬。廃屋に残された夥しい血痕、老人のポケットから見つかった大手テレビ局社長の名刺、遠い過去から届いた一枚の葉書、そして闇の中の孔雀……。二つの事件がひとつに結ばれた先には、社会を一変させる犯罪が仕組まれていた!? 鑓水、修司、相馬の三人が最大の謎に挑む。感動のクライムサスペンス巨編!
Posted by ブクログ
ものすごく重く現代人が見なくてはいけない話だと思った。
最初はただのミステリーで結末がどうなるのかに注目していたが、物語の確信は現代の報道についての啓蒙と実際にあった事実を元にした警告だった。
平和ボケしていて、まさかそんな、と思うようなことが80年前当たり前に行われていて言論の自由を奪われ戦争に駆り出されていたことを思うと、情報の大事さや、現在の戦争をしている国でも同じようなことが起こっているのだろうと思わざるを得ない。
特に情勢が不安定な現代、メディアの情報操作について改めてきちんと目を見張っておかないとまた悲劇が繰り返されるという恐怖も感じた。
そんな警告を訴えながらも物語としても引き込まれ、最後まで飽きずに読み進められる文才は本当に素晴らしいと思う。
Posted by ブクログ
天上の葦、上下巻読み終わったのでまとめて感想を。
老人がスクランブル交差点で天を指差して死亡ふるという印象的なシーンから始まり、終わりまでずっと物語に引きつけられた。おなじみの3人が公安に追われることになり、犯罪者、幻夏以上に緊迫した状態が続く。
そして、何よりも印象に残ったのは戦争描写。今まで色々と本を読んだりドラマや映画を見たりしてきたが、1番戦時下の状況がリアルで、夢にまで出てきて途中で読むのを休憩したほどだった。今回のテーマは報道であり、国から報道が規制されることの危機感、危険性を真っ向から取り上げている。戦時中に徐々に報道の自由が失われていった過程と、国からの発表を信じて亡くなっていった人たちの悲哀が凄まじい。第二部のここ、読むのきつかった。SNSが発達した今、そんなことは起こり得ないと思っていたけれど、メジャーな報道機関は簡単に抑えられてしまうのかも。そして個々で発信をしている人たちは、デマにも流されやすい。世論を動かすことなどやろうと思えば簡単にできてしまうのではという恐ろしさを感じる。小さな火のうちに消さなければ何もできなくなってしまうという言葉が何回も出てきているが、国民一人一人が自分たちの暮らしのためにその意識をもっていかないと恐ろしい状況を招きかねないことの警告のように感じる。
交差点で亡くなった正光や、曳舟島の老人たちが必死で守ろうとしたもの、これは戦争を経験していない私たち世代も絶対に守っていかなければならないものだと思う。
Posted by ブクログ
傑作。過去二作と比しても圧倒的な面白さ。
正光の不可解な死の理由が戦中のプロパガンダにあった事が強い説得力を持って明かされる。日本人にとっての戦争が如何なるものだったかが、様々な登場人物の過去を回顧していく中で詳らかになるが、特に勝利のエピソードは落涙なしには読めない。
鑓水、相馬、修司のバランスも変わらずに良く、島から脱走する場面等、エンタメ作品としても楽しめる。
次回作も期待したい。
Posted by ブクログ
太田さんの3人組ラスト!鑓水1番好きだからとても楽しかった。
戦時中こんなことがあったんだなと。私が当事者だったら、国が大丈夫って言ってるし、みんな残るし、みたいな正常性バイアスで逃げれないだろうな。
現在のメディアにいたとしても長いものに巻かれて動けない側だと思うから、ちゃんといけないことはいけないしこれは違うってわかってて動いてくれる人たちほんとかっこいいし尊敬する。
鑓水が適当なこと言いながら適当な態度で、ちゃんと修司や他の人のこと守ってあげてるのがかっこいいー!
最終章めちゃくちゃ泣けた。