【感想・ネタバレ】なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造のレビュー

あらすじ

【「東洋経済オンライン」ジャーナリズム賞受賞! 上野千鶴子さん推薦】シンガポール在住、現在は日本とシンガポールを行き来しながら活動する著者が、日本の働き方の矛盾に斬りこんだ本書。 ●仕事と家事・育児の両立にいっぱいいっぱいの共働き家庭 ●家事・育児の責任を一手に背負い、逃げ場のない専業主婦 ●「稼ぎ主プレッシャー」と滅私奉公的働き方を課された男性 こうした「共働きも専業もしんどい」状況は、じつは日本社会の「主婦がいないと回らない構造」が生み出していた。長時間労働や無制限な転勤など、終身雇用・年功序列という制度で回してきた「日本のサラリーマンの働き方」。これらの制度は、主婦の妻が夫を支える前提で作られている。専業主婦前提の制度は、会社だけではない。丁寧すぎる家事、保育を含む教育への予算の低さ、学校の仕組み……問題は社会の様々なところに偏在し、それぞれが絡み合って循環構造を作っている。「女性が輝く社会」というスローガンがむなしく聞こえるのは、この構造が放置されたまま、女性に「働け、輝け」と要請しているから。ギグ・エコノミーや働き方改革、多様化する働き方は、循環構造を変える契機になり得るのか。日本の「主婦がいないと回らない構造」を読みとき、その変化の兆しを探る。「東洋経済オンラインアワード2018」でジャーナリズム賞を受賞した好評連載に大幅加筆のうえ、書籍化されたものの電子版。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・仕事と家事・育児の両立にいっぱいいっぱいの共働き家庭
・家事・育児の責任を一手に背負い、逃げ場のない専業主婦
・「稼ぎ主プレッシャー」と滅私奉公的働き方を課された男性
こうした「共働きも専業もしんどい」状況は、じつは日本社会の「主婦がいないと回らない構造」が生み出していた。
長時間労働や無制限な転勤など、終身雇用・年功序列という制度で回してきた「日本のサラリーマンの働き方」。
これらの制度は、主婦の妻が夫を支える前提で作られている。
専業主婦前提の制度は、会社だけではない。
丁寧すぎる家事、保育を含む教育への予算の低さ、学校の仕組み……問題は社会の様々なところに偏在し、それぞれが絡み合って循環構造を作っている。
「女性が輝く社会」というスローガンがむなしく聞こえるのは、この構造が放置されたまま、女性に「働け、輝け」と要請しているから。(紹介文より)
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子どもを育てながらフルタイムで働いている私には、とても響いた1冊。
現状はよくわかった。
社会的背景も納得のいくものだった。
じゃあ、今どうするの?の答えはない。
少しずつ社会は変わっているけれど、今私を楽にしてくれるものではない。
社会が変わるには、時間がかかるのだ。と諦めを強くする1冊。

第一部なぜ共働きも専業もしんどいのか
・1955年から半世紀以上主婦論争が続いている
・①好きで専業主婦をやっているわけじゃない
②好きで専業もをやってるから、ほっといて欲しい
・制度や仕組みを疑うことなく自己責任論に帰してしまっていいのか。本当は改善された方がいい既存の課題含みのシステムは放置され、時に強化されてしまう
・人は相対的な不満を抱える生き物。もしかしたら自分も選べたかもしれない選択肢を羨ましく思う
・「仕事も子育ても」は、ワガママなのか。
・教育問題や社蓄を生んだ戦後日本型循環モデル

第二部主婦がいないと回らない構造
・しんどさのカギは「自己決定できること」「自分で時間や状況をコントロールできること」
・共働きが増えたといっても「夫は仕事、妻は仕事家事育児」
・共働きとはいえ女性は約6割が非正規。正社員は専業より少ない。
・日本の家事は高度化している
・子どもは完璧な献立より、楽しいお母さん、楽しい食卓がいい

第三部変わる社会の兆し

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シンガポール在住で二児の母である著者が、日本の社会を分析する

第一部 なぜ共働きも専業もしんどいのか
1 共働きがしんどい
・専業主婦を志向する20代女性が増えている
 → 共働き家庭で育った子どもが、親の背中を見て「こうなりたい!」と思える環境でない
・親世代は祖母(元専業)という頼れる存在がいたが、現在では頼れる仕組みがない
・男性が主夫になったところで周囲の理解は得づらい
男性用トイレにおむつ替え台がなかったり
・夫婦フルタイムはしんどい
 →キャリア競争から降りるか、離職につながってしまう
 保育園のお迎えで早上がりすることの罪悪感
・子どもとの時間が足りない、十全な育児ができていないのではないか、という自信のなさ

