【感想・ネタバレ】来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくりのレビュー

あらすじ

館内は暗くスタッフに笑顔がない――。こんな低迷状態だったサンリオピューロランドをV字回復へと導いたのが初の女性館長・小巻亜矢。専業主婦から復帰、テーマパーク事業の素人ながら、短期間で笑顔とモチベーションにあふれる職場に変えたノウハウとは?壮絶な人生と心理学から導き出されたマネジメント術を全公開

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Posted by ブクログ

ネタバレ

サンリオピューロランドという場所は、かつて「伸びしろだらけ」の箱だった。夜勤中の静寂の中で手に取った小牧亜矢氏の『来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり』は、単なるビジネスの成功譚を超え、一人の女性の凄絶なまでの人生訓と、組織における「対話」の本質を突きつけてくる一冊だった。
著者の小牧氏は、サンリオへの憧れから入社し、結婚・出産を機に一度は家庭に入るも、お子さんの事故やうつ病、離婚といった幾多の困難に直面してきた人物である。さらには再就職後に乳がんや子宮内膜症を患い、摘出手術を経験するという過酷な状況を乗り越えてきた。51歳にして東京大学大学院へ進学し、学びを深めた彼女の知性と行動力には、同じ30代として畏敬の念を抱かざるを得ない。
彼女がピューロランドの館長、そして社長へと昇り詰めたきっかけは、一人の客として訪れた際に感じた改善点をまとめた20枚ものレポートを当時の会長に送ったことだった。異色の経歴を持つ彼女がトップとして実践したのは、強権的なトップダウンではなく、スタッフ一人ひとりの「お母さん」を目指し、現場に眠る熱い想いを紐解いていくことだった。彼女は自身の役割を「仕組み化」と「スタッフの心を揺さぶること」に限定し、サンリオというブランドが本来持つポテンシャルを信じ抜いた。その姿勢は、職場の人間関係や「愛されること」の重要性を日々実感している私にとって、理想の上司像そのものとして映った。
特に魂を揺さぶられたのは、サンリオの創業者である「いちごの王様」の理念「みんななかよく」に対し、小牧氏が加えた「まず自分自身となかよくする」というエッセンスである。自分を慈しみ、肯定できて初めて、他者との真の調和が生まれるという視点は、これまでの私の価値観に深い楔を打ち込んだ。また、「サンリオ(Sanrio)」という言葉が「聖なる(Saint)川(Rio)」を意味し、企画、製造、配送といった全ての工程を経て、最後に商品を届ける売り場があるという教育思想も、働くことの尊さを改めて教えてくれる。
この本の内容をパートナーの落ち恵に話した際、彼女が感動のあまり涙を流した姿を見て、この物語が持つ普遍的な力を再確認した。人は誰しも、自分の情熱が何かに阻まれ、くすぶる瞬間がある。小牧氏は、その「わだかまり」をロジカルかつ感情的に解きほぐしただけだと言うが、それこそが最も困難で、最も尊いリーダーシップなのだ。
読後、私の心には「聖なる川の最後の一滴として、自分はどうありたいか」という問いが残った。効率や数字に追われる日々の中で、まずは自分を愛し、隣人と手を取り合うこと。そんなシンプルで力強い勇気を与えてくれた本書は、今後の人生における確かな指針となった。

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2026年02月09日

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