あらすじ
館で待つのは、絶望か、祈りか。天才数学者が仕掛ける究極の罠!訪れた者を次々と死に誘う狂気の館、教会堂。失踪した部下を追い、警察庁キャリアの司は館に足を踏み入れる。そこで待ち受けていたのは、水死・焼死・窒息死などを引き起こす数多の死の罠!司の足跡をたどり、妹の百合子もまた館に向かう。死のゲームと、天才数学者が求める極限の問いに、唯一解はあるのか!?
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Posted by ブクログ
堂シリーズ第5弾。
まさかそんなことになってしまうとは...。
前回からの登場人物である脇や小角田を始め、常連キャラの毒島や船生、さらには宮司警視正までもが死亡してしまうという展開にとてもしんどい気持ちになってしまいました。そしてここで宮司百合子が実は善知鳥水仙であり善知鳥神の妹で、かつこのシリーズの”原点”である藤衛の娘であるという衝撃の事実が明かされるという濃い内容となっていてとても面白かったです。
今回は数学と言うよりも経済学の考え方である、ゲーム理論・ナッシュ均衡・パレート効率が出てきて、大学で専門に近いものが出てきて、比較的読みやすいなと感じました。それをここまで残酷な殺人ゲームの設定に引き上げる周木律先生の感性はすさまじいなと思いました。ここから後2編でどんな風に物語が帰結するのかとても楽しみです。
この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
十和田只人:津田健次郎
善知鳥神:種田梨沙
宮司司:細谷佳正
宮司百合子/善知鳥水仙:長谷川育美
毒島喬:畠中祐
船生ゆり:田中敦子
脇宇兵:興津和幸
小角田雄一郎:緒方賢一
Posted by ブクログ
建物自体が人を殺す仕組み…恐ろしい。ゲーム理論やナッシュ均衡はなんとなく覚えていたけど、まさかミステリで出会うとは。
これからの物語もかなり気になる。前作に並ぶくらい本作でも驚きの展開だったので、次回作もすぐ読みたい。
Posted by ブクログ
今回はミステリというよりデスゲーム要素が強い。
でも全員同じ道辿って死んでいく様子が書かれているだけなのであまり面白みは少ない。
前回に引き続き、十和田が闇落ちしたままだし、船生や司をデスゲームに案内して結局全員死んでしまうし、もう……どうなっちゃってるんだ。
何より主要人物でずっと出続けていた司があっけなく罠に嵌められて死んでしまったのがショックすぎる。
最後の手紙を百合子が読んだシーンは泣いた。
最後のスクランブルエッグ…
でも川に流された時計がこんな短期間で百合子のもとに届けられるとか、ほんとに運良く百合子と神だけデスゲームから生還するとか、現実的でないところもあった。
なんかやりきれないストーリーだけど、気にはなるので全シリーズ読んじゃいそう。
Posted by ブクログ
シリーズの前作までと比べて、ミステリー感が薄れ、デスゲームのような趣のストーリーでした。
単発で読んでしまうと、ウ~ンという感じがあります。血の通ってたキャラクターがミキサーに放り込まれてしまったというか。
もうちょっと協力戦というか、どうにもできない悲しいやりとりが登場人物間で対面であったりすると、本作単品でもっと震えるんでしょうけど、それがあるとドキドキしてページ捲れなくなったかも。
シリーズ終盤に向けては前作に続き大きな転換となってるので、最後まで一気に読もう、読み切ってしまいましょう。
Posted by ブクログ
○ 総合評価
今作は,これまでの4作とは,かなりテイストが変わった作品になっている。本格ミステリ要素は無く,いわゆる「デスゲーム」をテーマにした小説になっている。
ゲーム理論を扱っており,舞台となる教会堂は,訪れた人を閉じ込め,次に訪れる人を殺すか,自分を殺すかの二者択一を迫る。教会堂が持つ「回転」は輪廻。次から次へと訪れた人が死んでいく。
教会堂を訪れた小角田という数学者,脇という記者(この2名は,前作,伽藍堂の殺人にも登場),船生警部補,毒島,宮司司は,教会堂の輪廻にはまり,二者択一で自分の死を選択して死亡する。
善知鳥神と宮司百合子は死を免れる。教会堂があるY山は活火山。そのY山には間欠泉があり,午後2時から数分の間は,二人とも助かることができる時間がある。宮司百合子は,宮司司が残した時計のアラームを手掛かりとして生還する。
後付けの設定のようにも思われるが,教会堂の殺人でいくつかの設定がはっきりする。十和田只人は,かつて藤衛に師事しており,藤衛に捨てられたと思ったことから,世界の放浪を始めていた。十和田は只人は,藤衛から「すべてを与えよう」と言われ,忠誠を誓う。
宮司司が死亡する。あとがきによると,この展開は不可欠だったとのことだが,少なくとも教会堂の殺人だけを読む限りでは不可欠だとは思えず。シリーズものの1作として必要な展開だとすれば,教会堂の殺人だけでは評価できないが,シリーズもので主要な登場人物を安易に殺すのは禁じ手のようなもの。簡単にサプライズとインパクトを出すことができるが,安易に使うとやすっぽくなってしまう。
これまでの4作は,文章が稚拙でキャラクターが立っていないという欠点はあるものの,ダイナミックなトリックが仕掛けられた本格ミステリではあった。しかし,教会堂の殺人は,本格ミステリではなく,デスゲーム小説。それも知的ゲームですらない。単に主要人物が死んでいるという点でサプライズを出しているだけの作品となってしまっている。
シリーズの1作として見れば,主要キャラである宮司司の死亡と,藤衛と十和田只人の関係をはっきりさせるという意味がある作品。善知鳥神と宮司百合子の関係も改善される。シリーズの1作として大きく意味がある1作。起承転結でいうと「転」の後の作品として物語を大きく進めている。
しかし,単独の作品として読むと,知的なやり取りもなく,トリックもない。ゲーム理論についてのうんちくはあるが,浅い。それほど楽しめない。シリーズの1作としての価値を含めてギリギリ★3で。
○ サプライズ ★★★☆☆
シリーズの主要キャラクターである宮司司が死ぬ。その展開にはサプライズがある。しかし,この作品単体で見るとトリックもなければ,犯人もなし。サプライズとしては★3程度に落ち着くか。
○ 熱中度 ★★☆☆☆
これほど淡々と進むデスゲーム小説も珍しい。サスペンス感は浅く,熱中度はそれほどでもない。
○ インパクト ★★★★☆
シリーズの主要キャラクターである宮司司が死ぬという点はサプライズはそこまでではないが,インパクトはある。シリーズの中で,この作品だけ本格ミステリですらないという点も,いい意味でも,悪い意味でもインパクトはある。
○ キャラクター ★★☆☆☆
新たな登場人物はなし。個々のキャラクターと,キャラクターとキャラクターの関係を掘り下げている。しかし,浅い。シリーズの主要キャラクターである宮司司が死んでも,あまり衝撃はない。藤衛もどんな人物か見えてこないし,十和田只人のキャラクターはぶれており,魅力を失っている。善知鳥神と宮司百合子は主人公的な位置になっているが,これもキャラクターがややぶれている。
○ 読後感 ★★★☆☆
シリーズの主要な登場人物である宮司司が死んでいるにもかかわらず,あまり悲しくない。シリーズの途中の作品なので仕方ない部分があるが,終わった感じがなくちゅうぶらりん。読後感は良くも悪くもない。