【感想・ネタバレ】群衆心理のレビュー

あらすじ

民主主義が進展し、「群衆」が歴史をうごかす時代となった19世紀末、フランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンは、心理学の視点に立って群衆の心理を解明しようと試みた。フランス革命やナポレオンの出現などの史実に基づいて「群衆心理」の特徴とその功罪を鋭く分析し、付和雷同など未熟な精神に伴う群集の非合理的な行動に警告を発した。今日の社会心理学の研究発展への道を開いた古典的名著である。

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Posted by ブクログ

言い回しや実例が古いのできちんと読みこなすにはそれなりの時間がかかる。
だが、それだけの価値のある本。
例えば民衆が面倒だが全体の利益になる正しさよりも、間違っていてもわかりやすい権威に従うという現象。これは現在でも為政者が利用しているテクニックなので肌感覚でわかる。ただ何故そういった現象が起こるのか、どうやって対処すべきかといったことについては流石に前世紀の研究結果なので物足りない。

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2024年09月09日

Posted by ブクログ

難解な書 「群衆とは何か」の問いに答える書。

自分なりにくみ取った主旨とは次の3つです

①群衆とは個人の集合体ではない 個性、理性は消え失せて、本能的な人間、野蛮人と化す。
②群衆を支配するのは、群衆の想像力を刺戟する能力をもつ指導者のみである。感情に訴えるものであって、決して理性に訴えるものではない。
③群衆の根底には、民族の伝統があり、それを変えることは、時間がかかる。
ゆえに、指導者は最良の現在の策よりも、1つ前の旧来の策を取らざるを得ない。

気になったのは次の言葉です。

■群衆の時代
・国家の運命が決定されるのは、国王の意見ではなく、群衆の意向による
・最も不当な税目でも、少目立たず一見して負担にならないように見えるのであれば、群衆には最上のものと思われることがある。

■群衆の精神
・人間の集団は、構成する個々人の性質とは異なる新たな性質を具える。意識的個性が消え失せて、あらゆる個人の感情や観念が同一の方向に向けられる。
・知能の点では相違する人々でも、同様の本能や情欲、感情をもっている。性格や信念の点からすれば、人間の相違は、全然存在しないか、あっても極めてわずかである。
・集団的精神のなかに、入りこめば、人間の知能、個性は消え失せる。
・群衆は、智慧ではなく、凡庸さ積み重ねる。
・群衆の中の個人は、、自分の意志がなくなった一個の自動人形となる。
・孤立していたときには、教養のあった人でも、群衆に加わると、本能的な人間、野蛮人と化す。
・群衆は、思考力を持たないと同様、持続的な意思も持っていない。

・群衆は暗示にかかりやすい。一度暗示が与えられると、感染によって脳にきざみこまれ、感情の転換を起こす。
・個人が群衆に加わるやいなや、等しく観察の能力を失ってしまう。
・群衆は暗示がかけられると、英雄的精神、献身的精神をも発揮できる
・責任のない、罰をまぬかれる立場に置かれると、しばしば犯罪行為を行うことがある。それは本能のままに従う自由が与えられるから。
・群衆の思想 1:影響を受けて発生する偶発的一時的な思想 2:環境、遺伝、世論のもとになる根本的な思想
・為政者は、根本的な思想の中に誤謬があるとわかっていても、その思想の勢力が強力のために、その原則に従って政治を行わざるをえない
・民衆の想像力を動かすのは、事実そのものではなく、その事実の現れ方である。その創造力を刺戟する術を心得るものが、群衆を支配できる術を得る。
・事実を観測し得ても、群衆の心理を洞察できなければ、その事件の真の原因までにさかのぼることができなかった。

