あらすじ
新選組副長にして幕末一のモテ男・土方歳三。賊軍とされて京を追われ、江戸から末期の地となる蝦夷(えぞ)へ敗走しつつも、歳三は常に信じる道を突き進んだ。命を削る戦いの中で女を泣かせ、だが多くの女を惹きつけた志士の生き様を、鳥羽・伏見の戦いから慶応5年5月のその日まで、情感豊かに描く傑作長編時代小説。
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Posted by ブクログ
物語は鳥羽伏見の戦いあたりからはじまります。
いきなり局長近藤勇が銃撃されるシーンです。
多摩時代や、新選組が京で活躍する場面はあえて描かれず、
衰退していくところから始まります。
だからか、自分の中の映像的イメージは全体的に薄灰色。
ここの土方さんは男度・クール度高めです。
冷静、自分の信じた道に真っ直ぐに生きる、という感じ。
優しさが滲み出る、照れる、といった土方スタンダードはもちろんあり
お美乃さんという女性が登場します。
あらすじのイメージよりはそんなに登場場面は多くないです。
初めはお美乃さんに嫉妬心でいっぱいヽ(;´Д`)ノ の私ですら、後半の雪のシーンはじんときました。
二人が素直じゃないのが余計に切なくて・・・
戦の場面もたくさんあります。
そこはさすが土方さん、いちいちかっこいいんです
――歳三は全身に返り血を浴びていた。皆斬って捨てた。斬り、走り、おめいてはまた斬るすさまじさに、怯えて逃げようとする自分の従者をも大喝して斬った――
なんて場面もあり。ぞく・・・・・。
医師の松本良順がいい味だしていて、歳三とのやりとりが好きです。
張りつめた場面が多いだけに、良順の前では気が休まるような歳三の気持ちが会話から伝わってきます。
それから京時代からの隊士、蟻通勘吾とのシーンもいいです。
池田屋のときから、敵を前にすると怖くて怯えていた勘吾。
新選組に入ったのが間違いだったな、と言う歳三に、
逃げたいと思ったのが間違いだった、逃げては歩いてきた自分の道を消すことになる、そんなことはしたくない・・・と蝦夷まで共に戦い続ける。
――最後に箱館で会った勘吾の顔からひ弱さが消えていたことに気づいた歳三。
「よかったな」
思わず言った歳三。脈絡のない言葉だったが勘吾には通じたようだ。
「よかったです。有難うございました」――
ラストシーンもかっこよかった。
潔くて男・土方の人生が表れているようで好きです。
そしてそして、最期のセリフ。
「新選組副長、土方歳三」
他のどんな肩書きでもなく、彼はずっとずっと“新選組副長 土方歳三”として戦ってきたのです。
ありがとう。
(私のツボも押さえてくれてありがとう・・・)