【感想・ネタバレ】星籠の海(上)のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年08月05日

【あらすじ】
瀬戸内の小島に、死体が次々と流れ着く。奇怪な相談を受けた御手洗潔は石岡和己とともに現地へ赴き、事件の鍵は古から栄えた港町・鞆(とも)にあることを見抜く。その鞆では、運命の糸に操られるように、一見無関係の複数の事件が同時進行で発生していた――。伝説の名探偵が複雑に絡み合った難事件に挑む!...続きを読む 二〇一六年六月四日公開、玉木宏主演映画『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』原作

【感想】

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年04月15日

瀬戸内海に浮かぶ興居島に次々と死体が漂着していると相談を受けた御手洗は、現地に赴き、三方向から潮が出入りするという瀬戸内海の特殊性が鍵になっていると突き止める。
広島県福山市では、看護学科の学生でベビーシッターをしていた辰見洋子が過失によって乳児を殺してしまったため、隠蔽計画を立て、交際関係にあった...続きを読む小坂井に自分の指示に従うよう懇願する。
時を同じくして、福山市立大学助教授の滝沢加奈子は、阿部正弘が黒船用の新兵器を持っていたことを示す資料が発見されたと知る。その資料には「星籠」という文字が記されていたが、知り合いの学芸員や教授ら専門家と議論しても、その意味は皆目見当がつかないのであった。帰り道、滝沢は神に結婚を約束されたと主張するストーカーに襲われる。
事件を調査していた御手洗は、変死体の漂着には、宗教団体である日東第一教会が絡んでいると推理する。そして、一見無関係の乳児失踪、ストーカーとそのカルト団体が結びつき、証拠が揃った時、警察、内閣情報調査室を巻き込んだ包囲網計画を進めることを決断する。カルト団体の代表は、国際手配中のネルソン・パクであったため、抜かりなく取り掛かったが、海へ逃げられてしまう。諦めかけた時、海中から、数百年の時を超えて潜水艦「星籠」が御手洗たちの前に現れた。「星籠」は、爆発によりパクを乗せた船を停止させることに成功したのであった。

相談を受けた事件の規模が予想以上に大きいと理解し、同時進行で発生していた不可解な謎まで持ち前の鋭い洞察力で解決する様は、惚れ惚れするという一言に尽きる。何手も先を読み、頭のキレない者を小馬鹿にするが、自分が受けた事件は解決するまで決して逃さないという熱意は、誰にも負けないものがあるといえよう(例えばパクの逮捕に向けて警察を煽るシーン)。そんな御手洗が、パクを海へ取り逃がし、一か八か星籠の登場に賭けるというのは、地球上を逃げ回っているというパクのしぶとさが凄まじいことを示していると思われるが、クライマックスに数百年と時を超えて、(本でいうと上下合わせて1100ページをめくって、)星籠の出番をもたらすテクニックは待ちに待った読者に最高の興奮をもたらすであろう。
本書は、単純に御手洗の周りで発生した事件を解くというものではなく、同時多発的に発生していた事件が、御手洗によって原因がひとつのカルト団体にあると導かれるという構成になっている。したがって、特に序盤は章が変わる毎に登場人物が変わるため、長々と読み切るには少々根気がいるかもしれない。しかし、瀬戸内海という場で多様な登場人物の複雑な背景知識を理解してこそ、クライマックスの高揚感が得られるようになっていると解すべきであろう。本格ミステリというわけではないが、数々の謎を常人を遥かに凌駕した能力で御手洗が推理する様子に酔いしれたい読者へオススメの書である。

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