■群衆の意見と信念
・信念を決定する原因は
 間接原因:ある信念は取り上げることを可能とするが、他の信念には浸透されることのないように仕向けるもの
 直接原因:長期にわたる作用の上に積み重ねられて、思想を具体化してどんな結果を伴うとしてもその思想を実行せずにはいられないもの
・民族とは、過去によって創造された一種の有機体である
・民族は、祖先伝来蓄積されてきたものに手を加えなければ変改することはできない。過去の制度を少しづつ改めながら、それを保存するものでなければならない。
・1つの政治制度を作り上げるのに、数世紀を有し、それを改めるにも、数世紀を有する。
・教育は、人間を改良し、かつ、人間を平等化するにも確実に効果がある
・群衆を動かすには、感情に訴えるものであって、決して理性に訴えるものではない。
・指導者は重要な役割を演ずる。指導者が中軸となって意見をとりまとめ、統一する。群衆は統率者なしにはなりたたない。
・指導者は実行家であって思想家ではない。また、あまり明晰な頭脳を持っているわけではなく、また合わせ備えることは難しい
・大衆は、強固な意志を具えた人間の言葉には傾聴する
・信仰を創造すること、これが偉大な指導者の役割である

・指導者の行動手段 断言、反復、感染
・最も強力な暗示は実例である
・断言:証拠や論証を伴わない、簡潔なものであればあるほど、威力を持つ
・反復:断言をできるだけ同じ言葉で繰り返すこと
・感染:反復によって全体の意見が一致したときは、意見の趨勢が形成され、外部に伝播されていく。感染は庶民層に作用したのち、上層部へと波及する。
・威厳:感染によって伝播された意見が大きな勢力を有するのは、感嘆とか、畏怖といった感情を含まれる威厳を生み出す
    人格的威厳は、人為的、後天的な威厳とは性質を異にする。肩書や、権威といったものとは無関係の力である
    威厳を保つにはつねに成功することである、1度の失敗で威厳は消え去る、このために英雄も、同じ群衆によって辱めらえる
・信念:信念の確立には非常な困難を伴うが、いったん確立されてしまえば、打破しがたいものとなる

■群衆の分類
・群衆の犯罪は、強力な暗示から起きる。犯罪に加わった人間は、義務の命ずるところに従っただけであると強く信じている。
・選挙上の群衆:候補者が具えるべき第1の資格は、威厳である。
・候補者の公約は、あまりにも明確であってはならない。反対派がそれを盾に攻撃してくる。
・群衆は、他から強制された意見をもつだけで、自ら考え抜いた意見をもたない
・制度や政体は国民の生活上、極めて微弱な役割しか演じない。
・群衆は指導者の威厳に支配されるのであって、その行動には利害の観念や感謝の念をもつことはない
・十分に威厳を具えた指導者は絶対的な力をもっている。
・人民の無関心と無力とが募るにつれて、政府の役割は増大する。政府が一切を計画し、指導し、保護しなければならない。

■結論
・1つの夢を追求しながら、野蛮状態から、文明状態へと進み、夢が効力を失うやいなや、衰えて死滅する。これが民族がたどる周期的な過程なのである。

目次

著者の序文
序論 群衆の時代
第1編 群衆の精神
 第1章 群衆の一般的特徴
 第2章 群衆の感情と特性
 第3章 群衆の思想と推理と想像力
 第4章 群衆のあらゆる確信がおびる宗教的形式
第2編 群衆の意見と信念
 第1章 群衆の信念と意見の間接原因
 第2章 群衆の意見の直接原因
 第3章 群衆の指導者とその説得手段
 第4章 群衆の信念と意見が変化する限界
第3編 様々な群衆の分類とその解説
 第1章 群衆の分類
 第2章 いわゆる犯罪的群衆
 第3章 重罪裁判所の陪審員
 第4章 選挙上の群衆
 第5章 議会の集会
訳者のあとがき
解説
索引

ISBN:9784061590922
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:302ページ
定価:1020円(本体)
発行年月日:2012年06月22日第16刷

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2023年03月26日

Posted by ブクログ

人々に同じ意見をもって、それに合意して動いてもらわないと組織は力を発揮できない

インパクトがあり、わかりやすいメッセージでないと多くの人は受け入れないし、耳を貸さない

ややこしくわかりにくいことは、聞き手でなく話し手の問題とされがちで、結果として「聞き手が聞きたいこと(幻想)」を話す人が、組織で力をもつようになる

パーパスやビジョンを言葉にすることの力強さもある反面、メンバーもわかったような気になり、立ち止まって考えることをしなくなる怖さがある

思考の体力と忍耐力を鍛えるにはどうしたらいいのか、が気になってきました

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2022年12月17日

Posted by ブクログ

具体的にフランス革命時の例をとって、群衆(ここでは目的意識や地位などがバラバラな人たちがひと所に集まった状態)になった時にどのように行動するのか、そしてそれはどのような意識に基づいて行われるのかを説明する。
なるほどなあ、確かになぁ、今でもそうだなぁ、と思う。烏合の衆となった時、我々は平易に動かされてしまう恐れがあることを肝に銘じて、今の社会をおそるおそる生きていく必要があるのではないかと思う。

