あらすじ
ロシアの裏の顔から表の顔までとことん知り尽くす作家・佐藤優氏と、歴史・経済の観点からこの国を読み解くジャーナリストの池上彰氏。そんな二人がロシアをめぐり徹底的に語り尽くす。領土交渉のゆくえからソビエト連邦の功罪と崩壊の理由、プーチン人気の秘密、ロシア人の国民性とウオッカ、スパイ事件、日本にとってのロシアなど、このつかみどころのない大国を、ありとあらゆるユニークな切り口から描き出した書。池上彰氏が、ロシア通の佐藤氏から巧みに引き出すロシアの「知られざる一面」は、読み手をぐいぐい引き込む魅力を持ち一気に最後まで読ませる。今後の日露交渉のヒントも。さらにはロシアの分析を通して世界を知り、日本を知ることにもつながる本書は、学生からビジネスパーソン、国際問題に関心のある人まで幅広くお勧め。
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Posted by ブクログ
ロシアの情報に明るい佐藤氏と多方面の情報に明るい池上氏との対談本。やはりというか会話量としてはそれぞれ7対3くらいの割合になっています。相槌を入れながら会話する池上氏に対して、どんどん話を展開する佐藤氏とのコントラストもなんだかおもしろいです。
印象に残ったのは2か所。ソ連の功績(2章)と諜報関連(6章)の部分です。社会主義と言われると何だか怖く悪い物のように思いがちですが、2章ではその功の部分にも焦点を当てています。たとえば教育の無償化などはソ連があったからこそというような書き方をされています。最終的には崩壊してしまいましたが、国家での壮大な実験と考えれば、そこから現代の人間たちは学んでいかなければ同じ失敗を繰り返してしまいます。失敗したから社会主義は駄目だったんだ、だけではその反省を生かすことすらできません。そういう意味では、本章は悪い部分だけでなく良い部分も見ているので新鮮でした。それにしても、国家が独裁的になったことで、国民が猜疑的になり、メディアリテラシーが高まったのは何とも皮肉な話ですが。
Posted by ブクログ
ソ連・ロシア入門書として、楽しく読める好著。
対談としているが、95%が佐藤優によるソ連・ロシア解説だ。
あの池上をして、ほとんど「なるほどねえ」「そうなんですか」としか言わせない佐藤の圧倒的知識量に感服。ただ、論が高尚になりすぎないよう、話が専門分野に深入りしないよう、池上彰がほどよく、「というと?」と解説を求める合いの手を入れていて読みやすい。
佐藤優の過去の著作や、近年であれば『十五の夏』(幻冬舎)などでも触れられていることも散見されるが、改めてソ連・ロシアを俯瞰的に理解することが出来る。
「ロシア人は、線の国境を信用していない」「ロシア人は屁理屈上手」など、体感的にも理解している事柄に対しても、その理由、原因を分析し伝えてくれる明晰さが素晴らしい。
そんなソ連・ロシアに対する理解から入り、長期化・独裁下の進む国家主席の立ち位置をロシアを軸にした国際社会の視点で読み解き、日本の国体や現政権に対する批判を繰り広げ、世界的に拡がる格差社会や子供の貧困問題を、遠く「ソ連の崩壊」に因があったとする論の展開に舌を巻かずにいられない。
最終章の「6章 帝国の攻防 ―諜報と外交の舞台裏」。お得意の諜報の分野にまで手を広げるのは予想されたが、それは手嶋龍一あたりとまた、もっとガッツリやってくれたのでいいかな。本書では、やや蛇足感があったか。
いずれにせよ、ロシア理解に資する読みやすい入門書だ。