あらすじ
富山(とみやま)は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢(かざわ)、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田(さこだ)、ワケありの旧友永川(ながかわ)と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。(解説・朝井リョウ)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
大学を休学してコンビニのバイトをしている富山のちょっと青春ぽい話。キャラも特に佐古田ちゃんが魅力的。歌い手の鹿沢も。アルコ&ピースのラジオが本編中にも登場するしラジオ愛がいっぱいつまってて、ラジオリスナーにはぜひ読んでもらいたい作品!
Posted by ブクログ
何年か前に読んだ『一瞬の風になれ』のインパクトを思い出し、手に取った一冊。
主人公の富山は、深夜ラジオのハガキ職人であるが、接触恐怖症に苦しみ心に大きな傷をかかえていた。
大学を休学し、深夜のコンビニでアルバイト生活を送る。そのコンビニを舞台に、鹿沢、佐古田、永川との交流を通じて、少しずつ困難を乗り越えていく、青春ストーリー。
私自身、深夜ラジオは聞かないが、富澤や佐古田の、そして筆者のラジオ愛が伝わってくる。
特に印象的なのは、p261の佐古田の言葉。「中学の頃、夜中にずっと眠れなくて、電気つけて本読んでると怒られるから、イヤホンでラジオ聞いてたんだ。お笑いの深夜ラジオが好きで、ジャンピングビーンって名前、よく聞いた。(中略)夜中にいつ起きてても、ジャンピング・ビーンが一緒にいてくれる気がして。ジャンピング・ビーンもどっかで起きてて、この番組聴いてて、つながってる気がしてた。」夜の中で、ラジオでつながる感覚って、とても素敵だなと思った。
青春を生きていた頃、誰もが感じたことのある生きづらさ、もやもや、葛藤。お互いがそれを埋め合わせるように、進んでいくストーリー。
読者である私まで、この4人と一緒に生きる仲間の1人だと思えてきて、「まだ読み終わりたくない」と久しぶりに思えた、とても良い作品でした!
Posted by ブクログ
主人公の俺、という一人称で進められる小説。久々な感じで新鮮だった。そのせいかテンポもよく、他の登場人物たちもキャラが良い。はがき職人を題材にしていて、芸人のオールナイトニッポンの話などが細かく描写されている。私自身は聞いたことがないけれど、聞いているかのように感じるリアル感が、なせる技だと思った。同じ著者で、落語をテーマにした「しゃべれどもしゃべれども」という小説もあるが、同じように、題材がリアルだった。一つの題材に対して、すごく愛を持って取材されて、本にされてるのが伝わる感じがした。それは恩田陸さんもそういう感じがするけれど、佐藤多佳子さんはまた違ったテイストだと感じる。
また登場人物たちに会いたい、と思う小説だった。
個人的には佐古田が大好きになった。
Posted by ブクログ
大人になってからラジオをほとんど聞かないせいか、序盤のラジオの説明はあまり頭に入らず、読み進めるのに時間がかかりそうだなと思いましたが、佐古田ちゃんが出てきてから主人公がぐんぐん前に進んでいくようになって、一気に読み進められました。学校や家以外の大切な仲間やコミュニティ(本作ではバイトや、ラジオリスナーのつながり)があるって大切なことだなあと思いました。主人公の人生で最も大切な一年だろうなと、それを読むことができて温かい気持ちになりました。4人がこのあとも時々会って、ずっと仲間でいられるといいなあ。あと佐古田ちゃんの先輩がとても素敵な人でした。
Posted by ブクログ
大好きな作家、佐藤多佳子の作品。期待以上の傑作だ!
まず、具体的な芸人や番組を取り上げてくれている。著者は私と同年代だから、すごい取材をしたんだろう。私たち世代なら谷村新司「セイヤング」鶴光「オールナイトニッポン」などになるが、アルコ&ピースを綿密に描写していて頭が下がる。風景描写も素晴らしく、後半の平潟湾の富山と佐古田の夜の散歩?は風景が目の前に鮮明に現れた。そして、佐古田、つまりは虹色ギャランドゥがめちゃくちゃ魅力的なキャラで、富山との不器用な恋路の行き先が気になってしまう。今を生きる若者の成長を綴った本作は「サマータイム」「一瞬の風になれ」と並ぶ、著者の代表作だと感じた。
作者買いです。
佐藤多佳子さんの小説は本当に良いです。人物に感情移入しながら物語の世界に没入できます。ラジオについてもっと知っていたら、このお話をもっとずっと楽しめたのかもなと思いましたが、そうじゃなくても十分に楽しめます。多くの人におすすめしたい作品です。
Posted by ブクログ
本との出会いってすごく運命的 適当に手にとったこの小説でそんなことを改めて感じた
なぜなら私は中学高校の頃から二十数年ぶりに、今まさに、ラジオ(正確にはポッドキャスト)にハマっているから!こんな偶然!
