あらすじ
『その女アレックス』のカミーユ警部、再登場
パリのあちこちに仕掛けられた七つの爆弾。犯人だと出頭した青年の狙いは何か? カミーユ警部と富豪刑事ルイが奔走する番外編。
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Posted by ブクログ
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ。
三部作で終わりかと思っていたこのシリーズ2作目と3作目の間の時系列でもう1作品発売されていたことを知り直ぐにゲット。
作者も述べているが、三部作に比べ短い小説なので三半冊だそう。
面白くて半日とかからず読み終えてしまった。
ピエール・ルメートルの作品の良さは読みやすさと描写の細さ。
翻訳者が上手いのかもしれないが難しい言葉がなくすらすらと内容が頭に入ってくる。
また、カミーユのコミュニケーションを取る相手に対しての洞察力についての表現がかなり細かく面白い。ルイが右手を使うか左手を使うかの流れが以前からとても好き。
今回は残酷描写はないので苦手な人でもサラッと読めそう。
本作はパリで爆発事件が発生し、ジャンという青年が自首したが、別にしかけていた6つの爆弾の位置を知らせる代わりに母と自分の釈放・金・オーストラリアへ逃亡させろと要求する物語である。
登場人物が多いようでそんなことはなく、母のせいで父の死の恐怖に取りつかれる青年や公園のしがない管理人、幼稚園で働く恐らく仕事ができない女性などが物語に邪魔しない程度でさりげなく登場して花を添える。
読み進めるにつれ「あとこの残り数ページでまとまるのか?」という疑問はあったが、心に大きな爆弾を落とすかのように綺麗に終わった。
ジャンはロジーと共に爆発した。ロジーの息子に対する執着によってジャンの仕事仲間や恋人は命を落とした訳だから別の視点から見ればジャンは明らかに被害者と言ってもいいのでは無いだろうか。確かに1発目や2発目の爆弾で人を殺していた可能性も無きにしも非ずだが、彼に殺意はなかったわけで、全ては最後のためだ。
現実の出来事ではなく物語として考えなくてはいけないが、ジャンがロジーを刺すなり殴るなりして単に殺すという考えはなかったように思える。そもそもロジーが捕まっている時点で接触が難しいが、ジャンは自分が生きて母が死んでいるという状況も望んでいないように私は思えた。共依存でありながらそこには矛盾もあってそれがとても切ない。
残酷だが美しい。
Posted by ブクログ
読書備忘録547号。
★★★★★。
カミーユ警部シリーズの番外編的な中編小説。
時間軸としては3部作の中ほどの設定とのこと。
ほんと流石です。このボリュームでこの満足感。
パリの街中で爆破事件が起きる。幸いなことに死者はいない。直後に警察に自首してきた青年ジャン。
使った爆弾は第一次世界大戦で無数に降り注いだ砲弾の不発弾であると。しかもあと6発仕掛けてあるという。
青年の要求は、殺人罪で収監されている母親ロージーの釈放と、オーストラリアへの高跳びの容認。
毎日一発ずつ爆発する設定になっていると。
仕事を終わり、恋人のアンヌのところに行こうと思っていたカミーユは呼び戻され、同僚のルイと次の爆発まで時間との勝負で捜査を進めるが、仕掛けられた場所が一向に判明しない。そして再び爆発。今回も幸い死者は出ない。
捜査本部はジャンの要求を飲み、ロージーとジャンを会わせる。ロージーと会ったジャンは落ち着きを無くす・・・。何かがおかしい。ジャンの真の狙いは何なのか・・・。
そして驚くべき結末。
狂ってる母親と息子としての責任を果たす悲しいジャン。
さすがピエールでした。
Posted by ブクログ
カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ、第四弾。
カミーユ警部はかなり酷い目に遭っている。
いや、遭い続けている。
母を亡くし、父を亡くし、
妻と子を連続殺人犯に殺され、
親友を病気で亡くし、
昔の部下から罠にはめられ、
愛する女性に裏切られた。
なので、このシリーズの最後に作品に、
救いを求めてしまうのを当然ではないか。
だが、その希望はかなわなかった。
一応、また女性とつきあってるようではあったが。
不発弾を利用した時限爆弾が爆発した後、
