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Posted by ブクログ
ハリー・ボッシュシリーズの中で何度も引用されるドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』からの一節が原告側弁護士ハニー・チャンドラーによって、初めて引用される。
「怪物と戦うものはだれであれ、その過程において、自分が怪物とならぬよう気をつけねばならぬ。そして、深淵を覗き込むとき、その深淵も逆に見つめ返しているのだ・・・」
つまり、ボッシュが「ドールメイカー」事件で、ノーマン・チャーチを射殺したのは、深淵を覗くあまり怪物の側に立ってしまったからではないか、という指摘で、ボッシュの出生の事情や心に抱えている精神の闇(ブラック・ハート)が追求されていく。
ボッシュが背負っているトラウマ、自己の闇に立ち向かうため警察組織からはみ出した孤独な一匹狼となり、事件の渦中に飛び込み、自ら捜査する過程でその深淵と対峙していく姿が斬新なハードボイルドを感じさせる。
猟奇的な殺人事件を科学的、法的な見地から追求し捜査していく迫力、
やり手女性弁護士との臨場感あふれる公判場面、
迫り来る見えない敵との闘い!
それらがどれもスリリングで、息もつかせぬままクライマックスからエンディングへと導かれる。