あらすじ
著者は、心の無意識までを含んだ四次元の地図を作成する作業の全体を、「アースダイバー」と名づけました。258万年前から現在にいたる地質の変遷を示す「第四紀地図」図と考古学の発掘記録、それに現代の市街図を組み合わせて、土地のもつ「本当の姿」を明らかにしていきます。またその作業には、古代人の心の構造を教える人類学、歴史学、心理学などあらゆる知が境界を越えて動員されます。今回その対象となるのは、大阪です。現在の大阪は5000年前にはほとんどが海面下にありました。南北に走る細長い上町台地だけが、古くからある陸地です。その南北の線を軸に、そして東の生駒山脈から発する死のパワー(デュオニソス軸)が、東西に力を加え、その座標軸が大阪の基盤をつくっていると著者は考えます。そしてその交点にある四天王寺が大阪の中心となっています。物差しをもつ聖徳太子=太子信仰は、職人的世界のバックボーンになっています。一方ミナミ、キタ、ナニワなど大阪の中心地は、「くらげなす」砂州の上に成立し、それゆえに浮遊する世界=都市=商業を発展させえたということなります。大阪の古層にある、南からの海洋民、半島から到達した「海民」をキーワードに、大阪の無意識へとダイヴィングするスリリングな冒険を試みます。
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Posted by ブクログ
千日前のジュンク堂で平置きされているのを見て衝動買いしました。「千日前」という土地のパワーがそうさせたのか(笑)、ちょうど知りたかったことが書かれている本でした。
大阪の地勢的な歴史を調べていると「アースダイバー」という言葉に行き当たっていたところなので、本書に巡りあえたのはラッキーでした。
上町台地の南西の端っこ、住吉大社のすぐそばに住まいしている身にとってはこの土地が古来から海の民が住み着いていた由緒正しい土地だと確認できて非常にうれしい。
本書で大阪の二つの軸の交点として中心的役割を与えられている四天王寺という寺が聖徳太子由来の日本最古級の寺であるにも関わらず、こんにちあまりにもカジュアルすぎて「この寺はいったい何なのだ?」と思っていたのであるが、なるほどそういう機能を持った装置であったのかと納得。
(それにしても「俊徳丸」って男版白雪姫みたいですよね)
図版や写真も豊富で、大阪に馴染みのある人もない人もそれになりに実感がわくと思います。でも、大阪人には読んで欲しいなあ、大阪に住んでいることに誇りがもてるようになります。
橋下氏の「維新の会」の向かおうとしている方向についても「あとがき」でちらっと苦言を呈しているあたり、「今読むべき本」であると確信しました。
難を言えば、熊野に繋がる南北の軸についても語るべきことはあるだろうと思いましたが、それはアースダイバーの仕事じゃないのかもしれないので、目を瞑りましょう。
何よりも著者の「大阪愛」ひしひしと伝わってくるのがうれしいです。