あらすじ
抑圧的な父親のもとで育ち、苦しんだセオ。自分と似た境遇の人々を救いたいと願う彼は、心理療法士になった。順調にキャリアを重ねるうち、彼はずっと気になっていた六年前の殺人事件の犯人――夫を射殺した画家――を収容する施設の求人広告を目にする。事件以降ずっと沈黙している彼女の口を開かせることができるのは、僕しかいない。そう思ったセオは彼女の担当に志願するが……。《ニューヨーク・タイムズ》ベストセラー・リストに連続23週ランクイン。巧みなプロットと戦慄のラストに圧倒される傑作ミステリ
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Posted by ブクログ
面白かったです!
まさにページターナー。後半はほぼ一気読みでした。
全然スカッとする終わりではないし心理学的な考えを自分の内面と照らし合わせて鬱々となったりもしたんですが、読めて良かったと思います。
他の方も感想に書かれてましたが、こういうのには私も100%ひっかかります(笑)
邦題はサイコセラピストですが、原題をそのまま日本語訳してほしかったと思いました。サイコセラピストというタイトルが悪いというよりは、そのタイトルに引っ張られてしまうので、出来れば著者の意図したところが出ている原題を訳したものが良かったなと。セラピストと患者はこの小説では対になる存在だし。
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ミステリーとしてとても面白い。
心理療法は死と再生の物語であると言ったのは河合隼雄先生だったけれども、この物語は死と再生というよりも罪と罰だろうか。
同業者からすれば物語冒頭から逆転移(よりもむしろ転移)状態にあって、どうもこのセラピストは心理療法家としてのラインを最初から侵していると「嫌な感覚」になったけれども、その直感は間違っていなかった。
訳者の坂本あおい先生が書かれている通り登場人物がそれぞれに罪を犯し、罰が下されている。
しかし、心理療法は例え司法分野であっても、罪と罰について考えさせるのではなく、罪を犯した自己と別離し、自己を再生ヘ促す態度が必要になる。
その点において、この物語の主人公である心理療法家セオは、すべてのはじまりから誤っていた。
そして、その誤りには最後まで気付けなかったのだろう。
重ねて、臨床心理士・公認心裡師、資格や呼び名はどうあれ、訓練を積んだ心理療法家にこの主人公のような人物はいないのでどうか不安に思わないでほしいとも願う限り。
それはそれとして、物語として面白い。
Posted by ブクログ
写実的な絵画のようで、引き留め続けるほどの何ものかを感じることはなかったはずだった。なんとはなしに眺め続け、柱書に目を止める。自身の過去なのか、形而上的なわたしと、作品のちょっとしたやり取りが始まった。だまし絵のような細部に、引っ掛かるものを受け取るが、サッと流れ。小さな安どのような回収に、振り返らずに歩みだす。
Posted by ブクログ
初のポケットミステリに手を出してみた。
翻訳本だったから読めるかな~って不安だったんだけれど、読み進めるとそんなことは杞憂に終わり物語の深みにドンドンはまっていった。
内面をえぐるような心理描写。そして衝撃の結末。
とても楽しめた一冊。
Posted by ブクログ
主人公は心理療法士・セオ。
夫殺しで入院中のアリシアの心を救うため、〈ザ・グローヴ〉へ転職しアリシアに近づく。
ショックで沈黙しているアリシアを癒せるのか?