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2022年03月10日

Posted by ブクログ

NHKの番組で紹介されていたので読んでみた。
群衆心理、そこには知識や正答などに基づくものではなく、断言や反復で人の心にするりと入り込んだ言葉で作用する。結局、人間一人一人は弱く、影響を受けやすく、そして集団になると個人の弱さは置き去りになって強くなる錯覚を起こすのかな。
ネットで正論を吐いて、いいねをもらって、個人では実際はとても犯せないような暴言で人を傷つけるような、そんな心理にならないように、現代にも通じる警鐘だと思った。

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2021年11月03日

Posted by ブクログ

哲学書にある難解な言い回しが少なく、現代にも通じる内容なので、頭に入ってきやすかったのもあるが、かなり読みやすく感じた。

改めて人間の本質は時を経てもあまり変化していないということなのだろう。

難解な議論や理屈はほぼ効果がなく、断言、反復などによる感情と心象を想起させ、揺さぶりをかけることによる感染が群衆を従わせる有効な手段となる。

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2021年10月19日

Posted by ブクログ

100分de名著の今月の本。読んでみたら、いろんな意味で面白かった!ヒトラーがこの本を読んでいたことも納得。現代の私が読むといやいや、偏見が過ぎると思う描写も多いけれど、それも含めてこの本が書かれた時代感。自分も群衆であることを自覚したい。それを知っているだけでも、同じ過ちを繰り返さずに済むかもしれない。

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2021年09月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

近くの書店の店頭で平積みにされていて、何気に購入したものですが、最近読んだなかでは白眉の内容です。

集団における人間の性質や指導者の関わりなど、類書では「自由からの逃走」「大衆の反逆」「自発的隷従論」などがあると思いますが、冷徹な洞察という点で、この「群集心理」も勝るとも劣らないと思います。断片的ですが、曰く、

・群衆は力を尊重して、善良さには心を動かされない。
・群衆は、弱い権力には常に反抗しようとしているが、強い権力の前では卑屈に屈服する。
・動物の群にせよ、人間の群にせよ、ある数の生物が集合させらるやいなや、それらは、本能的に、首領、すなわち指導者の権力に服従する。
・群衆の精神を常に支配しているのは、自由への要求ではなくて、服従への要求である。
・群衆の精神に、思想や信念-例えば、近代の社会理論のような-を沁みこませる場合、指導者たちの用いる方法は、種々様々である。指導者たちは、主として、次の三つの手段にたよる。すなわち、断言と反覆と感染である。(中略)断言と反覆に対抗できるほどの強力なものは、これまた断言と反覆あるのみである。
・新聞雑誌は、単なる報道機関に化して、どんな思想もどんな主義も強制しなくなり、ただ世論のあらゆる変化に追随する。
・およそ指導者が、世論に先んずることはまれであって、多くの場合、世論の誤謬をそのまま受けいれるだけにとどまるのだ。
・指導者が、往々、才智や学識を具えていることもある。しかし、これは、たいていの場合、指導者にとって有利であるよりも、むしろ有害となる。

欧州の事象、とくにフランス革命を軸に考察されているようで、日本にそのまま当てはまるかは多少割り引いて考える必要がありますが、それでも、久々に開眼させられた一冊です。

