あらすじ
6ステップ 14のアプローチで時短は実現する!
経営者から現場の店長まで必読の書
●99%の時短は間違っている
●非製造業の生産性向上を初めて体系化!
●図解と事例で頭がスッキリ
●労働時間↓と顧客満足↑を同時実現
●生産性の研究者が現場1000回で理論化した14のアプローチ
●忙しい時間帯ではなく、ひまな時間帯に着目せよ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
202005/
スーパーホテルでは、すべての業務を「仕事」「作業」「無駄」の3つに分類して、絶えず業務プロセスを見直しています。
ここでいう「仕事」とは、顧客満足を上げる業務。「作業」とは、顧客満足を上げないが、会社としてなくすことができない業務。「無駄」とは顧客満足も上げず、会社としてする必要もない業務のことです。現場のすべての業務をこのように分類すると無駄が見えてくるのですが、実際にやろうとすると、分類しにくいことも多々あります。
そのときに必要なのが、会社としてのこだわりや商品戦略です。スーパーホテルでは、そのこだわりを「安全で清潔、そしてぐっすり眠れるビジネスホテル」と定義しました。/
スーパーホテルでは、客室に固定電話はありません。チェックインカードも廃止して、宿泊客は氏名などの個人情報をタブレット端末から直接、ペン入力します。紙も不要、カードの保管スペースも不要です。しかも単なる効率化で終わらせず、入力内容を社内データベースと連動させ、「角部屋が好み」といった顧客情報を全店で一元管理。睡眠の快適性をより高めるためのサービスに生かしています。/
従業員のモチベーションを上げるのは、経営者や人事評価ではありません。このことに、経営者は不思議と気が付いていません。
どこの会社でも、どの従業員に聞いても、提供したサービスにお客が喜んで感謝してくれ、再来店してくれることでモチベーションが上がると言います。モチベーションを上げるのは経営者ではなく、お客なのです。/
逆にモチベーションが上がらないのは、お客が喜ばないことや必要性を感じない業務に時間をかけなければならないときです。無駄に労力を費やさなければならない時や、意味を見出せない業務に従事しないといけないときなどに、従業員のモチベーションは下がるのです。/
我々が関心を向けなければならないのは、残業という「忙しく仕事している時間帯」ではなく、逆に、「お客がいない閑散時間もしくは閑散日」なのです。
このことを冷静に考えていかなければ、時短を進めることも、その前提である生産性向上も実現できないのです。/
リアルタイム・サービス法は、現場の無駄な労働時間を減らすための有力な武器になります。その要諦は、業務の「場所」「時間」「情報」をお客により近づけていくという手法です。/
北陸地方で50年以上続いている「奉仕料制度」という独特の採用法です。客室係のみにこれが適用され、給料はほとんど歩合給で支払われていました。一方、若い客室係は月給制で採用されており、同じ仕事を協力しながら進めていくためには、この人事制度を廃止して給与体系を一本化することは不可欠でした。一般の従業員も、客室係と一緒になって宴会場やレストランで働けるようにしました。
また、宴会、フロント、レストラン、料亭など、各持ち場が縦割りに管理されていましたが、これをサービス部として一本化しました。それまでは客数に関わらず、各部門の従業員は同じ人数で、垣根を越えて手伝うこともなかったため、結果として実際の仕事量より多めの人員を配置していたのです。
賃金制度と部署の一本化により、予約状況に応じてシフトを組むようになり、お客が集中する時間や場所に、マルチタスクで人員を適性配置できるようになりました。/
「稼働対応労働時間制」
可動対応制は、就業規則で各所定労働日の労働時間として「1か月間を通じて1日平均8時間」と規定し、それを1日に最低働かなければならない「固定労働時間」と、稼働状況によって支持される「稼働対応労働時間」に2分割します。固定労働時間を仮に4時間とした場合、稼働対応労働時間は1日平均4時間となります。
