あらすじ
藤子不二雄Aの名作漫画『笑ゥせぇるすまん』では、主人公の喪黒福造が日常のどこにでもいるような老若男女を言葉巧みに陥れていく。喪黒は<誘惑の悪魔>として、様々な手段でターゲットを破滅に導く――。人間は誰でも驚くほど簡単に騙すことができる。そして、人間の心は簡単に操ることができる。喪黒福造というキャラクターを分析しながら、喪黒の<騙しと誘惑の手口>を脳科学の視点で考察し、「人間の心のスキマ」を解き明かす! 巻末には藤子不二雄Aとの対談も収録。■主な内容:ココロと呼ばれるものの正体/「悪の教科書」というタブー/絶対に守れないルールを課す/「意志の力」は、いつか必ず負ける/人間の脳は、全体像ではなくパターンを認識する/心を開かせるために、相手の目を見て話す/相手が感じる「後ろめたさ」を利用する/優秀な営業マンが美男美女とはかぎらない理由/人間の「我慢の総量」はあらかじめ決まっている/喪黒福造が狙う月曜日/怖がらせることなく、命令する/サイコパスの世界観/喪黒福造が誕生するまで/感情と理性/嫉妬心を認める
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騙されないために
一部ご紹介します。
・人間の脳は、他の臓器と違って未完成のままである。なぜなら、生きていくための戦略変更を柔軟に行う必要があるからだ。
それ故「ココロのスキマ」は常に心の中に存在する。逆を言えば、「ココロのスキマ」が存在することそのものが「心」の条件だ。
・人間は誰でも、完璧ではなく、常に何かが欠けている。ココロもスキマだらけにできている。そして、喪黒福造は、そういったターゲットに近づき、欠落を即座に埋める魔法のアイテムを授けると同時に、絶対に守ることのできない約束を課して、最後には地獄に突き落とす。これが『笑ゥせえるすまん』という作品の基本構造。
・能力の不足は努力によって、一定の効率で補える。だが、地味な努力を品行方正に積み重ねるだけのトレーニングは、それが明らかに自分のためになることがわかっていても、続かないものだ。同じテーマの書籍が並んでいるという事実そのものが、こうしたトレーニングを人間は継続できない、という現実を証明している。
・集団でなければ生き延びる事の難しい人間という種にとっては、特に追加のコスト無しに協力を要請できる相手は、極めて重要な存在なのである。孤独であることは、人類の歴史において長らく、直ちにその人が脆弱であることを意味した。
・人間の「我慢の総量」は予め決まっている。ぎりぎりの我慢をしている人ほど、誘惑や罠に陥りやすい。満員電車による通勤などで、そのキャパシティを使っている場合は、ほんの少しのストレスが加えられるだけで、満杯のコップに水を一滴垂らしただけで溢れるように、忍耐の防波堤が決壊してしまう。我慢を続けている人間は、詐欺師にとって絶好のカモなのだ。
・過剰な緊張を緩和する手段。①深呼吸、②手のひらを温める、③甘いものを摂る。
・詐欺師が好むターゲットは、高齢者、経済的弱者、心理的に追い詰められている人。
・詐欺師に騙されないためには、「人間は騙されやすい生き物だ」ということを弁える事。そして「自分だけは騙されない」などと思わない事。
・騙されにくくなるには、「自分自身を客観視する」習慣をつける事。それには、日記(自分がその日、抱いた感情や出来事のメモ)をつけることだ。後々、そのメモを見返すことで、自分の性格や傾向も把握できるだろう。
Posted by ブクログ
悪の脳科学・中野信子
1. 読んだ感想・印象に残ったポイント
喪黒福造が脳科学や行動経済学の使い手では?という主張の本。
人は楽をしたがるし、意思は消耗する前提。
現代の環境は、原始時代から作られた人間の本来の設計とズレている。
喪黒福造は「守れそうで守れない約束」をさせる構造が、人間の弱さを突いていると感じた。
一見簡単でも、約束を破る前提の設計は意志の力が必要な設計。
2. 学びの共有
人は意思の力だけで行動をコントロールできない。
自制心は有限で、疲れるほど判断は崩れる。
そのため、行動は意思よりも環境や設計に大きく左右される。
また、人は短期的な欲求に引っ張られやすい。
3. 仕事に活かせること
意思に頼らず、環境や仕組みで行動をコントロールする。
無理な約束ではなく、「守れる設計」を意識する。
相手を動かすときも、意思ではなく状況設計で考える。
自分自身も、疲れている状態で重要な判断をしないようにする。
喪黒福造は心理学や行動経済学を活用しているのではないか?という切り口。
また人は楽をしたいし、意思は疲れですり減る、かつ原子の時代に最適化された肉体と現代文明は合わなくなっているという主張。
脳科学とまでいくと大袈裟かもだが。
相手からの承認を得た上で破れない約束をさせる、というのは喪黒福造の絶妙な点だと思った
→一見無理難題に見えないのに、約束を破ってしまう設計