あらすじ
今度の恋は、低く静かな旋律
人生の秋を迎えた男と女が、生と死を見すえつつ、深く静かに心を通わせる。
閉塞した日常に訪れる転機を、繊細な筆致で描く短篇集
彼の抱えた悲しみが、今、私の皮膚に伝わり、体の奥深くに染み込んできた――。
人生の秋を迎えた中年の男と女が、生と死を見すえつつ、深く静かに心を通わせる。
閉塞した日常に訪れる転機を、繊細な筆致で描く短編集。
表題作のほか、「観覧車」「ソリスト」「灯油の尽きるとき」「戦争の鴨たち」を収録
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Posted by ブクログ
短編5話
観覧車
ソリスト
灯油の尽きるとき
戦争の鴨たち
秋の花火
いかんとも、篠田節子らしい、斜に構えた話が多い。
幸せな終わりではなく、悲惨な終わりでもない。
思わぬ落とし穴に嵌まるが、恐怖のどん底ではない。
人間らしさと皮肉屋さんらしさといえばいいかもしれない。
「戦争の鴨たち」はある意味笑える。
戦場の近くで、戦場を模擬する商売があろうとは。
Posted by ブクログ
「観覧車」「ソリスト」「灯油の尽きるとき」「戦争の鴨たち」「秋の花火」の5編からなる短編集。
どの物語も短編ながら奥の深い、密度の濃いものになっている。設定も、主人公たちの抱える問題もそれぞれ別物でありながら、行き詰まり、鬱屈しているという点で共通している。
「観覧車」は最後に感じる小さな希望にホッとし、「灯油の・・・」はつらい結末に気分が塞ぐ。
「戦争の・・・」はどこかコミカルでありながら、痛烈に現実をえぐるところが篠田さん的で、タイトルの「鴨」にニヤリ。
そして、秀逸なのが標題作「秋の花火」。秋の花火は夜空に大きく開いて消える夏の花火とちがい、手元で闇を一層際立たせながらそっと横顔を照らす。そんな花火に、ひそかに心を通わせる男女の姿を映す物語は静かで、だからこそドキドキするようなエロスがある。
篠田作品、堪能しました。