賃金は1日8時間労働の月給制を採用し、月によって労働時間数が異なることから、月給の算定に必要な所定労働時間は年間で規定することとします。繰り返しになりますが、サービス業の現場は、稼働状況が日や季節をまたいで変動し、それによって労働時間も日や月で変動することとなり、結果的に実労働日当りの平均が仮に8時間に満たない月があったとしても、この制度設計の趣旨から月給を減額することなく満額を支給することとなります。
一見分かりにくいのですが、簡単に言えば、従業員は1日4時間労働、その上に1か月を通じて平均4時間となる残業が「みなし」で各所定労働日に命令されているということです。つまり、その日の稼働状況により、1日の労働時間を8時間から短縮したり、逆に延長したりするということと同じでもあります。
この稼働対応制は変形労働制ではないので、事前のシフト編成とその変更の制約に縛られることはありません。一方、労働時間が最終的に月を通して1日平均8時間になったとしても、もしその中で法定外労働があったときは、時間数に応じた割増賃金部分(25%)を月給に加えて支払わらなければなりません。
つまり、もし労働時間が結果として1日8時間となったとき、変形労働制の場合は割増賃金を支給する必要はありませんが、この稼働対応制では法定外労働に対して割増賃金部分を月給に追加で支給することとなり、従業員の賃金は変形労働制に比べ増えることとなります。ここだけを見れば従業員にとってはメリットで、会社にとっては変形労働制と比べ総人件費がアップするデメリットが見えてきます。
ただ、稼働労働制ではシフト変更の制約を受けないので、忙しい日に法定外労働をしてもらっても、低稼働日に労働時間を8時間から短縮できれば、それによって社会的使命である時短を実現できるだけでなく、月間の総労働時間も短縮され、回り回って残業時間を削減できるようになり、会社も大きなメリットを享受できるようになるのです。
また従業員の生活への影響を考えたとき、残業は生活の予定を狂わせますが、労働時間の短縮は生活を乱すこともなく、また実質的な時短の実現によって健康管理もできます。/
繁華街などにある理美容室に比べ、街中にある理美容室は一般的に地元客中心で、その商圏は小さい。お客のリピートが少ないとたちまち客数が減って、お店を維持することができなくなります。そのため、大串哲史社長はリピート率に着目しました。
まずPOSシステムを導入し、顧客情報の入ったカルテ台帳をデータ化し、顧客情報を各店舗で検索できるようにしました。そして、お客にカットした担当者が毎回、どのようなサービスを提供したのかをシステムに入力するようにしました。
それまでの理美容業界は、現場の理美容師のカット技術だけが評価の基準で、顧客満足を十分に把握していませんでした。そのため、大串社長はレジでアンケートはがきを全来店客に渡し、お客の声を集め、それを丁寧に分析したのです。
すると、リピート客は必ずしもカット技術だけを評価しているのではなく、むしろ接客や雰囲気、価格などにも価値を見出していることが分かりました。また、男女では求めるサービスの内容が異なるので、注文の聞き方、鏡の見せ方など、サービスの提供方法を細かく変えていきました。理美容師間でサービス品質のムラが起きないようにメニュー数も絞り、それを標準化してマニュアル化も進めています。
POSデータやアンケートの回答をきちんと分析してみると、大串社長は「会社がいかに従業員たちを感覚的に評価していたかが分かった」といいます。/
北星会が経営する皮膚科専門の「北星皮膚科クリニック」では、レーザー治療を希望する患者に、治療内容や術後のケアを説明する7分間の動画をタブレット端末で見てもらいます。この動画は島野雄実理事長自身が構成を考え、スタッフと協力しながら数台のスマートフォンで撮影し、パソコンで編集したものです。