佐藤多佳子先生はいいイメージ 2-3作品?読んだことある それだけで裏表紙のあらすじも見ずに読みはじめた
コミュ障のコンビニバイト話かと思ったらまさかこんな素敵4人のストーリーとは!鹿沢はかっこいいし佐古田は天才でかわいい 年もいい感じな距離感 ラジオだけじゃなく歌い手にアメーバピグ 後半のアルピーANN実況の熱量!これこれ佐藤先生の文章 主人公頭の中の言葉がどばーと溢れてくる感じ 止まらない
ラジオ描写はアツいけど全体的には落ち着いた夜 深夜のコンビニ 金沢八景 国道と海 いい青春小説 成長あるし繋がりあるし辛さもある いいな成長って バイト辞めること伝えた時の副店長もいい!
カレー屋で佐古田にはたかれた後の「いつか、ぶち返す」が周りの反応含めて最高だった
「夜」という言葉の持つ深さと、「明るい」という言葉の持つ強さ。十人いれば、きっと十通りの「明るい夜」のイメージがある。
Posted by ブクログ
久々に引き込まれた本に会えた
実在する登場人物が出てくることで
実際あった話のように感じられたところが
夢中になれた理由のひとつだろうか
誰でも何かしらの人とは違ったところを持っていて
それを個性と呼ぶのだろうが
主たる登場人物の4人は
普通よりもより個性的で
それ故に生きづらさも抱えていて
その部分を補い合うわけでも認めるわけでもなく
ただそのままでいいから
一緒にいられるようになっていった
そのままの4人が
お互いに影響し合って
それぞれが変化していく
そんな関係が
「いい」関係というのだろうなと思わせてくれた
読み終えるのに年をまたいでしまったけれど
よい年末年始だった
Posted by ブクログ
マジでおすすめ。
主人公は女性と関わるのが苦手な
ラジオリスナーの大学一年生。
だんだん成長していく姿とか
コンビニの夜勤の描写とか最高だから
とりあえず読んで欲しい。
Posted by ブクログ
深夜ラジオのマニアックなネタも多いですが若者たちの抱える悩みや葛藤を描きつつ、全体的に明るく読みやすい作品でした。
少し恋愛に転ぶかなと思ったのですがその辺は踏み込むこともなくふんわりとした感じだったのでその辺も読んでみたかったなとも思いました。
Posted by ブクログ
最初はなかなかマニアックな内容で展開も少なくて、このままゆるーく進むのかなぁと期待してなかったけど
一見合わなさそうな4人が影響し合う関係性、ネットで傷つきながらネットとかSNSに助けられるってゆー現代ならではのシーン、自分のご機嫌を取れる好きなものがあるってゆー強さ、みたいな描かれ方がすきやったなぁ
Posted by ブクログ
再読。
主人公富山は、アルコ&ピースのオールナイトニッポンのヘビーリスナー。
とある事情で大学を休学して、コンビニで深夜アルバイトをしている。
バイトの先輩の鹿沢、バイト先によく現れる女子高生の佐古田、高校の友人永川は何かと富山を気にかけてくれ、ラジオを共通の話題として仲を深めていくうちに少しずつ富山の心境に変化が生まれていく。
実在した伝説のラジオ番組を軸とした、深夜に「明るい夜」を探して出かける若者たちの交流の話。
私自身、富山たちほどではないし投稿はしないけれど、いくつかのラジオのリスナーなので、実際の放送をイメージしながら読めて楽しかった。
深夜ラジオはリアルタイムではなく日中に聴くことが多いけれど、たまに眠れなかったり落ち込んだりした夜にイヤフォンで聴くと、「色々あるけれど世界はちゃんと回ってるなぁ」と思うことができて安心する。その内容がくだらなければくだらないほどありがたい。
と、話は逸れたけれど、猛烈にラジオが聴きたくなる小説。
Posted by ブクログ
一気に読み終える。コンビニと深夜ラジオの世界。ベイスターズの歴史を描いた「いつの空にも星が出ていた」同様にリアル。番組名もパーソナリティも実名。その分、物語の臨場感が半端なく畳み掛けるような描きっぷりは最高だ。
Posted by ブクログ
心が暖かくなる話
