【感想・ネタバレ】天才と発達障害のレビュー

あらすじ

アインシュタイン、モーツァルト、ヴィトゲンシュタイン、南方熊楠、芥川龍之介……「異脳の人」を殺さないための処方箋を明かす!

本書は、「創造」「才能」がいったいどのようにして生まれてくるのかを、誰もが知る天才たちを具体的に挙げながら、精神医学的見地から解き明かす作品である。

歴史上の天才たちには、精神疾患の傾向がみられることが多い。これは数々の医学的データから明らかになっている。たとえば音楽の天才モーツァルトは、明らかに発達障害の特徴があった。落ち着きない動作、「空気」を読まない所作などで周囲から嫌がられた。一方、創作に入ると「過剰な集中力」を示し、素晴らしい作品を瞬く間に書き上げた。

物理学の歴史を変えたアインシュタインは、ASD(自閉症スペクトラム)の症状を示していた。他者とのコミュニケーションに障害を抱え、言葉の発達も遅れていた。しかし、飛び抜けた数理的洞察力によって、古典的物理学の常識を覆す理論を打ち立てた。

著者は、発達障害には「マインド・ワンダリング」(いわゆる「心ここにあらず」の状態)、そして「過剰な集中」という2つの特性があることを指摘。そして、相反するこの2つの特性が、天才の特異な能力と密接に結びついているという仮説を提示する。

そして、「才能をもつ子供や若者をいかに殺さずに育てるか?」というテーマについて、日本社会が取り組むべき解決策を提案する。発達障害に悩む親や本人にとっても福音となる作品だ。

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■マインド・ワンダリングとは現在行っている課題や活動から注意がそれて無関係な事柄についての思考が生起する現象のこと。人間は目が覚めている時間のうち約30~50%を「心ここにあらず」の状態で過ごしているという指摘もある。
■マインド・ワンダリングは意識的なものと無意識的なものに大別される。その内容や広がりも、時間(未来、現在、過去)自己との関連性、モダリティ(言語、映像)などで分類され多様なものが含まれる。
■過去の多くの研究ではマインド・ワンダリングについてはネガティブな影響が強調され否定的にとらえられていたが最近になってポジティブな側面が注目を集めている。その代表的なものがマインド・ワンダリングと創造性との関連である。
・拡散的思考(発散的思考)が創造性における重要な要素
・拡散的思考とは新しいアイデアを多く生み出していく思考方法
・拡散的思考には思考の流暢性(発想の数の多さ)、柔軟性(発想の多様さや柔軟さ)、独自性(発想の非凡さや稀さ)など、創造性につながる要因が関連していることが明らかになっている
・拡散的思考の対極にあるのが、既知の情報から論理的に思考や推論を進めていき正解に到達しようとする「収束的思考」
・拡散的思考は既知の情報を元にしながら様々な方向に考えを巡らせてまったく新しいアイデアを生み出そうとする。一つの正解を求める収束的思考と異なり、自由な発想によって無限にアイデアを膨らませていく想像力が必要となる
■ランゲ=アイヒバウムによる「天才」の本質
①たいていの天才は精神病者ではなくて精神病質者である。
⓶こうした精神病質者の天才は内面的に分裂した心を持ち、緊張した神経質かそれとも神経症的である。
③精神病質であると同時に何かの麻薬中毒であることが多く、たやすく一過性の精神病になった経験を持っている。
④精神病質の基盤の上に極端な精神的例外状態を示すものが多い。心内沈潜、放心、幸福感、創作陶酔、法悦感、霊感の横溢、回心の危機など、このような状態はしばしば誤って「狂気」と周りから思われる。
⑤本当に精神病が出現した場合でも精神病的障害と生産的創作との間にいつも原因的な関連が成り立っているとは限らない。時間的に一致したということさえないことがよくある。

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2020年05月24日

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NHKの朝ドラ『らんまん』で牧野富太郎に関心を持ち(小学校の教科書に載っていた人物とのことだが、まったく記憶にない)、朝井まかての『ボタニカ』を読んだ。「類稀なる天才だけど、人間としてどーなのよ!」と思い、本書を手にした。

本書で、天才の能力が何らかの発達障害と結びついていることを知り、牧野富太郎について理解が深まった。確かに、映画『アマデウス』で描かれたモーツァルトも奇人であったし、テレビドラマ『風よあらしよ』で描かれた伊藤野枝も非常にエキセントリックであった。