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2021年07月11日

Posted by ブクログ

ギュスターヴ・ル・ボン(1841~1931年)は、フランスの社会心理学者・人類学者・医師。パリ大学で医学を学び、博士号を取得したが、臨床医としての道を選ばず、心理学・社会学・歴史・物理学など幅広い分野に関心を持ち、独自の研究を展開した。1870~71年の普仏戦争に軍医として従軍した経験や、フランス第三共和政下での1871年のパリ・コミューンの暴動を目撃したことが、群衆に対する関心を深めるきっかけとなり、世界各地を旅して人類学的研究を行いつつ、1895年に『群衆心理』を発表した。晩年には物理学にも関心を示し、エネルギーと物質の関係についての先見的な考察を残した。
本書は、個人が群衆の中で理性を失い、感情や暗示に支配される様子を描き、政治運動や革命のメカニズムを心理学的に分析した、ル・ボンの代表作で、社会心理学の古典とされる。
内容は大きく3篇に分かれており、それぞれの要点を記すと以下である。
第1篇:群集の精神
・「群集」とは心理的に統一された状態にある人々の集団を指し、個人の理性や責任感が失われ、感情と衝動に支配される。暗示や模倣により非合理的な行動をとる。
・群集は感情的で極端な反応を示し、印象や象徴に動かされる。残虐性と自己犠牲が混在し、道徳判断は不安定で教育の影響を受けにくい。
・群集は論理的思考が苦手で、印象や連想に基づいて判断する。幻想的な想像力に富み、事実よりも感情が優先される傾向がある。
・群集の信念は宗教的性質を帯び、絶対視される。理性ではなく感情と暗示で形成され、異なる意見を排除し、指導者を盲信する。
第2篇:群集の意見と信念
・群集の意見形成には、種族性・伝統・時・政治社会制度・教育訓練などの文化的・歴史的要因が深く関与し、無意識のうちに信念を形づくる。
・群集は心象・言葉・標語・幻想・経験・道理などによって直接的に意見を形成し、感情的な印象が理性よりも強く作用する。
・群集は指導者の断言・反復・感染によって容易に説得される。威厳ある人物が単純なメッセージを繰り返すことで信念が形成される。
・群集の信念は固定されやすく、変化には時間と強い刺激が必要。意見は流動的だが、深く根付いた信念は容易には揺るがない。
第3篇:種々な群衆の分類とその解説
・群衆は、異質の群集(名目のない群衆・名目を具えた群集)と同質の群集(党派・仲間・階級)に分類される。
・犯罪的群衆は衝動的で暴力的だが、しばしば模倣や暗示に動かされる。個人の責任感が希薄で、集団心理が犯罪を助長する。
・陪審員は群衆心理に影響されやすく、証拠よりも印象に左右される。教育や地位に関係なく、集団内で非合理的判断を下すことがある。
・選挙上の群衆は理性よりも感情や印象で投票行動を決定する。候補者の人格や言葉が強く影響し、論理的な政策判断は二の次となる。
・議会も群衆心理に支配される場であり、討論よりも党派性や感情が優先される。個人の理性は集団の圧力により後退する傾向がある。
本書の内容は、20世紀の政治指導者に強い影響を与えたとされ、ヒトラーやムッソリーニなどのファシズムの指導者だけではなく、民主主義的指導者であるフランクリン・ルーズベルトやド・ゴールも参考にしたといわれる。
そして、さらに21世紀に入り四半世紀が経った現在の世界を見ると、「群集」のこの性格・傾向を利用したポピュリズムの勢いが世界中で増しており、私は大変憂慮している。
だが一方で、一通り目を通してみれば感じることだが、本書では、群集を非合理で危険な存在として描きすぎ、群集には協力・創造・連帯といったポジティブな面もあることが抜けている。そのことは、現代の多くの研究者が指摘していることだという。
そう考えると、我々は様々な観点で作られる群衆(会社・学校・地域社会等)の一員であるわけで、如何にして、ネガティブな面を最小化し、ポジティブな面を最大化するか、それぞれが主体的に考えることが大切なのだろう。その出発点として、己を知るために一読すべき一冊と思う。
(2025年11月了)

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

原書が刊行されたのが1921年であるにも関わらず、2025年の現在でも通じる内容が多く驚いた。
群衆の性質や指導者の性質について事細かに分析しており、特に指導者の人心掌握の手法には共感する所も多くあり興味深い内容であった。
最初から最後まで気になるトピックで構成されており、本書が気になる方は目次だけでも是非目を通して欲しい。

本書では、"あらゆる集団は精神的に低下している為、制限選挙は是認することができない"と述べられているが、集団内で意見が完璧に一致する可能性は低いとしても、多数派が賢い選択を行える場合は民主主義国家において有益ではないだろうか。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