2 専業主婦がしんどい
・夫の転勤に付き合うしかない
休職制度がなければ仕事を辞めざるをえない、帯同先で孤立してしまう
・夫や社会に引け目を感じてしまい、お金を使いづらくなったり、家事のプレッシャーが強まる
・「自分で選んだんでしょ」といった自己責任論や、「専業になれるなんていいですね」という嫌味
・専業を経て再就職したり、柔軟に働く人が増えることで、専業とワーキングマザーという対立軸がなくなるのではないだろうか

3 しんどさを生み出す循環構造
・1950年代半ばの高度経済成長期、都市部への人口流入とともに「サラリーマン」が激増
 →それまでの農業や自営業では家族ぐるみで働いていた
・核家族で団地に住み、専業主婦が支えることを前提とした仕組み
会社が家族ごと丸抱えするような福利厚生、給与体系
・男性中心の雇用と女性雇用のあり方が相互補完関係になっており、一種の均衡を形成していた
→ワークライフバランスを重視する企業が現れても競争に負けてしまう
→家庭における性別分業にもつながった
・高度成長時に合理的と選択された結果に今も依存している(経路依存)
→ひとたび選択されてしまうと、相互補完的な制度の集まりのセットとなり、部分的な変更が難しくなる
→男女の賃金格差が「合理的」となってしまい、再生産される悪循環(劣等均衡)


第二部 主婦がいないと回らない構造
第一章 主婦に依存する日本の社会
1 転職に踏み切れない、早く帰れない男性
・住宅ローンなどの仕組みもあり、辞めにくい
・転職を妻に反対される
・妻が働こうにも、保育園が確保できない

2 主婦を生み出す転勤の仕組み
・日本のサラリーマンは「時間、場所、職務が無限定」
転勤を断れない、メンバーシップ型雇用
→判例では徐々に転勤を断れるように変わってはいる
・夫に帯同するため仕事を辞める妻
夫の単身赴任によるワンオペ育児を避けるため、帯同休職or退職
→配偶者帯同休職制度があっても、夫の滞在期間が延びれば辞めざるをえない
・帯同した妻の就業を、夫の会社が認めないことが多い
→妻が夫をサポートすべき、という観念が根底にある?

3 「パート主婦」はなぜ値切られるのか
・日本では高学歴主婦が多い傾向
→学歴に見合う就業機会がない
・高処遇の仕事は拘束性が強く、パートは時間の融通は聞くが低賃金であり経歴を評価されない
・103万の壁

第二章 専業でないとこなせない?日本の家事
1 高度化する家事
・「片付いていない」と言いながら、ホテルのようなもてなしを頑張る専業ママ友
→親世代からの水準の引継ぎ、インスタ映え
・家電が発明されても家事時間が減らない現象は、家事時間のパラドックスとして万国共通
→時間が減ったのは裁縫くらいで、あとは技術の発達によって家事の水準自体が上がってしまう
・家事代行サービスの利用も進まない
→他人を家に入れることへの抵抗、サボっていると近所の人に思われそう

2 一汁三菜「おふくろの味」は幻想だらけ
・日本の食文化のレベルは高い、給食やキャラ弁など
アメリカのランチはビスケットやポテトだけ?
・1960年代以降の女性が料理をしていない傾向
→その母親世代は雑誌やテレビを通して料理を学んだため、教えられておらず、娘にも教えていない(あえて強要しなかった?)から
・一汁三菜は実はもてなし料理

3 主婦のアイデンティティと自己納得
・井戸端会議はネットワーク、入れなかった場合は致命的
・離職によって家事が生きがいに
認知的不協和
「男女平等であるべき」と思っていた人が専業主婦になると
①認知自体の修正(性別役割分担のほうが合理的だな)
②現実を認識に合わせる(やっぱり働きに出たい!)
のどちらかを選ぶことになる
→①のパターンが多い?
・夫に嫌われたら終わり
夫のカネで生活、フラストレーションを飲み込むようになる
自分がここに住んでいられるたった一つの理由「夫の愛を確保できていること」
・団塊世代の主婦
夫に家事をやらせず、靴下のありかもわからないようにしておく
→私がいないとダメだと思わせる、依存させるという生存戦略

第三章 子育て後進国・日本の実態
1 ワンオペ育児に苦戦する母親
・仕事と育児の両立中、仕事をやめようと思ったことがある女性は55.5%
→理由としては「子どもに向き合えない」が多い
・専業主婦は逆に負担が重かったり、時間を持て余している
→子どもの体力を使わせ、時間を費やすために習い事へ通わせる
→それを見た共働き家庭も、焦って習い事へ行かせる

2 祖父母頼みは成り立つか
・教育方針の違いと世代間ギャップ
→実の親子である母娘関係も例外ではない
母に助けてもらっているのは事実なので、不満を言い辛い

3 置き去りにされる「保育の質」への不安
・3歳までは母の手で育てる(三歳児神話)は神話にすぎない
→世界的にはむしろ、就学前教育への公的投資に注目
・日本は「量」の確保で躓いていて、「質」の議論が二の次
保育園はほったらかし、幼稚園は専業向け?

