あらすじ
非人や芸能民、商工民など多くの職能民が神人(じにん)、寄人(よりうど)等の称号を与えられ、天皇や神仏の直属民として特権を保証された中世。彼らの多くは関所料を免除されて遍歴し、生業を営んだ。各地を遊行し活動した遊女、白拍子の生命力あふれる実態も明らかにし、南北朝の動乱を境に非人や遊女がなぜ賤視されるに至ったかを解明する。網野史学「職人論」の代表作。
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Posted by ブクログ
私にとって目から鱗の書籍でした。
近年海外からの圧力もありジェンダーレス、多様性、男女差別等の議論が不可避のものとなっていますが
本書では、地道に地道に真摯に積み上げてきた研究者達の灯が霧を晴らすがごとく中世日本のの景色を浮かび上がらせてくれます。時折ルイス・フロイスのなんだこれは?!という叫びのような報告書も交えながら、世界的にも珍しい女性が広く識字する稀有な文化が社会変動によって変遷していく日本の姿を旅します。
特に心に残ったのは以下の部分
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未開の柔らかな特質を強く持つ社会が、それ自体の内発的な発展のなかで、畿内の政治権力を中心として、すでに高度の文明のなかで鍛え上げられてきた中国大陸の、家父長制に基づく硬質の律令制度を受容した点である。
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この文は奈良時代の律令制度を指していますが、キリスト教伝来しかり、未文化なものが、後発の型を押し付けた途端にチカラを失っていく様を其処此処に見るにつけ、果たして元々あったものは劣っていたのか疑問に感じる事は少なくありません。
型なきやわらかきもの。しかし生命力を帯びたものを大切にしながら型と組み合わせる二輪駆動。そういう在り方を目指したい、と思うのです。