SNSの炎上
ポピュリズム
トランプ派の分断
ガザの虐殺

今眼にするたくさんの大衆の暴走。

その仕組みはフランス革命の時代から変わっていないらしい。

群衆の一人として、本当に気をつけなければならないと感じた。
情報の受信発信に関するリテラシーを高める努力を怠らないでいたい。

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2024年11月21日

Posted by ブクログ

マーケティングでよく言うのは「単純明快繰り返し」ですが、宣伝や販促の売り文句は誰でもわかる簡単な短い言葉でまとめ、いたるところで繰り返すのが肝要ということ。繰り返して言っていると、聞いている人は嘘でも段々と信じ始めるから、と…。

「指導者たちは主として次の三つの手段に頼る。すなわち、断言と反復と感染である」

嘘はいけないが、群衆を操作する指導者のテクニックである。

まずリーダーに大事なのは群衆の前での演説ですね。才智や学識は指導者にとって有害で、論理的な思考になってしまう人は歴史的なリーダーにはなりにくいとある。天下取った学者なんていませんからね。一般的に頭が良いと言われる論理的な人はリーダー向きではない。リーダーになる逸材は短くわかりやすい言葉で断言して繰り返せる人、そして何より必要なのは「威厳」なのだ。その人が話し始めると群衆は黙って聴き入ってしまうオーラみたいなもの。これは天性のものかもしれないが本物の威厳さえあれば天下が取れる。世界的宗教の創始者も天下を取った政治家も軍人もこれがあった。

「群集心理」。100年以上も前に書かれ、もはや学説としては古いものらしいが、ヒトラーをはじめ多くの政治的、宗教的、時代のリーダーがこれを読んで勉強したという社会心理学の先駆的名著。

しかし現実の群衆は無自覚に意見を変える。

「群衆にあっては、同感はただちに崇拝となり、反感は生まれるやいなや憎悪に変わる」

群衆は簡単に殉難者にもなり死刑執行人にもなる。そのうえ「群衆は思考力を持たないのと同様に持続的な意志をも持ち得ない」つまり、長続きしない。

怖いですねえ。持ち上げられて最後は殺される、裏切られる人多いですね。そして歴史はその人を英雄のように記録に残す。しかしそれも真実ではない。ストーリーが勝手に作られ、物語として語り継がれる。キリストもナポレオンもヒトラーも皆、最後はねえ。

極めつけは群衆が夢を持って革命的に社会を作り上げても意思が長続きしないので、一つの夢が効力を失うと衰えて死滅する、というのが民族の生活の周期的プロセスなのだそうです。人間の性なのでしょうか。切ないですね。







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2024年01月12日

Posted by ブクログ

集団心理の状況を丁寧に考察してあり、時代背景は違っても、現代にも通じる精神心理がうまく描かれています。
指導者の行動手段は、「断言と反覆」そして感染が暗示を与える最上の手段とか書かれていたのは、とても納得できました。
「内容てはなく、言い切る力!」そして「繰り返し言い続ける力!」が暗示を与えるみたいです。。 
良いか悪いかは別として、確かに当たっていると思います(笑)
ぜひぜひ読んでみて下さい。

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2023年06月10日

Posted by ブクログ

フランス革命により起きた大転換を中心に社会を動かす中心は何かを考察した古典的名著。
書かれたのは1895年と古いものではあるが、その内容は恐ろしくも現代にも当てはまる。

群衆とは、ただ人が集まったものでなく、ある指向された思想の元に集まり、個人個人の考えや思想とは別に群相ともいうべき思考様式が発現し、社会を変える程のうねりとなる事である。

その、不思議な特徴は群衆を構成するメンバーの知性や批判的精神は関係なく、人数すら関係ない。
2人以上の複数人がいれば群衆を形成しうる。

仮に個人個人は頭脳明晰で、合理的判断のもとに批判的思考に富んでいたとしても、群衆の一員となるとその理性は抑制され、無批判で感情に支配された時に自己犠牲的に、時に暴力的な集団の一員となる。

自分がある集団の一員でないとき、第三者視点から見ると、その集団の主張が支離滅裂で異常な人物の集まりに過ぎないと思ってしまうが、本論を鑑みると、誰でもなりうるというのが恐ろしい。
(確かに陰謀論やカルトには時たま非常な秀才が参加しているときもある。)