4 立ちはだかる「小一の壁」
・それまでとは別の問題が出てくるが、周囲は「だいぶ楽になったでしょう」
放課後の居場所問題、いじめ、「紙ベース」の学校連絡、PTAなど

第3部 変わる社会の兆し
1 変わる夫婦
・専業主夫になればいい、と役割を入れ替えるだけでは解決しない
男性も女性ももっと流動的に仕事を変えられるように

2 変わる働き方
・フルとパートの間、週3~4日の働き方
・ギグ(単発の仕事)エコノミー
→保険制度の見直し、価格保証などフリーランスの保護が必要

3 変わる人事制度
・ジョブ型(勤務地や職務を明示化)や手挙げ制、転勤の見直し、リモートワーク
・キャリアの階段を緩やかに
欧米ではキャリアを追求するエリートのみが長時間労働をしているが、日本は「皆階段を上る」
→キャリアを追求すればケアは難しいというのは世界共通なのでは

4 変わる家事
・家事代行の市場規模や多様化が進んでいる
Ctoのマッチングなど、利用者増の鍵は「対等感」
→お願いすることで、家事は有償であり、れっきとした仕事だということに気付く

5 変わるべき保育・学校
・利用者同士が子どもを預かったり送迎したりするサービス(アズママ)
→ファミサポやシルバー人材は世代間ギャップ

6 変わる世界の中で
・日本企業はダイバーシティといって主に「女性活躍」を進めてきた
→これからは女性という「属性」ではなく、「個をどう生かすか」に視点が移っている
多様性はコミュニケーションコストがかかるが、革新的なアイデアが出やすい

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2022年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

書名通りのためあらすじ割愛。

現在子あり専業主婦の立場で、いずれは働きたいと考えているので、共働き、専業主婦どちらに関しても非常にためになりました。専業主婦については、自分では言語化できなかった部分を説明してもらえて、そうそう!と納得しました。
共働きに関しては、子供が大きくなるにつれて生じる問題が次々とあり、正直いつになったら働き出せるのかと不安にもなりました。
そして実際働き出したとしても、社会の構造上、主人に家事育児の一部を担ってもらうことは不可能なのだと絶望しました。
何度脳内でシミュレーションしても、全ての負担が自分にのしかかる姿しか想像できません。主人は保守的な人間なので、私が働きに出るまでに劇的に社会構造が変わることを強く願います。
子供が生まれてからは働きに出ていませんので、ワーママの実態について知ることができ、参考になりました。


自分で言語化できなかった部分は「sentient activity」という言葉です。ケアが成り立つために必要な「感知すること」「思考すること」。
この概念を知ったことは私の中では画期的なことでした。文中の例でもありましたが「料理をする」という一つの家事について、主人に任せた時は本当に単純に「料理をする」という事だけしかしませんが、私が日常の家事の一つとして「料理をする」となった時、その背景に冷蔵庫や日用品の「在庫を確認」して何日分かの「献立を立て」「買い出しに行き」、子供のお迎えや子供に割く時間配分を気にしながら、そこでやっと出てくる「料理をする」、その後も、調理後の「洗い物」「配膳」など…。たった一つの「料理をする」という家事をこなすだけで、言い出したらキリがないほどさまざまなタスクが生じます。そしてそれらが所謂「名もなき家事」にあたるのだな、とここまでは私の事前の知識の範疇でした。
更に「sentient activity」を加えると、献立を考える時に子供や主人の状況や好み、いつ買い出しにいけるかといった感覚的なマネジメントが加わります。
「こうした「sentient activity」を通じたマネジメントを女性ばかりが担っており、その状態から夫など誰かに作業を委ねようとするとかえって言語化する手間が生じること、マネジメントが目に見えない活動ゆえにその困難を男性に理解させることが難しい」(p.44)には激しく同意しました。

なぜ主人に料理を任せても私自身の負担が思ったより減らないのかがよく分かりました。
なぜ自動調理器やお掃除ロボットを導入しても家事の負担が思ったより減らないのか、本書を読んでとても良く分かりました。
そしてこれらの負担を確実に減らすためには、社会全体の構造を大きく変えていく必要があるのだとよく分かりました。
まだ私が働きに出ることが可能になるまで数年あります。それまでに社会構造が変わるとは到底思えないので、自身でできることを探していこうと思います。

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2019年10月07日

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