あらすじ
戦国から江戸へ時代が移り変わる慶長年間、京都に「水運の父」と呼ばれた男がいた。豪商・角倉了以は金融業や海外貿易で得た莫大な資金を投じ、京の都をさらなる繁栄に導くため、大堰川や高瀬川を開削する大プロジェクトに挑み、江戸幕府の命により、さらに大規模な富士川や天竜川にも手を広げる。偉大な了以を支えながらも、自らは書や文芸に親しむ生活に魅力を感じる息子・与一。角倉親子の挑戦の年月を描く、長編歴史時代小説。
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Posted by ブクログ
角倉了以。
名前は見たことがあるのです。確か秀吉の頃?何をした人?そもそもカドクラだと思い込んでいたし。
正しくはスミノクラ、江戸初期(近い!)の京都で茶屋四郎次郎、後藤庄三郎らと並んで「京の三長者」と呼ばれた人物でした。元々角倉家の商売は土倉(質屋・金貸し)ですが、了以はツルハシと綱を持った木像が残されてる様に河川改修~水運業が有名で、この物語も彼が行った山城の大堰川、駿河の富士川、そして京都の高瀬川の開削の話です。
同じように川の改修を扱った歴史小説に帚木蓬生の『水神』が有りますが、それと比べるとどうしても小粒な感じがします。困窮する農民を救うため私財を投げ打ち、文字通り命を掛けて用水路を作った『水神』の五庄屋に対し、了以の河川改修は京都の民衆の為と言いつつ、しっかり店の利益や死後の名声を計算した上での事業ですから。
面白いのは了以の息子・与一の存在です。上司の無茶振りでオタオタする中間管理職的人物が主人公というのが岩井さんのお得意ですが、川の改修に店の限界を超えて巨額投資を行う破天荒な父を横目に、必死で店の存続を図る学者肌の与一がひょっとしたらこの作品の主人公なのかもしれません。
ややまどろっこしい所は有りますが、ちょっと異色で面白い歴史小説でした。
Posted by ブクログ
水運業を開いた角倉了以父子。
事業を広げ過ぎてしまう商人肌の父。息子は学者肌で造本の道楽。娘は不治の病でふさぎがち。
父子の確執は破綻的なものではない。
趣味の世界を手放して、一生かけてやり遂げる仕事に邁進しはじめた息子の決断の下り、こころに響くものがあった。
序盤が退屈なので読み投げしようと思ったが、読み終えてよかった。