この群集心理を理解すると、残念ながら現代においても重要な歴史的事件に群衆心理が生じている事が見受けられ、悲しくも本理論が正しかった部分があることを証明している。

それにしても、この群集心理をよく研究し、応用すればカルト教団を作れるほどだと感じたので、恐ろしい学問だと思う。

その餌食にならないためにも、こういう知識を知ることは重要であろう。

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2023年01月22日

Posted by ブクログ

読みながら最近の事件を思い起こすことがめちゃくちゃ多かった。自らも群衆になり得るということに自覚的でありたいと思った。SNSの発達でより群衆化しやすい社会になっているとも思う。群衆を動かす方法も書いてあるのでマーケティングやらマネジメントやらにもちゃんと使えそう。

断言と反覆と感染

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論議の的にされる威厳は、もはや威厳とはいえない。久しいあいだ威厳を保つことができた神々や人々は、決して論議をゆるさなかった。群衆から称賛されるには、常に群衆をそばに近づけてはならない。

264
諸民族が束縛に甘んずれば、悪い結果を生ぜずにはいない。諸民族は、あらゆる束縛に堪えることに慣れて、やがて自ら束縛を求め、自発性や気力をことごとく失うにいたる。それは、もはや空虚な影法師、意志も抵抗力も力強さもない、受動的な自動人形にすぎなくなる。

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2022年12月25日

Posted by ブクログ

群衆心理

19世末にフランスの心理学者ギュスターヴ・ル・ボン氏が、心理学者の視点で群衆の心理を考察した著書です。
群衆の中で生じる心理、群衆を操る方法などが論じられ、ヒトラーの愛読書でもあったという逸話もある名著です。

【本書で学べること・考えること】
- 心理学的な群衆の定義
- 群衆心理の特
 1. 衝動的で動揺しやすく昂奮しやすい
 2. 暗示を受けやすく、物事を軽々しく信ずる
 3. 感情が誇張的で、単純であること
 4. 偏狭さと横暴さと保守的傾向(単純かつ極端な感情)
 5. 徳性(自己放棄、献身、無私無欲、自己犠牲、公正への要求
- 群衆の説得方法
 1. 断言(推理や論証をまぬかれた無条件的断言、簡潔)
 2. 反復(繰り返さないと定着しない)
 3. 感染(閾値を超えると一気に広がる)
 4. その他
 - 誇張し断言し反復する
 - 推理によって何かを説明しようと試みないこと
 - 特殊な場合を直ちに一般化する
 - 幻想を与える術を心得ている → 支配者
 - 幻想を打破 → 群衆のいけにえ
 - 感情に訴える、理性に訴えない

読んでみての感想です。

19世紀末に書かれた本ですが、自分の身近にも近しい事例が多くあり、人間は変わっていないんだというのが感想です。
実例としては、政治家やユーチューバーなどで大きな支持を集める人は、群衆をうまくコントロールする術を知っているなと感じます。
最近流行のTikTokなどで流行ったものが、若者に絶大な支持を得るのもわかります。
単純で短いフレーズで断言、反復、感染・・・
影響力のあるツールですね。

この本を読む価値としては、群衆心理を知ることで、自分が常に一歩引いて俯瞰する大事さを知ることにあると思います。
また、理論的反論は無意味なことも学びになります。

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2022年05月28日

Posted by ブクログ

群衆の性質について史実の考察は、現代にも当てはまることから、人の本質的な性質なのだろうと思う。
著者の知識には本書で紹介されない膨大な事例があり、それらも踏まえた考察であろうと思うが、挙げられた例だけで納得してよいのかは疑問だった。

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2022年01月20日

Posted by ブクログ

哲学書?の割には固くなくて読みやすかった。また、世界史の知識があったので筆者の挙げる例がわかりやすかった。結局、群衆は理論ではなく感情に左右され、そこには種族の特徴が大きく影響し、群衆を引っ張るには威厳が必要であるということが繰り返し述べられていたのでそれが結論なのだろうと思う。

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2021年10月13日

購入済み

今こそ読むべき名著

訳本も半世紀以上たっているので、現代では違和感があるところもあるが、群衆とそれを構成する個人のギャップを見事に分析しているところは名著の価値がある。民主主義が揺らいでいる現代に再度注目すべきい一冊であろう。

