あらすじ
「格差ってのは上と下にだけあるんじゃない。同じ高さにもあるんだ」。高度200メートル。僕はビルの窓を拭く。頭の中で響く声を聞きながら。ある日、ふとガラスの向こうの老婆と目が合い……。境界を越えた出逢いは何をもたらすのか。無機質な都市に光を灯す「生」の姿を切々と描き切った、まったく新しい青春小説。
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Posted by ブクログ
私たちは多くの生に囲まれて生きているが、その生を深く意識することはない。周りの皆は「当たり前のように」生きている。それを「生きているもの」として真面目に意識するとどこか不安な(不快な)気持ちになる。ビルを模した箱にビルで生きる人の写真を貼り付けて眺めることもまさに生を真面目に見るような行為で、老婆はある意味一種の自傷行為をしているように感じられた。鏡が怖いのも、鏡をまじまじと見ると似たような感情になるんだろうなーと一人で勝手に考えてしまった。
このようなファンタジーっぽい展開の物語は苦手だったが、ビルの清掃という死と隣り合わせの環境、北にある島の話、箱に貼られた写真がどれも「生きること」とは何かを伝えようとしている感じがして一気に読み進めてしまった。
「平成くん〜」もそうだったが、現代文化が随所に含まれている。10年後、20年後また読み返すと懐かしい気分に浸れるだろう。「平成くん〜」と本書ですっかり古市さんのファンになってしまった。
Posted by ブクログ
私の独断と偏見の考察
・老婆と翔太は、時代は違えど同じような境遇である(死者の声が聞こえる、島の話を知っている、漠然とした思考で生きている)
・物語のキーワード"格差"は老婆と翔太のこと。同じような境遇で同じように悩んでいる(だから引かれあい需要と供給を満たしていたのでは)のに、高価なタワーマンションに住む老婆と一般的な家の翔太、という格差。
タワーマンションという高さも高くて価格も高い老婆、高所という高いところで作業する翔太。同じ高さに居るのにここにも格差が生じている。
Posted by ブクログ
夜空をかっぱいでいく。無数の光が降り注いでいた。その光は、誰が生きている証でもあるし、誰かの終わりを弔っているようでもあった。どちらにしても、ひどく眩しい夜だと思った。