セオの私生活・アリシアの日記と交互に描かれるこの作品。
この2つが終盤に繋がります。ゾッと来ました^^;
ボリュームあるかな?と思ったけど、何が起こってるのか?気になって、気になって…とにかく、サクッと読めます♪
Posted by ブクログ
終盤からは見事にページターナーの術にかけられた。おいおいおいマジかよオイと途中気を抜いて読んでたところを、ギュッと引き締められクイッと一気に引き寄せられる感覚に。
本を閉じた後の表情は、目をまん丸にひん剥いて口はOの形に開けているあの絵文字で決まりでアール。
Posted by ブクログ
自分は時間軸が異なる章立てをされると100%引っ掛かってしまう。またやられた。そういえば、なぜこの患者にそんなにこだわったのか、最初からちょっと気になっていたのだった。そうだったのか、確かに。面白かった。
Posted by ブクログ
心理療法士(サイコセラピスト)のセオには気になっている人物がいた。数年前、自分の夫の顔面に銃弾を撃ちこんで殺した画家の女性アリシア。
裁判で有罪となった彼女は施設に収容されているが、本当に彼女が夫を殺したのか、その動機については謎のままだ。彼セオはアリシアに接近し、彼女が何故夫を殺すに至った真相に迫ろうとうする。
セオの独白と事件までアリシアがつけていた日記で物語は進んでいく。あまり詳しく書くとネタバレになるが、最後の展開で、そうか、そうだったかと気づかされる。
ニューヨークタイムズのベストセラーリストに23週ランクインしていた人気作というのもうなづける。
Posted by ブクログ
心理療法士のセオは精神病院に入院するアリシアを担当する。彼女は6年前に夫の顔面を撃ち抜いて殺害し、それからひとことも口を聞いていなかった。セオは彼女の心を開けるのか。事件の謎は明らかになるのか。主人公の現在と過去や、アリシアの残した日記で少しずつ謎の真相に迫っていく構成で、いかにも怪しい奴らが次々と現れ、ラストはなかなかの意外性で楽しめました。ギリシャ神話に出てくるアルケスティスのモチーフはちょっと陳腐な気もしつつ、結局は気になってしまい後で調べてしまった。
Posted by ブクログ
突然夫を銃で射殺し、その後六年もの間沈黙を保ち続けている画家の妻。彼女の口を開かせたいと使命感を覚えた心理療法士のセオは、彼女となんとか意思疎通を図ろうとするが――。
短い章立てでするすると読んでいくうちに、六年前の事件の真実を追うメインストーリーとともに、主人公の複雑な境遇や沈黙を守る女性の日記が挿入されて、一筋縄ではいかない「不安定さ」が徐々に漂ってきます。何を含んだ、意図した描写なのだろう、という細かなエピソードの積み重ねが、一筋縄ではいかない物語の行先を示唆します。
ミステリとしてまったくの新機軸!というわけではないのですが、そのひとつひとつの細やかな描写の意味がすっと明らかになる鮮やかな一瞬には、これぞという胸のすく感覚がありました。
その一方で、展開上、救われない存在となってしまった人物があまりに憐れなように思えて、若干しんみりとした読後感は残りました。ラストの展開によって、すべてが隠されたままではなくなったけれども、その人はもう戻ってこないのだろうか、と思うと、あまりにも辛い人生ではなかったかと。眼を覚ます、それを匂わす描写が最後にちらっとでもあれば…と思いました。ご都合主義が過ぎるとされるとしても、私はそう感じたのでした。
Posted by ブクログ
なんてこった。おもしろいいいいいいい。
これが第一作目だなんて、末恐ろしいなぁ。
ぜひ多くの人に、予備知識なしに読んで欲しいので、あーだこーだ言うのはやめておくけれど、ほんとに構成のうまさは、さすが脚本を学んでいるだけのことはあるな、と。
次回作もたのしみ!