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2021年10月06日

Posted by ブクログ

雑に言うと基本的には群衆をボロクソに言っている本だが、なぜ群衆がそのようになるのかを分析しているし、逆に群衆を動かすには?という点にも言及。

現代だとマスコミやSNS、インターネットがあるので、物理的に集まらずとも群衆になり得て、様々な影響出てるよなあというのを照らしながら読んでいた。
理論ではなく心象(イマージュ)によってのみ群衆は動き、それは当時演劇が大きな影響を与えるものとされていたらしいが、今だと人々が劇場に行かずとも影響を与えられるので恐ろしい。
また、「百の小事件より一の大事件が群衆を動かす」とあり、今までも起こっていただろうにマスコミに取り上げられて世間が動く、みたいなのも多々ある印象。

(政治家の責務に)「概念に手を加えずその言葉を変更すること」とあり、確かに名前だけ変わってその実デグレしてるとかもよくあるし、新しくなって新発売的なやつなのではないか

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2020年11月14日

Posted by ブクログ


100分de名著 
講談社学術文庫
ルボン 「群衆心理」 群衆心理を研究した本。読むのは 二度目だが、読むたびに凄さと怖さを感じる


群衆の中に入った個人は、集団の中の暗示や感染を通して、感情や観念が同一化していき、一つの有機体としての群衆が出来上がるという論調


群衆の中に入った各個人の感情でなく、群衆に下記の特徴的な感情が現れる
*動揺しやすく、昂奮しやすい
*暗示を受けやすく、信じやすい
*誇張的で単純
*偏狭、横暴、保守的傾向


群衆の指導者の説得手段「断言、反復、感染」は 政治外交、企業活動など様々なシーンで用いられているように思う


群衆を「衰弱した肉体や死骸の分解を早めるバイ菌」と読んだり、群衆中の個人を「一箇の自動人形」としたり、かなり厳しめ


「判断力、経験、創意、気概などが、人生における成功の条件であって、教科書のなかで それらを学ぶのではない」




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2017年11月07日

Posted by ブクログ

19世紀のフランスの学者さんが書いた本。フランス革命から100年近くが経ち、君主制と共和制を行ったり来たりしながら変動の大きな時期が過ぎ、そのとき国や人になにが起こっていたのかを心理学や社会学の目線から分析する。古さを感じるところはあるけれど、当時を生きた人の考えを知れるところはよかった。

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2025年09月16日

Posted by ブクログ

いちいち至極ごもっとも。100年前の著作。今となっては当たり前のことではあるが、何一つ変わっていないのを可視化される。
読んだからどう、ということは無いが、一つの真実の明示。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

個人もしくは個人の活動による産物(=例えば組織)は、エントロピー増大分のいくらかを外付けに移転しようと試みるが、そのプロセスはゼロロスではなく、認知できないほどの小さな歪みが常に生じる。歪みが個体の制御下を大きく離れると、内部から崩壊をおこしリスタートというサイクル。

三人寄れば文殊の知恵というが、数百人集まったときに社会が求めるのは知恵ではなく推進力なんだろうなと思いました。

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2024年02月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人が集まりの賛同によって犯罪を犯した場合その犯罪は法律を凌駕する
この文は、まとを得ている。昨今のSns時代においても叩かれている人叩くことを正義としているところと少し似ている所があるのかな
これ以外にも群衆についての人の集まりの中心にある指導者について書かれていて興味ぶかかった

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2023年10月30日

Posted by ブクログ

100年という時代の違いを多少感じるが、野蛮で無自覚な群衆が社会の骨格を壊して行く、というところは、身に染みる。
2019年からの数年間のことが、そのまんま書かれている。
あの騒ぎがあったから、この本がとてもよく理解できる。
そうでなかったら、何をいっているのか、私にはちっともわからなかったかもしれない。

しかし、ラテン民族と中国が嫌いな作者だな、と感じる。
偏見も入っている気がする。
確かに学校の、教科書と先生を盲信することを強制する教育は、愚かな群衆を作る基盤になっている、とは思う。

また、ネットやテレビが普及していない時代の話なので、近年政府が行った言論統制についての見解は完全に甘い。
群衆を煽る方法が随分変化し、現代では規模も大きく洗脳も深くなってしまったのではないか、と私は思った。

