【感想・ネタバレ】黄砂の進撃のレビュー

あらすじ

不死身の義和団と列強の激闘! 驚愕の真相が今、明かされる。清朝末期、辮髪と纏足で自由を縛られ、満州族に虐げられていた漢人は、宣教師にも生活を蹂躙され不満は頂点に達していた。彼らは扶清滅洋の旗印のもと蜂起し、駐在武官・柴五郎らの立て籠もる北京公使館区域に攻め入る。中国近代化の萌芽となった「義和団の乱」の内幕を描く、『黄砂の籠城』と対をなす面白さ抜群の歴史小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『黄砂の進撃』から読みはじめましたが、前作『黄砂の籠城 上・下』を読んでいなくてもとても楽しめました。
これを機会に前作も読んでみようと思います。

歴史小説はどちらかというと苦手なジャンルでしたので、読み進むのに苦労するかと思いきや、意外にも物語にのめり込んで読むことができました。

多くの民衆を統括するのに宗教的な思想がいかに重要か理解し、悪いと思って行使する立場の人と、その圧倒的な力を信じて立ち向かう純粋な民衆がとてもかわいそうで涙腺が緩みました。

戦いで大勢の人々が簡単に殺されていく怖さに、途中読む手がゆっくりにもなりましたが、平穏な日常を取り戻すために戦う、力なき人々の思いと国を統治する人の思想両方を比べると、最終的な終着点は同じはずなのに、なんで上手く行かないんだ! と歯がゆくて仕方ありませんでした。

不死身の義和団に私は本書で初めて触れることになりましたが、中国の歴史は大雑把にしか知らなかったので、勉強にもなりました。

なんでもないよっぱらいで元船漕ぎの張がまっすぐな人民を先導して戦いに多くの人々を放り込んでしまった責任を感じながらも、うまく先導しないとただの犬死になってしまう人民の命の使い方を考えて葛藤しながらも結局は戦いに巻き込まれていってしまう歴史の一面をみて、やはり多くの人々が集まると小さい力でも強大なものに変わってしまうと強く感じました。

元船漕ぎのよっぱらいの張が義和団の代表的な先導者になる成り上がり物語も痛快で読むのが楽しいし、中国という国の近代史として読んでも大変興味を惹かれる内容でした。

女性の代表的存在になったシヤナも張と同じ生命をもてあそぶような指導をしていいのかという良心の呵責に心が動き、最後にとった行動には好感が持てました。

また親子ほど歳の離れた張とシヤナの恋物語が読みたかったなとも思いました。

とても深くて面白い話で、読み終わった瞬間に大きく深呼吸が必要でした。また違う面から読んでみたいと思います。何度読んでも楽しめる物語です。

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2018年04月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「黄砂の籠城」で敵対していた清国・義和団の視点で描かれた物語。

元舟漕ぎの張徳成は、取り立て屋に襲われていた若い娘、莎娜を助けるが、追い払った取り立て屋が官兵たちを連れて来て取り囲まれてしまう。そこで李来中と名乗る男の機転により難を逃れた。そして、その中年男との出会いがきっかけで、義和団という組織が誕生する。

張徳成は義和団の天下第一壇大師となり、莎娜は十代の少女揃いの部隊である紅灯照の黄蓮聖母として、共に義和団を導く立場にあったが、清国軍の陰謀や義和団の暴走により追い詰められていく。

元々、日清戦争敗戦後キリスト教が清国内に広がり、宣教師だけでなく漢人クリスチャンまでが横暴に振る舞い始めた。それにより苦しめられていた農民たちの悲痛な叫びが「扶清滅洋」の旗印のもと、平和を取り戻すため拡大していったが、清朝の企てによって利用され、各国公使館VS義和団という構図に書き換えられてしまう。

各国を出し抜こうとした清朝であったが結局失敗し、義和団が次々と倒されていく中、権力者たちは保身のため変装して逃走。
絶望的な状況の中で、仲間の死に心を痛める張徳成は、莎娜に全てを託して進撃する。





個人的には黄砂の籠城に負けないぐらい面白かった。籠城の裏側で、張たちが義和団や清国の未来について考え奮闘する姿は、柴中佐や櫻井たちと同じように誇り高く、そして彼も優れた見識を持っているが、状況を好転させるほどの力は無く、理不尽な結末が決まっているだけに少し切ない。

また、漢人クリスチャン救出や、クルップ巨大砲の建設など、黄砂の籠城での場面を思い出しながら読める点も良かった。

そして、本作の主人公である張徳成は実在し、紅灯照の黄蓮聖母である莎娜も林黒児という実在した人物がモデルになっているようなので驚いた。

漢字の地名や、読み方が特殊な名前は流して読んだが、内容は考えさせられる事が多く、心に響く作品だった。

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2021年01月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「黄砂の籠城」を中国側の視点から書かれているのがこの「進撃」。光緒帝が近代化をすすめようとしていたのに西太合は紫禁城に守られてどれだけ無知だったのだろうか。宣教師の横暴にどうにかせねばと農民が立ち上がったのが義和団。紅灯照の妖術も史実であり黄蓮聖母も実在したらしい。自己を見失いがちなとき、人智を超えた奇跡の存在を信じれば心の拠りどころができると導いてきた張徳成。りっぱだった。「籠城」ででてきた柴さんが莎娜と会話するくだりが今の日中関係はどうにかならないのかという作者の意図を感じた。

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2018年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黄砂の籠城を中国側から描いた本だ。
布教を名目にしながらやりたい放題の洋人。教会を建てると言って農民の土地を奪い、拒否すれば裁判にして洋人に有利な判決を下させる。圧倒的な武力を背景にやりたい放題の欧米諸国だった。
主人公 張徳成は義和拳の群衆を肉弾戦へ突入させることは反対であったが、彼らが帰るとこもなく、なにもしなくても死が待ち構えている運命には、同情と何とかせねばならないという思いは持っていた。義和団は一匹の龍だ。突撃により失われる同胞は、個々の細胞に過ぎず、いくら剥がれ落ちようと、母体の龍の生命は存続する。したがって、哀しみや哀れみなど無い。
最後に来る運命は、分かりきったことであるものの、そこへ突き進むしか道がないこともある。義和団の乱の根本原因はキリスト教を持ち込み、勝手な振る舞いをした西欧諸国だが、中国が国として、一致団結して戦っていたら、仮に負けるにしても、正義という名のもとに戦っていたら、歴史としては、中国は果たして共産主義を歩んだのだろうか。

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2019年10月31日

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