あらすじ
連続レイプ殺人事件の容疑者を射殺した刑事ボッシュは、その妻から夫は無実と告訴される。そんななか、新たな殺人が発生する。
コンクリート・ブロンド事件は、公式には未発表のドールメイカー事件の手口に似ているため、捜査班は警察内部に近い人間による模倣犯罪であると睨む。まず捜査線上に上ったのが風紀取締課のモーラ刑事。違法ポルノヴィデオ摘発などに携わるうちに自らその世界にのめり込んでいるらしい、と噂の男だ。留守をねらい単身、彼の家に侵入するボッシュ。おびただしい数のヴィデオテープの中にモーラ自身が出演しているものを見つけた彼は真犯人を突き止めたと確信したのだが…。LAが舞台のシリーズ最新作。
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Posted by ブクログ
ハリー・ボッシュシリーズの中で何度も引用されるドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』からの一節が原告側弁護士ハニー・チャンドラーによって、初めて引用される。
「怪物と戦うものはだれであれ、その過程において、自分が怪物とならぬよう気をつけねばならぬ。そして、深淵を覗き込むとき、その深淵も逆に見つめ返しているのだ・・・」
つまり、ボッシュが「ドールメイカー」事件で、ノーマン・チャーチを射殺したのは、深淵を覗くあまり怪物の側に立ってしまったからではないか、という指摘で、ボッシュの出生の事情や心に抱えている精神の闇(ブラック・ハート)が追求されていく。
ボッシュが背負っているトラウマ、自己の闇に立ち向かうため警察組織からはみ出した孤独な一匹狼となり、事件の渦中に飛び込み、自ら捜査する過程でその深淵と対峙していく姿が斬新なハードボイルドを感じさせる。
猟奇的な殺人事件を科学的、法的な見地から追求し捜査していく迫力、
やり手女性弁護士との臨場感あふれる公判場面、
迫り来る見えない敵との闘い!
それらがどれもスリリングで、息もつかせぬままクライマックスからエンディングへと導かれる。