あらすじ
カイエ・ソバージュここに完結。新たな知の営みへ! 神話、国家、経済、宗教、そして対称性人類学へ。「圧倒的な非対称」が支配する世界の根源を問う冒険、ここに堂々完結。抑圧された無意識の「自然」は甦るのか?「対称性の論理」が切り開く新たな世界とは?野生の思考としての仏教を媒介に、来たるべき形而上学革命への展望を示す。
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Posted by ブクログ
中沢新一カイエ・ソバージュの最終巻。
唱えてきた今のところの対称性人類学のまとめだ。
以下は気になるところをつらつらと。
序章より
・神話に登場する動物は「気まぐれ」では選ばれない。
・ガンギエイが神話に登場するのは、ある側面から見るか他の側面から見るかによって、イエスかノーか一つの答えのみを与えうる動物だから。
いわばその答えを積み重ねることによって非常に難しい問題を解く現代のコンピューターと同じである。
第三章より
・キリスト教と結びついた資本主義が発達した理由は三位一体にある。
・グアラニ族の預言者たちは<一>を恐れていた。
・私たちは<一>の魔力にとりつかれている。
第四章より
・レレ族は自分たちの動物分類学に属さないアリクイを例外者として怪物的な存在と捉えて、秘密の儀式で食べる。
・迷宮の概念。
・女性は初めから「自然智」を持っている。男性の手にする「秘密智」は厳しいイニシエーションの試練を乗り越えなければならない。女性はその男性を温かく迎えることで結びつく。
第七章より
・「さち」は贈与論的な思考が働いている。「さ」は動物霊の領域と人間の領域の境界面を現している。その境界面に満ちている霊力が「ち」。
「海の幸」も「山の幸」もそうやってやってきた贈与物。
・全てを性に還元するのは間違い。性的体験も宗教的体験もよく似たタイプの異なる悦楽のあらわれにほかならないと思うべき。
第八章より
・経済活動にはなにかを生み出そうとする「生の衝動(エロス)」だけで動いているのではなく、その根底には破壊や死を目指す「死の衝動(タナトス)」が潜んでいる。
終章より
・無意識の行う対称性=高次元性=流動性=無限性をひめた潜在能力は形而上学化された世界で自由を奪われているように見えるが、確かに存在し、発達しようという可能性はまったく損傷をうけていない。
カイエ・ソバージュを読破して本当に良かったと思っている。
丁寧に一巻ずつ五巻にたどりつくまで語られている。
とてもわかりやすかった。
このタイミングでこの本に出会えたことに感謝している。