あらすじ
西暦2192年、ブエノス・ゾンデ市では独裁者エゴン・ラウドルップ執政官の恐怖政治が横行。事態を重く見た他の六都市は大同盟軍を結成した。アクイロニア軍AAA、ニュー・キャメロット軍ケネス・ギルフォード、プリンス・ハラルド軍ユーリー・クルガンら名立たる名将が、若き天才ギュンター・ノルトの牙城に迫る!地軸が90度転倒した世界で七都市の興亡を描く珠玉のSF戦記、第3巻!
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Posted by ブクログ
ポルタ・ニグレ終幕とペルー海峡攻防戦。
エゴン・ラウドルップの夢の終わりの3巻。
ペルー海峡攻防戦での連合軍の内輪もめ。結局のところ、無私に徹する、自己犠牲の極みなんてことはできないもので。大義名分は、欲望を隠すための風呂敷でしかないのだなぁ、としみじみ。この戦いでAAA、ギルフォード、クルガンたちの偽悪ぶりが、作者の風味が存分に出ていると思います。
それでも、口に出すことのできる彼らはまだマシなほうで。一番かわいそうなのは、彼らの対比とされた部隊司令官だったりするよなぁ。きっと、その中にもAAAたちと同じように感じている人間も多くいただろうに。立場や実績、そして個人の性格によって任務に忠実であることを選ぶしかなかったんだろうなぁ、と無駄に感情移入してしまう。
勇気で戦車が動かないことぐらい、誰だって知ってるさ。でも、言うしかないだろう。こんな状況じゃあさあ。
っていうのを飲み込んでいる、飲み込まざるを得ない悲哀。
そして、悲しみを飲み込み抱え続けたギュンター・ノルト。悲願が達成され、楽園へと旅立つはずだった彼の目の前に現れた景色は、無自覚な奴隷の脅迫による栄光。
後味の悪さが残るペルー海峡線。
というか、七都市物語だけでないけど、田中芳樹は勝者の栄光という絢爛豪華なタペストリーを、必ず裏から見るよなぁ。七都市物語は、より顕著な気がするなぁ。