Posted by ブクログ
早川のポケミスは必読してます。訳者にもよりけりですが、コレといったミステリーに出会えた時は、年末のランキングでは何位になるかと、そこも目が離せません。そんな時のこの作品、私のまわりにもいるんだよね、こんな自己愛の塊りの人、とか毒を吐きながら読んでいくうちにすっかりはまってました。もしかして犯人は?とドキドキしながら読み進めたラストの衝撃、是非自分で読んで評価して下さい。
Posted by ブクログ
久々のミステリーでグイグイ読めた。脚本家が作っているようなので映像化できそーという感じがした。心理療法での解明を信じてたけどゴリゴリ関係者やないか!まどろっこしいわ!というのが本音。
Posted by ブクログ
ミステリーとセラピストものが掛け合わされると、興奮が止まりません。面白かったです!翻訳も読みやすく、あまり海外ミステリーを沢山読んできていない私でも、楽しく読めました。海外ミステリーを読み込んでいる人からしたら、もしかしたらもう一捻り欲しいかも…となる可能性も。確かに読み終わって考えると、もう少し華やかにできたのでは…とも思うけれど。でも、この程度が収まりよくてやっぱり良かったのか…?
すっきりとしたミステリーを読みたい時にオススメです。
Posted by ブクログ
心理療法士の僕が
夫を殺した女性を救いたくて
その女性がいる施設にスタッフとして入る。
「彼女を救えるのは僕だけ」
僕自身も幼少期の心の傷を癒している。
…とまぁこんな感じで始まる。
読みやすいし引き込まれる。
愛する夫を殺したのは何故?
もしかしたら違う誰かがやったのか?
そういう疑問の答えが知りたくて
先に先に読んでしまう。
終盤の方は「あーなるほどねー」
そうきたか…。
私の予想は半分当たって半分外れ。
スカッとする感じではない。
けど色々考えさせられる。
結局セラピーとか意味ないんかい!
とか思ってみたり笑
本人がそこ(暗闇)から抜け出したい!
って心底から思わない限り無理だろうし
その前に希望がなければ
抜け出したいと思わない。
その希望は人やら何かを拠り所にするものではなくて
じつは自分の中にある。
究極だけど悟りだ。
精神疾患の人って悟りに近いよね。
そういう意味では。
Posted by ブクログ
最初の数ページで、救われない主人公が見えた。
ミスリードが張り巡らせていて、もしかしたら思い違いかも、と思ったが、やはりそうだった。
アルケスティスはちょっと調べてみよう。
ネタバレ
画家のアリシアは、夫を殺す。
アリシアは二度死ぬ
1回目は父親から。
アリシアを隣に乗せて車で突っ込んで自殺した母。
その夜、父親がわめき散らす。
死ぬなら、母でなくアリシアだと。
その時、アリシアは、今父親から殺された、という。
そんな幼少期を過ごしたアリシアは人との距離が適切でなかったが、夫をあいしていた。
夫は、主人公セオの妻と浮気していた。
アリシアはその浮気を知らなかったが、アリシアと同じくひどい父親に育てられた主人公セオは、何も知らないアリシアを救わなくては、とアリシアを観察し、アリシアの家に侵入。
セオはアリシアに夫がひどい人間であることを教えようとして、アリシア夫婦を縛り上げ、浮気の事実を伝える。そして、夫に、夫自身を殺すか、アリシアを殺すか、を尋ねる。
アリシアは、どうせ二人とも殺されるから、と夫を励ますが、夫は、死にたくない、と言った。
それは、アリシアにとって二度目の死だった。
セオはそうとは知らず、夫の答えを聞いて、アリシアが真実に目覚めると思い、アリシアを解放し家を出る。
残されたアリシアに幼い頃のトラウマが蘇り、彼女は夫を殺す。
後にアリシアは、精神病院に収容され、一切口をきかなくなり、そこで冒頭のセオがその精神病院にアリシアを救いにくるところにつながる。
アリシアを救おうとしている、ところがもう病んでいる。
最終的に、セオに気づいたアリシアは、復讐のためセオとのセッションに応じる。
その中で、セオ自身も、アリシアが自分に気付いたと確信し、アリシアにモルヒネを投与して二度と目覚めない状態にする。
しかし、アリシアはモルヒネを投与された直後、日記にセオが犯人であることを記す。
そして、その日記が発見されセオは捕まるのだろうなぁ、というところで物語は終了する。