(私は、サリンジャーの作品を読んだことはないが)著者は、作品の内容を精神医学の視点から読解しているが、味気無いと思った。著者は次のように書いている:サリンジャーの研究科によれば、(中略)しかし、このような解釈は納得のいくものではない。

著者が言いたいことは、最終章「誰が才能を殺すのか?」にあり、日本社会の多様性のなさ、不寛容を問題視しており、仰る通りだと思う。ただ、『ボタニカ』の感想にも書いたように、こうした人たちとは関わり合いになりたくない、というのが正直なところ。

朝ドラをきっかけに精神医学を勉強することになるとは!

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2023年07月09日

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天才と馬鹿は紙一重と言われる。後世に偉大なる人物として名を残す政治家、文学者、芸術家、科学者たちが、社会から異端とされながらも大きな実績・成果を残してきた事実、その背景について精神面の研究と照らし合わせていく内容。
大半の人が自分にもそう言う面があると考えるうつ病や、幼い頃を振り返ると何処か当てはまる時があったなと感じるADHDやASD。
小さい頃は突然授業中に奇声を上げたり、変顔をしながら異常なハイテンションで周囲に話かけてた自分の事を未だ鮮明に覚えてる。現在の私は天才でも優れたビジネスマンでも何でもない人間(普通だと思っている)なのだが。そんな幼い頃がダメだったかと言えば、両親の教育のせい?でテストは100点以外とったこともなく、運動会のリレーのアンカーは不動、学級委員にも毎回選ばれたりはしてた。高校までがピークで大学時代はほぼ若年時代の活力はほぼ使い切っていたには等しい。何事にも「適当、興味無し」だった。
本書を読んで感じられるのは、人間誰しも生きている間の、能力の発展や情熱を捧げられる総容量(キャパシティ)は凡そ同じくらいであり、それが山型の二次関数の曲線の様に人生の長いスパンの何処かで頂点が来るのではないかと思う。ある人はごく短期間に極めて高い位置まで届くが以降は低迷したり、またある人は緩やかに上がって徐々に加工するといった具合。タイミングや度合いによっては運悪く精神疾患の診断を受けるのだが。要は山の描き方を緩やかにできるか、歯止めが効かず何処までも上り詰めるかの違い。
私も過去に仕事で天才的なマネジメントをする方に出会った事があるが、発想も判断力も気付きも何もかもが全て超人的と感じた。一度会議が始まると朝まで怒鳴り散らす事もザラ。一方で会議中は虚ろな目でぼーっとしたり目を閉じて(恐らくは)眠ってしまう事もあった(そう言う時に限ってズバリ突っ込まれたくない部分をいきなり指摘もしてくる)。
読みながら何度も身の回りにいたその様な人達、自分の過去も照らし合わせて、もしかしたら自分もちょっとは天賦の才があったかも?使いどころを間違ったかも?と妄想しながら読める。面白い!

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2023年03月26日

Posted by ブクログ

多くの事例から、いわゆる天才とされる方々に内包される精神的な症例に対して目を向ける書。タイトルからある種の重さを予感していましたが、思ったよりも(?)軽く読み進めることができました。最後にあるインクルージョン(包摂)が印象的でした。

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2021年04月10日

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天才と呼ばれる多くの人たちは大抵発達障害を持っていた。逆に発達障害は傑出した才能開花の可能性を秘めているとも言える。
世の価値観を変革するトリックスターは常人では担えない なり得ない。既存の価値観を無視・破壊し新たな価値を創造する発達障害者が時代を塗り替えていった。


文学や芸術には発達障害が原因となる鬱や不安障害による幻覚や幻聴が現す世界が投影されることが多い。常人の到底考え及ばぬものや作者独自の世界観として最高峰と評される作品は様々な精神病の苦悶の末に生み出されたものと作者の苦しみも含めて読むことができたらなお味わえるのではないだろうか。


天才が生み出した結果は注目されるけど、その過程や環境を辿ると大抵精神に何かしらの異常があり身辺処理や人間関係に欠陥を抱えてる。
世を変える・絶賛されるモノを生み出して一気に花開いたあと そのまま自ら抱える欠陥によって自滅の道を辿っていくのも変革者の共通点でもあるんだよね。