あと6つ仕掛けたと名乗り出た爆弾犯が、
殺人で服役中の母親を釈放するように要求する。
爆弾はどこに仕掛けられているのか、
爆弾犯の真の狙いは何なのか、
長年の部下ルイとともに捜査をするカミーユ。
ミステリーとしては面白かったが、
カミーユには幸せになってほしかった。
Posted by ブクログ
久々のピエール・ルメートル作品。
衝撃を受けた「その女アレックス」シリーズです。
正しくは「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」「傷だらけのカミーユ」の三部作。
身長145cmのヴェルベーン警部が活躍するシリーズは三部作だと思っていたら、出ました!続編となる本作。
期待していた割に積読期間は長かったですが、前三作と比較すれば半分程度のページ数、サクッと読み終えた分どうしても前三作と比較した時に物足りなさを感じてしまいました。
本作は著者が偶然道路脇に空いた穴を見かけ、すでに読み終えた「天国でまた会おう」を執筆中にインスピレーションを受け生み出された作品。
もうヴェルベーン警部に会えないと思っていた読者にはまさにプレゼントとなりました。
シリーズを通してヴェルベーン警部が登場する為、一見して彼が主人公のシリーズ物という見方をしてしまいますが、本シリーズの最大の魅力はそこに描かれる女性だと思います。
アレックスのインパクトが強すぎたが故にその後も著者の作品を手に取ることになったことは事実です。
そして本作にもきっちり影を纏った女性ロージーが登場します。
今までとの違いは、アレックスを始めとする女性陣が主役を務める訳ではなく、爆弾を仕掛けたジャンの母親として登場します。
まぁ、ラストに近づくとロージーも只者ではない事が明かされていきますが。
内容的に時系列に並べれば「その女アレックス」と「傷だらけのカミーユ」の間に位置する本作。
読み終えた瞬間に「その女アレックス」を再読したくなったのは私だけでしょうか…
説明
内容紹介
シリーズ累計120万部突破!
『その女アレックス』のカミーユ警部、ただ一度だけの復活。
連続爆破犯の真の目的が明かされたとき、残酷で美しい閉幕が訪れる。
パリで爆破事件が発生した。
直後、爆破犯は自分であると警察に出頭した青年ジャンは、爆弾はあと6つ仕掛けられていると告げ、金と無罪放免を要求する。
右腕のルイとともに事件を担当することになったカミーユ・ヴェルーヴェン警部は、青年の真の狙いは他にあるとにらむが……。
『その女アレックス』のカミーユ警部が、ファンの熱い声に応えて、富豪刑事ルイ、巨漢の上司ル・グエン、猫のドゥドゥーシュらとともに一度だけの帰還を果たす。『その女アレックス』と『傷だらけのカミーユ』のあいだに挟まる「カミーユ警部シリーズ」第2.5作。
残酷にして意外、壮絶にして美しき終幕まで一気読み必至。
内容(「BOOK」データベースより)
パリで爆破事件が発生した。直後、警察に出頭した青年は、爆弾はあと6つ仕掛けられていると告げ、金を要求する。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は、青年の真の狙いは他にあるとにらむが…。『その女アレックス』のカミーユ警部が一度だけの帰還を果たす。残酷にして意外、壮絶にして美しき終幕まで一気読み必至。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ルメートル,ピエール
1951年、パリに生まれる。2006年、カミーユ・ヴェルーヴェン警部3部作第1作『悲しみのイレーヌ』でデビュー。同第2作『その女アレックス』でイギリス推理作家協会賞を受賞。日本では「このミステリーがすごい!」ほか4つのミステリー・ランキングで1位、「本屋大賞」翻訳小説部門でも第1位となった。『天国でまた会おう』でフランスを代表する文学賞ゴンクール賞、カミーユ警部3部作完結編『傷だらけのカミーユ』で、イギリス推理作家協会賞を受賞
橘/明美
1958(昭和33)年、東京生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。英語・フランス語翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)