あらすじ
あなたが見ている世界は、ほんとうに「正しい」世界なの?
天才少女の薫と平凡な雪子――二人の友情の行方は
天才少女と呼ばれ、成長に従い無駄なことを切り捨てていく薫と、無駄なものにこそ人のあたたかみが宿ると考える雪子。
すれ違う友情と人生の行方を描く表題作。
男が先輩の結婚式で出会った美女は、人間関係を「レンタル」で成立させる業者だった――「レンタル世界」。
既存の価値観を心地よく揺さぶる二篇を収録。
解説・小出祐介(Base Ball bear)
あなたは自分が持っている価値観こそ正しいと思い込んではいませんか?
そしてその価値観を他の誰かに押し付けてしまったことはありませんか?
この本には2作品収録されていて、どちらも他者との価値観の違いから、感情が揺さぶられ変化していく人間模様を描いています。
1作目の『レンタル世界』では、人間関係をレンタルすることを良しとしない主人公が、正反対の考えを持った女性に惹かれ、自分の考えと正面から向き合うことを余儀なくされるうちに、何年もの間気づかなかった衝撃の事実にたどり着きます。
2作目の『ままならないから私とあなた』では、親友との価値観の違いに気づいていたけれど、向き合おうとしてこなかった主人公の人生が、そのせいで思わぬ方向に大きく動きます。
相反する自分の価値観と相手の価値観。違うからこそ、人は他者に惹かれ、愛することができるのではないか。だけど、自分の存在をも脅かすほどのあまりにも大きな違いを受け入れることはそう簡単ではない。一緒に過ごした時間の長さと相手への理解は必ずしも比例しないという事実に、哀しくも気づかせてくれる一冊です。
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Posted by ブクログ
表題作、友達同士の価値観の違いを描いた話だったけれど、渡邊くんと雪子の距離感は心にくるものがあった。
身体が近付く描写が好きだった。性描写のシーンは虚しくて美しかった。渡邊くんと身体が交わっていく、お互いがお互いを愛おしく思っている、でも雪子は頭の中では音楽と向き合っている、そのコントラストが綺麗だった。決して渡邊くんを粗末に扱っているわけではないと感じる。なぜか、渡邊くんに集中していないとは受け取れないあたたかさがあった。
薫との価値観の違いは節々に描かれていたけれど、渡邊くんとの長い関わりがあるからこそ浮かび上がる違和感を自覚するシーンが苦しかったし、その寂しさが尊かった。
Posted by ブクログ
『自分と他者の違い』がテーマの二篇が収録されている。登場人物それぞれの価値観が分かりやすく描かれていて面白かった。
メインキャラ二人のほとんど対極に近い考え方にはそれぞれ頷ける部分もあって、どちらも決して間違っていないのに絶妙にすれ違って分かり合えない感じが、現実にも通じるものがあって印象的だった。
Posted by ブクログ
「ままならないから私とあなた」
題名に惹かれて買ったけどそのまま積んでた本。まさかこんな内容だったとは…!帯に"価値観を揺さぶられる衝撃作"って書いてあったけどまさにそんな感じで衝撃を受けた。読んでる途中も読後もあまり気分が良くない。気持ちよくなれる小説だけが小説だけじゃないから当たり前だけど、ずっと薫と雪子が違う価値観を抱いているし、都度違和感も増えていっていつ仲違いしてしまうんだろうと不安になったしそもそも何故二人は友達で居続けられるのか不思議だった。自分自身友達や家族、恋人など価値観が全く一緒なことなんてないし、寧ろ自分との違いを面白がりながらも人間関係を築いているけど、ここまで違うと仲良くするのって難しくない?と思ってしまった。どちらかというと人間らしさや曖昧な部分こそ良いなと思っている方なので雪子の方寄りになってしまう自分がいる。薫が雪子のことを大事な友達と思っているのは痛いくらい伝わってくるけど、想っているからこそ夢を叶えてあげようとするその方法が歪んでいるなと思って気持ち悪かった。「そんなに言うなら電車とか使わずに歩いていきなよ!」みたいな激昂してるところの台詞も流石にそれは極端すぎるだろと呆れてしまった。だけどどちらが悪い、どちらが正しいということではなくて薫も、雪子も、そして誰しもが実際はどうしようまなくままならないところがある。薫はそれを埋めたりコントロールしようとするけどその姿自体がままならなさとして自分の目には映った。そして私はその人のままならさを愛おしいと思う。最新技術にはありがたくあやかりながらも、何ともならない自分や他人の情けなさやだらしなさまでも許しながら生きていたいと思った。
Posted by ブクログ
3.5
p80
あれは、面白かったというよりも、実はほんのちょっとだけ怖かったから、笑っていたんだと思う。
p238
性格とか価値観って、あとからでも変えられるじゃない。だから、まずはどうしたって変わらないところを許せるかどうかだなって思ったけどね。
p258
今までやってきた方法っていうのは、ただ今までそれでやってきたってだけなんだよ。別に、それが一番正しい方法なわけじゃない。
p264
意味とかがなくたって、単純に楽しい、楽しいだけ、それ以外何の意味もないみたいなことが、意味のあるすべてのものを一気に飛び越えていく瞬間ってあるんだよ。そういう瞬間こそが、どれだけ意味のあるものよりも気持ちを明るくしてくれたりするんだよ。