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2019年11月13日

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異能なる有名人たちが
「天才」として数多く取り上げられる
どの人物たちも
身近な(?)存在であるがゆえに
ふむふむ
なるほど
そういう分析をすると
そうなるわけだ
が 満載である

易しい言葉で綴られているので
最期まで興味深く読ませてもらった

第六章の「誰が才能を殺すのか?」
を 一番面白く思っ
同調圧力の異常に強すぎる
この日本の国だからこそ
筆者のこの主張は
もっと喧伝されると
いいな
と 思っている

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2019年06月12日

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なんでもかんでも発達障害と関連して
述べているような感じもしましたが。
発達障害をベースに独自性をもった人たちにやさしい
寛容性のある世間になってほしいと改めて、読んで思いました。また自分もそうでありたいと思います。

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2019年05月11日

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発達障害の特性が天才を生み出しやすいという構造、相関はあると思った。
あらゆる分野の天才のADHDエピソードがあり、その異質性がまさに天才性を物語っていた。
天才とは何か、という天才の定義において、相対的に異質である存在、トリックスターのような存在という意味で、同じような特性を持つ発達障害の方には物凄い可能性が秘められていると思った。

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2025年10月06日

Posted by ブクログ

勉強も兼ねて読んでみました。

ずば抜けた才能があるだけでなく、それを存分に発揮できてしまう特徴も持ち合わせているのかと考えました。

ただ、一回読んだだけでは、内容を飲み込めた感じが足りないので、また読んでみようと思います。

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2021年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

■感想:
この本の内容のほとんど(6章中5章分)が過去の偉人や天才と呼ばれる人物を挙げて「天才は、何らかの発達障害や精神疾患と結びついていることが多い」ということをつらつら書かれている。
Ex)野口英世やモーツァルトは浪費癖があった。これはADHDの特性の一つ(衝動性の症状)。

んー新しい発見はないかな?と思っていたら最終章にて、天才を殺す社会について述べられいた。イスラエルやアメリカでは国をあげて「才能の育成」(天才の保護育成)に力を入れているらしい。

一方、日本の教育システムや日本社会は平均を重んじる傾向にある。今後、国民の平均点の向上に重きを置いた教育システムの抜本的な変革、様々な子どもに対応できる個別指導態勢の確率が求められる。

最近色んな本を読むと日本の教育システムが問題、時代遅れなのは自明と結論付けられているのに、何故変わらないのだろう?というか誰が変えるの?という疑問が浮かぶ。


■メモ:
・真の天才とは優等生ではなく、不穏分子である。
→一般社会からは扱いにくい異物として目を背けられやすく、社会から意識的に排除されやすい。

・知能と創造性は別モノ。

・創造に必要な条件:
①独創性
-未知の関係性の解明、物事に対する新しい視点など
②有用性/汎用性
-社会に恩恵をもたらす 

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2021年01月10日

Posted by ブクログ

創造性、独創性が高い天才たちの多くには発達障害と思わられる性質があった。
ADHDや自閉症。鬱病や統合失調症らしき人もいた。
しかし世間では、特に日本では常人から逸脱した人は排除されがち。
この世界は才能ある人たちにとって生きずら過ぎるかも。

天才たちのエピソードが単純に面白いので楽しく読める。
個人的に島倉伊之助さんのエピソード好き。

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2020年05月15日

Posted by ブクログ

野口英世、南方熊楠、モーツアルト、マーク・トウェイン、ヴィトゲンシュタイン、山下清、大村益次郎、ダーウィン、アインシュタイン、ドイル、サティ、ヘミングウェイ、チャーチル、ルーズベルト、夏目漱石、芥川龍之介、サリンジャー、中原中也、エリック・クラプトン、フレディ・マーキュリー。。。

本書で、ADHD, ASD、うつ病、統合失調症として紹介された人々のエピソードが満載でした。人類の歴史や科学、芸術の発展に寄与したこれらの人々が、平均的性格傾向から、程度の差はあれ解離していたという事実に、大きな業績を生むにはある意味、その心的風景も並外れていることが求められているのか、という印象も持ちました。

セレンディピティというのは、拡散思考のADHDの人が感応しやすい、と書かれており、創造性と発達障害(ADHD)の相性の良さについても認識を改めました。

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2019年06月08日

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