あらすじ
ひとりでは何もできないロボットとともに、コミュニケーションについて考えてみた――。人とロボットの持ちつ持たれつの関係とは? 自分ではゴミを拾えない〈ゴミ箱ロボット〉。人の目を気にしながらたどたどしく話す〈トーキング・アリー〉、一緒に手をつないで歩くだけの〈マコのて〉……。 〈弱いロボット〉の研究で知られる著者が、自己、他者、関係について、行きつ戻りつしながら思索した軌跡。
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Posted by ブクログ
むちゃくちゃ面白かった。「弱い」ロボットとはどういうことか。市場のわがままに答えて「役に立つ優秀な人の代わりになる」ロボットを作ろうとすると、ロボットはどんどん効果になり、正確性を求めて融通が利かなくなり、人との関係性は固定化されたものになり、人とロボットとのコミュニケーションは薄れる。人はもっと完璧なものを、と傲慢になる。人と関係を結ぼうともじもじすることは内に向かっているようで外とつながりを求めていること。それを見て人はつい手を差し伸べたくなる。それが「人らしい」コミュニケーションの一面ではないか。人との意思疎通に悩む人、人の「気持ち」を理解するのが苦手だと思っている人におすすめ。
状況の中に組み込まれた行為
・ロボットにお掃除してもらうのはうれしいけど、ほんの少し手助けになれているという感覚も捨てがたい。
・「とりあえず動いてみよう」→周囲のものや制約を生かしつつ、一つの物事を成し遂げる。
偶然の出会いを、一つの価値に変えている。
・行為は、状況の中に組み込まれている。
・わたしたちは目の前にある対象の振る舞いを引き起こした原因を探るとき、
その対象の内側で起こっていることに帰属させやすい。
・自分の立場から考えるとき、今度はその要因を、自分の外に求めている。
・自分の内側からは、その身体の一部や、自分の顔は見えない。
しかし、とりあえず動きだすことで、初めて自分の姿がそこに立ち現れる。
・クルマを動かすには、その景観の流れを動かし、クルマを止めるには、その流れを止める。
・クルマを運転するコツは、自分の力だけでクルマを操りたいというこだわりを捨てて、自分の行為をいったんは周囲に委ね、
結果として、その周囲からナビゲートしてもらうこと。
そこでのポイントは、周囲と一緒に「一つのシステム」を作りながら、クルマを操るというスタンスを取れるかどうかである。
・言葉を繰り出そうとするときというのは、自らクルマを操ろうとする場面によく似ている。
それを繰り出す瞬間において、その発話の意味や価値は、必ずしも完結したものではない。
そこで伝えたいことも漠然としている。
それでも、なにげなく言葉を繰り出す中で、その言葉の意味や役割がおぼろげに見えてくる。
漠然としたイメージを、とりあえず言葉にしては、自分で表現したかったこととの差異や、
相手の関心の具合を参照しながら、そこで足りないところを補足していく。
「言い直し」を繰り返すことで、次第に伝えたいことが精緻化されていく。
なにげない発話を繰り返すということが「思考の道具」となっている。
・なんでもできるロボット→まかせきり→どんどん高値に。融通利かなくなる→ディスコミュニケーション
・弱いロボット→共同作業→コミュニケーション
・文章を書くこととは、その文脈の中に、とりあえず言葉を流し込んでいくということ。
地面になにげなく一歩を踏み出すように、文の断片を一つ一つ文脈の中に流し込んでみる。
個々の表現で全てを伝えようとするのではなく、むしろ文脈の力を借りながら伝える。