主人公が人と関わりを覚えていく。
明確な出来事があるわけでもキッカケがあるわけでもないからこの話がよくわからなくなったりつまらなく感じる時があったが、読み終わった時はなんとなく読んでよかったと思えるし、前向きになれる。
Posted by ブクログ
これがANNの話だと知らずに手に取ったけど、わたしはANNリスナーなので、楽しんで読みました。
アルピーのANNをいまはリアルタイムで聞くことができない、ってことだけがいまの心残り。
ラジオを通して描かれる、ある青年の成長物語。
ある壁にぶちあたっていた青年が、ハガキ職人との出会いや、コンビニでのアルバイトを通して、ちょっとずつ、前向きになっていく。
舞台化もしていて、ニッポン放送でCM流れてるなあと思ったら、ラジオの話だったのね。知らなかった〜。
これを読んで、ラジオを聞く人が増えたら嬉しい。
Posted by ブクログ
息子文庫より拝借。この著者の作品初めてだけど、もっと読みたいと思った!ラジオとは無縁だけど、なのにそれを愛する人達を大切な隣人の様に温かい気持ちで寄り添いたくさせる本作は秀逸!
Posted by ブクログ
大学を休学しコンビニでバイトする深夜ラジオのヘビーリスナーである富山、同じコンビニでバイトリーダーとして働きネットの歌い手という顔もある鹿沢、コンビニで偶然出会った同じラジオ番組のヘビーリスナーである女子高生の佐古田、富山の旧知の仲の永川の4人が主要人物の青春小説。終始主人公である富山の独白調の一人称視点で語られる。
読後感のよいまさに青春小説。登場人物たち(ひいては著者)のラジオ愛がすごく伝わってきて、自分は深夜ラジオは全く聞かないが、なかなか奥深い世界があるものだと感心した。
「自意識過剰でひねくれてるし、臆病でほっといてほしいくせに、評価はされたいんだよな。目立ちたくない、目立ちたいって、まったく相反する二つの気持ちがあるよ。弱っちいくせにプライド高かったりね。」という主人公の独白は、自分の奥深い気持ちにかなり近いものがあり、シンパシーを感じた。
Posted by ブクログ
インターネットの時代に生きる若者はその世界の出来事がリアルな人間関係よりも重かったりする。ということを、ラジオ番組を舞台にして描いた青春ドラマの小説かな。自分と同世代の作者がこの若者言葉で綴るストーリーはどうなんだろう、いやそんなのマジ関係ねぇ。コンビニの深夜バイトも女子校の文化祭も知らないけどすごくリアルな感じで、舞台にした横須賀のコンビニなど架空のものとはやっぱり佐藤多佳子すげー、神だわ。なんて無理しても書けないが、楽しめたよ、ほんと。
Posted by ブクログ
わたしの好きなこと、熱中することは、なんだろう。
この本を読んで、まずその問いにずっと向き合っている。
『みんな』とか『効率』とか『意味』とか『収入』とか関係なく、自分の好きなことを磨き続けたいと思った。
誰とでも気軽にコミュニケーションがとれて、気の利いたことを言えて、愛嬌がある人が魅力的だと思っていた。だから、わたしもそんな人になれたらと思って頑張っていた節がある。自分の声より、周りの声を優先してきたことが多かったと思う。
でも、主人公のように心の中に言葉や声がたくさんあって、表に出すのが苦手な人も、とても魅力的だと思った。そのような人しか出せない魅力、世界観、言葉があると感じた。自分の言葉を大切にしてきた人しか出せない言葉があると感じた。
今のわたしは、どれほど、自分の本当の気持ちや言葉を持ち、相手に伝えることができているだろう。相手にうまく伝わらないかもしれない。誤解をそれるかもしれない。でも、自分の言葉や声を、心から大切にしていきたいと、そう思った。
Posted by ブクログ
自分も深夜ラジオ好きで読んでみた。アルピーのラジオは当時聞いてなかったけど伝説と呼ばれているのは聞いてました。
分かる、分かるゾォという感じ。自分にとっても深夜ラジオはこういう存在です。
