【感想・ネタバレ】ヒトラー演説 熱狂の真実のレビュー

あらすじ

ナチスが権力を掌握するにあたっては、ヒトラーの演説力が大きな役割を果たした。ヒトラーの演説といえば、声を張り上げ、大きな身振りで聴衆を煽り立てるイメージが強いが、実際はどうだったのか。聴衆は演説にいつも熱狂したのか。本書では、ヒトラーの政界登場からドイツ敗戦までの二五年間、一五〇万語に及ぶ演説データを分析。レトリックや表現などの面から煽動政治家の実像を明らかにする。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書) 新書 – 2014/6/24

2015年8月24日記述

高田博行氏による著作。
アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の演説データを集め分析を加えた上で
ナチ運動期、ナチス政権の勃興から終わりまでの変化を読み解いていく。

自分の知らないヒトラーの側面を知った思いがする。
私たちの抱くヒトラーのイメージは当時のナチスの狙い通りのイメージのままだ。
(ある意味ナチスのプロパガンダは優秀だったということだろう)

飛行機をチャーターし全国を遊説しまわった選挙活動というのは凄い。
今の時代でもある程度参考になりそうだ。
(当時は野党でありラジオ放送を使えなかった為)
併合や進軍の度の国民投票、住民投票。
国民投票、住民投票したからと言って必ずしも合理的、正しい解答を導くわけではない。
それにしてもナチスは選挙、住民投票しまくりだなと。
似たような独裁者のスターリン、毛沢東、ポルポトは
虐殺数こそ上かもしれない。
ただ選挙を経て世の中に登場してきた訳ではない。
時々日本の政治で相手を非難する際にヒトラーとなじることがある。
いつも独裁者と言えばヒトラーにしか例えることが出来ないのかと違和感を覚えていた。
スターリンや毛沢東、ポルポトもいるだろうと。
しかし他の独裁者とは決定的に違うのだ。登場してきた背景が。
(もちろん第二次大戦中でも総理大臣が絶えず交代した日本に今後も独裁者が君臨するとは思えないが・・)

ヒトラーは演説することができたというのは間違いのない事実で才能があったのだろう。
世間で言われるラジオがあったから熱狂が生まれたというのはある意味誤解なのだという点が意外であった。
ラジオ放送に向かって音声を吹き込んだヒトラー演説は聴衆へ語りかけた演説とは別物だった。
ゲッベルスも認めていたように生の演説、聴衆との一体感は大事なのだ。
ただ敗戦近くでは失敗したラジオに向かって吹き込む演説しか放送できなくなっていた。

それにしてもこれだけのヒトラー演説データを分析した事が凄い。
わが闘争、ゲッベルスの日記と本書の演説データからの分析によってより当時の実態がリアルに立体的に浮かび上がってきたように思う。

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2021年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ヒトラーの演説を、古典期のギリシャに始まった弁論術(①発見、②配列、③修辞、④記憶、⑤実演)の観点から、表現技法、音調、使用する単語や動詞、主語や目的語の使い方に至るまでを細かく分析し、さらに演説の時刻による差異、大衆心理の利用、アメリカ流の広告術を用いたプロパガンダの手法、ジェスチャーによる聴衆への効果等、論理より感情で訴える演説の裏には緻密なからくりがあり、それをいとも美しくこなすことのできるヒトラーは真の天才的な演説家であったことを物語っている本。
また、ヒトラーはオペラ歌手によって発声法の指導を受け、それによって演説中の基本周波数(ヘルツ)を変化させていたなど、非常に興味深い裏話もあった。

まったく関係ないが、ヒトラーとクビツェクの関係はジョブズとウォズニアックのそれと似ているなぁという印象を受けた。

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2014年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

言語学者 高田博行氏がヒトラーの演説について解説した著作。政界進出からドイツ敗戦までの25年間に行った演説をベースにした「ヒトラー演説150万語データ」をもとに考察しています。早い段階で演説の型が出来上がっており天才だったことが分かる。ただ政治家としては行動が伴わず、最新技術を駆使することで最大の魅力だった演説の力も弱まってしまい失速。国民が熱狂的に支持したイメージが強いですが、実際は批判的な人が多かったというのは意外。当時、彼らが考えたプロパガンダ戦略の影響だと考えると、ある意味凄いし、怖い。

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2024年12月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

その弁舌の才で新たな道を見いだした復員兵は、その弁舌の才に磨きをかけることで自らが率いる弱小政党を比較第一党にまで導くことが出来た。そして、政治的策謀と強引な力の行使で総統となることが出来たのだが、強制的にラジオで聴かされる演説にはもはやその魅力は失われ、また、いつまでも『パン』を与えられずに『パンの夢』を語るだけでは国家指導者としては国民に支持されることはもはや難しく、自らも聴衆の前に出て演説することが出来なくなっていった。
せっかくオペラ歌手に発声法やジェスチャーの効果的な使い方を学んでも、マイクの前で原稿を読むだけでは国民の心はもはや動かせなかったのである(もちろん、現実と演説の海里がどんどん大きくなっていったことも大きいのであろうが)
そして、ヒトラー演説の効力が著しく落ち込んでいったにもかかわらず、ゲッベルス宣伝相の『献身』『忠誠』がひるまなかったことも驚きであるし、目の前で演説する総統に対して、マンシュタイン元帥が野次っていたことも驚きである。

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2018年10月24日

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