患者は時として医師に繰り返し質問したり、説明してもらうことをためらいます。また、クリニックで治療内容を細かく書いた資料を患者に渡してもきちんと読まないものです。その点、動画ならストレスなく自分のペースで、納得するまで何度でも見ることができ、また最後まで見た患者が終了ボタンを押すのでトラブルもなくなりました。/
苫小牧のほか札幌、横浜、大阪で展開する肥満治療専門の「北星クリニック」では、予約の仕方を5分間の動画で伝えています。肥満治療は長期の通院が必要なため、患者に予約方法を正しく理解してもらうことは大切です。
以前は受付スタッフが口頭で説明していましたが、動画にしたことで時間を大幅に削減できただけでなく、トラブルも回避できるようになりました。さらに動画活用によって生まれた時間を、患者に還元できます。肥満治療に1回あたり30分ほど、さらに処方薬の説明などにもじっくりと時間をかけます。/
サービスは、お客の「要求」とスタッフの「行動」の共通部分です。それぞれのミスマッチから起きるのが問い合わせやクレームで、その原因を取り除くために、北星会では患者にサービスの内容とその提供方法を事前にしっかり情報提供することで、行動から患者の要求が外れていかないように工夫しているのです。/
現場改革がなかなか前に進まないのは、それまでの業務方法に従業員が慣れてしまっているからです。新しい方法はとても効率が悪いと感じてしまうのです。元のやり方の慣性力がとても強く、新しい方法に切り替えるエネルギーを出し切れないこともよくあります。さらに改革の初期は、どうしてもそれまでのやり方と新しいやり方が現場で入り混じり、スタッフは両方の過重に耐えなければならないことも大きな問題です。/
Posted by ブクログ
サービス業における、生産性向上を如何にして行うかについて、ふんだんに盛り込んだ事例と、少しだけ理論的な背景を述べている本です。
よくある根拠もなく、著者の思い入れ(独断と偏見ともいう)と勢いだけで書かれているようなビジネス書とは少し違い、読みやすくかつ、取り組んでみようかな、と思える本です。
冒頭に「何をすれば会社が成功するという戦略を行う指南書ではありません」と潔いのも○で、日本人は戦略を語る人が好きだが、戦術・実行が大事だ、と説きます。
グッドです!
特に、サービス業(飲食店)などの店長さんが、現場を改善するときのアプローチの仕方を提示しており、現場のリーダー系の人には良いと思います。
一番、おぉ!と思ったのは「・・・勘違いしやすいところなのですが、忙しくないときに従業員の手が空いている時間、つまり「手持ち時間」をどう減らすのかが、生産向上につながるのです。経営がコントロールすべきなのは、忙しい時間ではなく、ひまな日や時間帯なのです」です。
なぜ暇な時間を工夫すべきなのかは、是非、本書で。
Posted by ブクログ
そうそう、この考え方!
「残業減らして生産性向上」
じゃなく
サービスのムリムラムダ減らす
↓
顧客満足UP
↓
サービス品質UP
↓
利益UP &給料UP
↓
残業減る&モチベーションUP
↓
天国ループ
「働き方改革=残業減らせ」のモヤモヤにメスを入れる具体的一冊
Posted by ブクログ
「忙しさをデータで示せていないなら、まずはそこから」的な部分は、ものすごく納得しました。
サービス業がモデルであり、事例の雰囲気は中小企業っぽいので、別業界の場合は少し合わせて考えないとダメかなとは思います。
Posted by ブクログ
「稼働対応労働時間制」を知りたくて購入した。社労士からは出てこないアイデアであり、労基暑に相談しながら実際に活用している事例があるというのは心強い。肝心の時短のノウハウについては、簡単な正解などあるはずもなく、本書を読みながら考えることになるだろう。私も小売業出身であるのだが、価値が下がり続けている「物」「サービス」を価値が上がり続けている「人」を使って売るというビジネスモデル自体に無理を感じる次第である。小売サービス業の組織形態も、頭数の多いオーナー企業が多く、合理的な改革がしにくい風土であることも頭が痛い問題である。参入障壁が低すぎる業界ゆえ一定の淘汰は必要なのだろう。