僕が深夜ラジオを聞くようになったきっかけはバカリズムのオールナイトニッポン。高校生の頃、イヤホンをして1人布団の中で聞いていたあの時を思い出した。初めてネタメールが読まれた時の体が痺れるような興奮も未だに覚えてる。
文章から、孤独だけど居心地の良い夜気を感じた。
Posted by ブクログ
2025/01/19
最初は主人公に痛さを感じてしまって、読み進めるのが辛かった。しかし、佐古田や鹿沢、永川との交流で、少しずつ前に進むことができるようになっていく姿に、ほっとしたし、読んでよかったと思った。みんな何かしら抱えているけど逞しい。
『明るさを求める気持ちは、すでに、きっと暗い。でも、その暗さを心に抱える人を俺は少し信じる。』
浅井リョウさんの解説もよかった。
Posted by ブクログ
主人公大学生だし、コンビニバイトだし、ラジオ好きだし、舞台がほんとに身近だし、共通点がこんなに多い小説はこれ以上ないくらいだった。共通点がこれだけ多いと、自分を照らし合わせて考えざるを得なかった。
Posted by ブクログ
深夜ラジオを聴く人なら入り込みやすい作品。周囲との関係やネットに振り回されながら生きていく若者の、悶々とした気持ちがしっかり描写されている青春小説。
一昔前のネット知識を持っていないといまいちピンとこない描写が多く、人を選ぶかもしれない。
Posted by ブクログ
めっちゃアルピーANN。聴いたことないし面白いって言うから聴いてみようかな。たぶん本棚にあったのもANN好きな友達の勧め。
主人公の自分でどうにもならないやるせない感じや自意識過剰な感じ、ちょっと痛々しい感じは、ぶっきらぼうな口調が文章そのままに少し分かる気もする。
Posted by ブクログ
アルピーリスナーの人間関係とか、関わりの話で、自分も深夜ラジオが好きなので興味深かった。
主人公と世代も性別も異なるため、親近感はわきにくかったが、葛藤や人間関係の変化などを遠くから見守っているつもりで、こんな夜がたくさんあるんだろうな、と思うと悪くないなと思う
Posted by ブクログ
深夜のコンビニバイトをしている富山(とみやま)は、ある理由で大学に通えなくなり、実家を離れて一人暮らしをしている。
バイト先の先輩鹿沢(かざわ)、店にお客としてやってくる一風変わった女子高生佐古田(さこだ)、高校の同級生だった永川(ながかわ)との交流が始まり、孤独だった富山が少しずつ変わり始める。
実在する深夜ラジオ番組をふんだんに織り込みながら、夜の闇を明るく照らすコンビニを舞台に、主人公の独白のような形で物語が進んでゆく。
夜を彷徨う若者たちに、ほのかに光が射していく感じがして、心が震える。
これもまた青春の一ページなのだなぁと思う。
朝井リョウさんの解説がとてもよかったです。
Posted by ブクログ
ラジオの話が多いです。アルピーのANN。深夜ラジオを聞かない身としては知らないこともありましたがしっかりと世界観に没入できました。しかし、結局のところ主人公の女性恐怖はなんだったんだろうとい消化不良感が残りエンドでした。女性を突き飛ばす位だったのにあの過程を経て治るものなのかな?
Posted by ブクログ
2017年山本周五郎賞
接触恐怖症に悩む主人公・富山は、インターネット上のトラブルをきっかけに、大学を休学。一年間の一人暮らしを、始める。生活の糧は、コンビニバイト。
深夜ラジオのヘビーリスナーであり、ちょっとしたハガキ職人だった。
深夜ラジオの生放送シーンが、実名で頻繁に登場する。この作品の主要部分でもある。臨場感あり。ラジオ愛満載。(私は、深夜ラジオもニコニコもアメーバピグも、加えてお笑い番組に至るまで、未経験。雰囲気は、頂きました。)
モラトリアムにしては、ちょっとキツ目の一年だけど、富山は、この期間に出会ったコンビニ仲間やハガキ職人仲間に恵まれて、徐々に未来を見出し始める。
明るい夜の象徴は、コンビニと深夜ラジオ。
富山の活動地域も全て実名で、たぶん表現通りなんだろうな。作者の文体も若め設定(申し訳ない)で、青春小説として、面白く読んだ。