あらすじ
オスマン帝国は1299年頃、イスラム世界の辺境であるアナトリア北西部に誕生した。アジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸に跨がる広大な版図を築いた帝国は、イスラムの盟主として君臨する。その後、多民族・多宗教の共生を実現させ、1922年まで命脈を保った。王朝の黎明から、玉座を巡る王子達の争い、ヨーロッパへの進撃、近代化の苦闘など、滅亡までの600年の軌跡を描き、空前の大帝国の内幕に迫る。
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Posted by ブクログ
今までは塩野七生の描くキリスト教社会から見たイスラム社会としてしか認識していなかったオスマン帝国の実像を初めて知ることができた貴重なオスマン通史。どうもイスラムというと中世的で原理主義的に思ってしまうが、実のところはキリスト教社会も中世は極めて原理主義的かつ非人間的であるところがあり、むしろオスマン側のほうが他宗教に寛容でさえあったという。現在のイスラムのイメージとは大分違うとともに、たぶん日本がヨーロッパ的価値観に縛られているためにそのように感じるのだと思う。それが再認識できる非常に素晴らしい本。まあ、後継者争いを避けるために兄弟殺しをするなど今考えるとあり得ないようなことも起きていたが、それも中世という時代背景の下でのことであり、実際に日本の戦国時代においても兄弟殺しは一般的であったことを考えると仕方ないことなのだと思う。今のトルコとオスマン帝国の関係さえ知らなかったので、本当に勉強になった。
Posted by ブクログ
13世紀末から20世紀まで長期にわたって存続したオスマン帝国の通史。
ヨーロッパ史とイスラム史を繋ぎ止める重要な立ち位置であったにも関わらず、今まであまり顧みられてこなかったこの国を非常にわかりやすくまとめ切った本書。
世界史を授業で学んだ限りでは当初は興隆を見せるも、近代には帝国主義とナショナリズムの流れについてこれなくなって遅れた国という認識に留まる。
しかし、600年以上続いた背景には変革と反動を繰り返しながら時代に順応していった歴史があり、
現代の問題を解くヒントを得ることができるという、
歴史を学ぶ意義を改めて思い出させてくれた。