あらすじ
深刻な民族問題やシベリアの資源開発など、現在のロシアが抱える問題の多くは、帝政ロシア時代にすでに始まっていた。ロマノフ王朝の300年を中心に、ソ連邦の74年間をも加えた、広大無辺を誇る多民族帝国の通史。大改革を強行したピョートル大帝、女帝エカテリーナ2世と寵臣ポチョムキン、革命の中で銃殺されたニコライ2世一家。「よきツァーリ」たらんと奮闘を続けたロマノフ家の群像と、暗殺・謀略に満ちた権力のドラマ。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
ロシア。イメージが沸かない。
世界史を勉強しなかった40歳代のおっさんだと、ロシアのイメージというと、社会主義、ゴルバチョフ、チェルノブイリ、シャラポワ、ピロシキ。あ、あとマトリョーシカ。ようは散発的なもの以外に包括的なものがない。敢えて言えば、何か暗い、みたいな。
しかし、この本を読んで、おかげでロシアのイメージが少し形づくられたと思う。
講談社学術文庫はどれも値段が張るが、この興亡の世界史シリーズは本当に高い!文庫なのに1,360円!新刊本の値段と同じじゃないですか!若干買うのをためらったが、結果としては非常に面白い本だった。
印象的だった部分を挙げると、皇帝の専制、多数の農奴、オスマンとの領土争い、ヨーロッパの辺境。
皇帝という権力者とその取り巻きによって政治と金が牛耳られる構図はどこも同じなのかもしれないが、各皇帝の話は面白く読めた。特にエカテリーナ二世については事前にHuluで”エカテリーナ”を見ておりそこで見聞きした内容とオーバーラップして勉強できました。ちなみにドラマは愛人との描写が生々しく、子供と見ると大分お互い照れます笑
また農奴の解放と近代化の描写(6章)のあたりは地方の農奴の都市流入、労働力の供給、放蕩、賭事、飲酒、などまさに暗ーいロシア文学の舞台設定(というかこれが事実か)そのものでした。改めてトルストイとかドストエフスキーを読み返したくなりました。
また、社会主義への変革を鮮やかに描いた”王朝なき帝国”(9章)は激しかった。ニコライ二世一家の惨殺やレーニンの半端ない殺戮。妥協とか余地とかを許さない社会主義者の専制は読んでいて悲しくなりました。
そんな中でつらつら読んでいて感じたのは、ロシアと日本との共通性です。皇帝と天皇、ラスプーチンと東郷、農奴解放の貧民層と日本現代社会のニート、急進的社会主義者とネット右翼。単純なインスピレーションですが、日本の現象を理解するのにロシアの歴史の出来事を援用したりできそうな気がしました。
最後に纏めますと、この本は非常に面白く読めました。特に世界史初学者にはおすすめします。
本の主旨はロシア通史の描写であり、これを読んで筆者の意見を受け取るとかそういう話ではありません。しかしながら、ロシアってこんな感じの国で成り立ちなんだと理解する上では非常にいい本だと思います。願わくばもう少し価格が安いと嬉しいけど笑
Posted by ブクログ
中性のロシア農民は移転の権利を持つ自由身分であったが、中小封地を持つ士族が搾取すると農民たちはより魅力的な大地主の貴族の封地に逃亡した。多数の士族の要求により逃亡農民の捜索期限が撤廃され、農奴制が確立した。
後世ロシア農民は人口増加に対して、新しい豊かな土地に移り住み旧来の粗放農業を続けることで対応した。ロシアに農業革命が生まれなかった所以である。
ピョートル大帝は変革の方向に乗り、最も強硬な案で上からの改革を断行した。教会勢力すら自らのその傘下に納めた。ツァーリ専制という独裁システムは以後のロシア史で度々登場しまた求められていく。