あらすじ
有川浩から有川ひろへ。その理由には意外な「ご縁」があった。子供の頃から愛してやまない「コロボックル物語」新作執筆の裏側、いつも心を寄せる書店や被災地、愛する本への想いなど。エッセイ等41本に加え、本を巡る恋を描いた短編小説「彼女の本棚」、『県庁おもてなし課』のサイドストーリー「サマーフェスタ」を収録。書き下ろしの「文庫版のためのあとがき」も掲載。人気作家の魅力がたっぷり詰まった、エッセイ集第2弾。
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Posted by ブクログ
有川ひろは、言わねばならぬことは躊躇せず言う人だ。
だから作らなくていい敵をつくることもあるのかもしれない。
けれど、読者の心を耕すことがこの先も本を売ることに繋がり、本を売ることは本に係わる人たちの仕事を担保することであり、ひいては経済を回すことであるという信念のもとそれは行われる。
この本でも、ネットを通じて自分の趣味趣向を押し付けることがどれだけ他人の心を傷つけるのかと、何度も何度も書かれている。
同じ話を、結構念入りに何度も書いていても、通じない人には通じない。
そのもどかしさも含めて、有川ひろは正直に本書に記している。
それは、若い読者に対する大人の責任と考えるから。
甘々な恋愛小説を書くイメージの強い作者だけれど、本人は結構骨太で勝ち気で頑固。
それが作品に直接反映していないところがいいなあと思うのだ。
読者は、作者が書きたいことをもっと積極的に受け止めに行こうよ。
若い読者に媚びず、きちんと大人として若者に接する大人というのは、なかなかに貴重な存在だ。
そして、折る程度大人のコマッタちゃんに対しては、それを是正するご縁はございませんと切り捨てる。
そこがいいなあと思うのだ。
稀代の読書家・児玉清さんへの想い、『コロボックル物語』への想い、新井素子へのあこがれ、植松努への共感。
どれもまっすぐに強い気持ちが伝わってくる。
「倒れるときは前のめり」
これ、倒れるにしても、少しでも前へという著者の思いと「受けて立つ」という著者の覚悟が感じられて、とてもいい言葉だ。
うっかりすると私も前のめりに斃れてしまうかもしれない危険で魅力的な思想だ。
「お天道さまは見ている」という言葉とともに胸に深く刻んでおこう。