あらすじ
外国人は何を見たいのか。日本人は何を見せたいのか。明治初期、欧米の案内書では、「古き良き」文明の象徴として箱根の夜道が激賞される一方、日本側のガイドには、近代的な工場や官庁が掲載される。外国人による見どころランキングの変遷や、日本人による観光客誘致をめぐる賛否両様の議論を紹介し、日本の魅力はいったいどこにあるのか、誰がどう発見し、アピールするのかを追う。めまぐるしく変転する観光の近現代史。
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Posted by ブクログ
〈要約〉
訪日外国人数は近年急激に増加しており、政府は高い目標を設定してるが外部要因による影響を大きく受けやすい。リスクヘッジの為にも、外国人が体験したいと考えていることと日本人が体験して欲しいことのギャップを念頭に歴史を学び分析し、きめ細やかなマーケティングを行うことが欠かせない。
〈感想〉
「観光」という観点から日本の近現代史を俯瞰した「歴史の教科書」です。
幕末から現代に至るまでの外国人から見た日本、興味がある日本と、それを受けて日本の観光に対しての意識がどのように変遷してきたのかが分かりやすく書かれています。
最終章では、更なる外国人観光客の増加を見込む日本に対しての、著者からの課題提案で締めくくられます。
これまで学校で学んできた歴史とは全く違う観点から語られる外国人と日本の関わり方の話はどれも興味深く、多種多様な文献や、詳細なデータを列挙した解説は信頼できるものでした。
並行して読んでいた「日本はどう報じられているか」において、国際関係における経済、安全保障のために、海外に向けた戦略的な情報発信を行う必要性が説かれていましたが、まさに観光もその一翼を担う事業と言えるのではないでしょうか。
観光とは単なる娯楽ではなく、国にとってすれば外貨獲得の重要な手段であり、その国をイメージ付ける戦略として考えるべきことなのでしょう。
バブル期に日本が外国(主にアメリカ)との経済摩擦を考慮して訪日外国人誘致に消極的になったタイミングと、バブル崩壊後に起きた日本のイメージ低下(日本異質論の残滓)は無関係とは思えないのです。
政府は外国人観光客の更なる増加を目標にしています。
幕末から「外国人が見たいもの」と「日本人が見せたいもの」には大きなギャップが連綿として続き、その理由として根本的な徹マーケティングの不足を挙げ、これが水モノである観光産業のリスクヘッジにつながることを説いています。
昔、地方へ税金をばら撒いた結果、日本各地にくだらない建造物が乱立し、当然のごとく無駄遣いに終わりました。当然地方としては県外からの来客数増のために行ったことでしょうが、何も考えず、見せたいものを作ろう考えよう、の結果です。
斜めに見たことを書きますが、よくある広告屋のように、「おれたちが流行を作る」という奢った考え方ではなく、今求められているものを丁寧に分析して現状を把握し、ニーズとトレンドに沿ったPRを油断することなく行って行くことが大事なのでしょう。
この本の主題とはズレますが、ミクロに考えると、これは人とのコミュニケーションにおいても同じことが言えるな、と読みながら思った次第です。
多くの面で新たな視点を与えてくれる良書でした。
Posted by ブクログ
外国人がみたい日本と、日本人が見せたい日本のギャップ。
観光政策は、明治期から始まっていた。
箱根、軽井沢、日光は、蚊がいないことが重要だった。
感染症下、観光が再構築できるか。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 妖精の住む「古き良き日本」時代
第2章 明治日本の外国人旅行環境
第3章 国際観光地、日光と箱根の発展
第4章 第一次世界大戦前後、訪日旅行者増減の大波
第5章 「見せたい」ものと「見たい」もの
第6章 昭和戦前、「観光立国」を目指した時代
第7章 昭和戦後の急成長
第8章 現代の観光立国事情
<内容>
「観光立国」を目指す日本は、近代になってからどのように推移してきたのかを豊富な資料によって分析した本。これを読むと、第一次世界大戦後にも「観光立国」を目指した時代があり、その時にも「見せたい」ものと「見たい」もの差があったという、現在とあまり変わらない日本の様子が示されている。最終章にある、山陰の自治体の勘違いをわれわれはずっとやってきている。こうした本で早く気が付く必要がある。