自由の拘束は文明の老朽・衰退の証拠であるということはなるほどと思った。
その通りだろう。
しかし、大陸とは違い、島国である日本の民族性は少し特殊なのかもしれない、とも思う。

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2023年05月22日

Posted by ブクログ

「蟻は、ある一定数を超える集団になったとき、働かなくなる蟻が現れる」という話を思い出した。私はそれを、集団で争い事なく生きるための無意識的な心理、もしかすると本能的な反応とさえ解釈してきた。しかし社会心理学というものは、集団というものをそんな単純な理解で終わらせずに、集団がいかに本能的で感情的で偏狭な、暗示を受けやすく、論理が苦手でイメージで考えようとし、常套句のような単純化された標語に対して従順etcと、読みとっているらしい。そしてメディアや政治は、その心理を利用し扇動しているなんて。漏れなく自分がそんな群衆のいちピースになっているなんて。自分を小市民と自覚しなくはないが、やっぱり自分の頭でよく考えなくてはならないと、改めて思わせる学びの多い本であった。

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2021年11月25日

Posted by ブクログ

古典的名著。
穐山貞登氏の解説が現代視点でなるほどと思った。しかし100年も前の考察ながら人類としては大して進歩していないようで、考察はともかく内容は以前と変わらずと言ったところか?

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2021年10月12日

Posted by ブクログ

難しいなと思って読んでいたら100年以上も前の本だった。通りで…。
フランスの歴史(特にフランス革命あたり)を知っていた方がわかりやすいかも。

内容はなんとなくわかって面白いところもあった。
トンチンカンな意見でも威厳のある指導者が豪語すれば、群衆は信じてしまうのかと考えると恐ろしいが過去がそれを物語っている。
自分も群衆の1人になると知能が低下し、付和雷同してしまうのだろう。そうならないようにしなくては。

組織のリーダーになる人にはおすすめかもしれない

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2020年12月04日

Posted by ブクログ

ギュスターブ・ル・ボンはフランスの医師・社会学者・心理学者。普仏戦争(1970)への従軍経験もある19世紀後半の人である。
本書は、王権⇛貴族民主政に続く大衆の台頭の時代に、大衆が全体としてどう振る舞うかに踏み込んだ著書。

群集心理という言葉は現在では一般的に使われる言葉になっており、本書が後の人間科学に与えた影響は大きい。
ただ、20世紀後半以降の人間科学、特に実験的な社会心理学・進化心理学・行動経済学では、群として個としての人間の振る舞いにもっと精緻に踏み込むものも多い。
(ミルグラム実験、道徳の共通基盤、ヒューリスティックとバイアスなどなど)
これらの具体的な知見に触れた後だと、本書の説明は平易だが理念的で冗長に見える部分もある。
(なんにせよ100年前の著作なのだ)
だが、群衆の意見の直接要因として「幻想」を挙げ「文明の基礎には幻想が必要。大衆は真実よりも幻想を好む。」という、目が覚めるような指摘もある。これはユヴァル・ノア・ハラリのサピエンス全史でも登場する切り口。

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2020年06月19日

Posted by ブクログ

1895年にパリで発行された、心理学の古典である。社会心理学という分野がまだ確立していない時代のモノであるが故に、社会や集団という定義がどのようなものであるかは不明である。群集とあるが、実際のところ著者が想定しているのは、デモ集会などで一箇所に同時に集まっているような群衆ではなく、むしろ国家における民衆というべき大きなものである。心理学の黎明期に書かれた本だけに、学説の変遷に関心がなければ本書はあまり有用ではないだろう。

著者によれば、群衆は個人よりも知能や理性におとるということである。まるで、退化するかのように、集団になった途端に動物のようになってしまうということである。人間が生物であるが故に、そうした資質がもともと埋め込まれており、集団となったときにそれが表出するということなのであろうか。付和雷同などの行動は、社会心理学で同調として取り扱われており、その根本は小魚の群れなどに観察されるやはり生物の集団的な同調同調行動である。

正直、マーケティングやリーダシップのヒントになればとの思いから手に取ったが、そういう視点において得られるものは無かった。

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2018年10月09日

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