【感想・ネタバレ】大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済のレビュー

あらすじ

海外の研究者が「世界初の先物取引市場」と評価する江戸時代、大坂堂島の米市場。米を証券化した「米切手」が、現在の証券市場と同じように、「米切手」の先物取引という、まったくヴァーチャルな売り買いとして、まさに生き馬の目を抜くかのごとき大坂商人たちの手で行われていた。このしばしば暴走を繰り返すマーケットに江戸幕府はいかに対処したのか? 大坂堂島を舞台にした江戸時代の「資本主義」の実体を始めて本格的に活写

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Posted by ブクログ

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堂島米市場が先物市場誕生の場というのは知っていたけれど、その誕生の理由がわかった。いわゆる商品先物のニーズからかと思ったけど、意外と違った。物事は、これ作ろう、と意図的に作り出されるんじゃなくて、不便を便利にするところから生まれてくるんだなとつくづく。
それ以外にも驚いたのが、米価が市場経済の肝となっていた江戸時代、米切手をめぐって、システミックリスクを起こさないよう規制が張られたこと、そして、米価を安定させるためにまさに日銀の金融政策の発送で江戸幕府がさまざまな政策を苦慮させていたこと。ちょっと乱暴だなと思ったけど、、原理としては似てるのかなと、面白かった。

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2023年04月25日

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世界最初の先物取引市場と呼ばれる(※諸説あり)堂島米市場はどのように運営されていたのか。そして、米市場で展開されていた市場経済に、当時の為政者である江戸幕府はどのように向き合っていたのか、について書かれた本。

現存する資料の数は豊富では無いらしいが、かき集められた資料からは、当時の市場や人々の様子をありありと感じることができてとても面白かった。

経済学という学問体系の確立など遥か先の話である江戸時代において、市場運営側の商人・市場管理側の幕府、両サイドがそれぞれに試行錯誤を重ね、絶妙なバランスを保ちながら市場の維持に成功していたことに感嘆する。

あとがきにもあるように、国民の生活が「宜しくなり候ため」に市場に介入していた江戸幕府の立場から学ぶべきことは多分にあるように思う。現代においても、各種サービスは、全ては我々の生活が「宜しくなり候ため」にあるべきはずだ。どうすれば宜しくなるのか、宜しい生活とは何なのかを考え続け、適切な市場原理を追求することが重要だと感じた。

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2021年11月24日

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米相場の指数先物取引といえる先進的な取引が行われていた江戸時代の米市場について、これを容認したり敵対視したりしつつも政策目的のために活用しようとした江戸幕府・大阪奉行所の動きや相場情報の迅速な伝達を目指した地方商人の視点なども織り交ぜつつ平易に解説している。あとがきによれば、著者は本書を経済史へのいざないとしても書いたようだが、その目的はある程度達成されたのではないかと思うほど面白い。

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2019年10月24日

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本書は金融先物取引が江戸時代に行われていた様子を刻々と示すだけではなく、当時の政策やその効果、幕府の金融市場への関わり方を解説している。現代では複雑になりすぎている先物取引の仕組みを江戸時代の金融(米相場と米切手)に照らし理解するという読み方で読み進めていたが、私は通信分野を生業にしているものであるから、金融と通信は切っても切れないものだなと痛感した。
基本的には幕府は市場の自由を尊重しつつも一定の規制を入れ、幕府の考える良き暮らしを実現しようとしてきたことと、早く情報を押さえたものが勝つという特性のもと、飛脚、早飛脚、手旗信号と通信が加速していった様子は読んでいてエキサイティングであった。
こういう取引からいかに現金につなぐかは現代のフィンテックにおけるひとつの課題であるが、江戸時代からこの課題は変わっておらず、アナログな決済方法ではあっただろうが大きく考え方は変わっていないのではないか、というのが一読した所感である。

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2018年12月17日

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