あらすじ
日本の"新域"で発令された、自死の権利を認める「自殺法」。その静かな熱波は世界中に伝播した。新法に追随する都市が次々に出現し、自殺者が急増。揺れる米国で、各国首脳が生と死について語り合うG7が開催される!人類の命運を握る会議に忍び寄る"最悪の女"曲世の影。彼女の前に正崎が立ちはだかるとき、世界の終わりを告げる銃声が響く。超才が描く予測不可能な未来。
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アムリタの頃とはもはや作家としてのステージが違いすぎる。
題目によって熟考し(本書においては、自殺、死、政治、法律、権利、人の在り方等大きく纏めると善悪について)、著者なりのイデオロギー、または問い。物語性を持たしたうえでそれらを我々に顕示している。私たちは考えなければならない。
小さなコペルニクス的転回があった。
私は自殺について、最初は物語にでてくる世間一般の答えしか持ちあわせていなかった。
ただ今は違う。それをここで遺すほどのことでもない気がするので割愛するが、著者の出した答えにも納得している。続くことが善、終わることが悪。
そう定義してみると、あらゆることがしっくりとはまる感覚がある。思考にもエネルギーがあるのだから、子孫を残したとして終わりではなく、無為に思考を巡らせるだけでそのエネルギーは量子となり、茫洋たる宇宙を永遠に彷徨うのならばそれも小さな善なのだろう。
長生きをしようと私は思った。
あらゆることを考えさせられた本書は小説というジャンルだけに留まっていない良書であった。
感謝している。
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『The thinker』
私も考えることはとても大好きだ。そして、とても重要不可欠なこと認識している。人が人である為に人は考え続けなればならない。それが人に与えられた使命なのだから。では誰に与えられた使命なのか? 私の思考は出口を探して歩き続ける。
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冒頭から、これは2巻の続きなの?と思うほど、場所も登場人物もがらりと変わっていました。
日本国内の新域で始まった波紋は、世界をも飲み込んでいくことになります。
スケールが大きくなった舞台で、綿密に積み上げていく展開に多少の苛立ちを感じつつも、読み重ねていきます。物語の終盤に差し掛かると、急発進するスポーツカーのような加速が加わり最後のページに向けて怒涛の展開に立ち会うことになりました。
本書には続きがあるかもしれないと思わせる終わり方です。
今まで読んだことのない類の小説でした。著者の野崎さん、もしも、続きを考えているいらっしゃるなら気長に待っていますので、ぜひ前向きにお考えください。
さまざまな感情が揺さぶられる小説であり、私の好きな小説になりました。
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前作の終わりで思考実験は死生観から善悪になるのだろうと思っていたが、中盤まで死生観の考察が続く
そこから善悪に転換する部分は論理的なカタストロフを感じた
議論の描写がメインだが非常にエキサイティング
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先日『水曜日のダウンタウン』という番組で、ペットと一緒にドミノを並べられるかという企画が、放送されていました。
ドミノの完成には、きちんとペットがコントロールできるかがミソです。ペットが勝手に歩き回ればせっかく並べたドミノは倒れてしまいます。
挑戦者たちはそれぞれ苦労しながら、ドミノを並べて行くわけですが、その分完成したドミノを倒すときの快感は、ひとしおではないかと思うのです。
苦労して積み上げたものを終わらせる快感……。これって小説にも応用できるように思います。ミステリの叙述トリックなんかは、読者が積み上げた世界をぶち壊します。
そして、この『バビロン』。叙述トリックではありませんが、この本も積み上げたものを終わらせる快感を、野崎さんが追い求めたからこそできあがった作品なのではないかと思います。
自殺法を巡って世界が揺れる中、開かれた世界サミット。各国の大統領や首相がそれぞれ想いを一つにし、ある問いとその答えを探し求めます。
この問いに対する答えを出すまで、作者の野崎さんはかなりの思考実験をしたと思います。そして、そのたどり着いた答えを一瞬で無に帰してしまう絶望……。
バビロンの一巻の帯に「神か、悪魔か、野崎まど、か」という言葉があります。作中の登場人物たちは曲世愛に、そして自分たち読者は、野崎さんの掌の上で、希望を見たかと思いきや、希望を見た分より深い絶望に突き落とされるのです。
これってまさに神の戯れ、あるいは悪魔の所業という感じがします。そう考えると、あの帯の言葉も決して言い過ぎということはなかったのだな、と感じてしまいます。
ここまでくると気になるのは、話の収束点。世界まで広がった絶望の物語はどこへ向かうのか。野崎さんの手腕がものすごく問われそうな次巻になりそうです。
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バビロンの由来が明らかになり、沈黙の艦隊を思わせるサミットの論戦はニケーア公会議の様相を呈した後、魔界水滸伝か百億の昼と千億の夜か、という領域に。
新域は原潜「やまと」と同様、人類に根源の問いを突き付ける。
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本作はⅡまでと比べ形而上学的な思考を要求される。正義とは何か、自殺は悪か、を問い続けてきたシリーズは遂に「善」そのものの定義に向けて動き出す。癖のある各国の首脳達は誇りと主義の下、サミットの場で意見を戦わせる。読んでいく内に彼らが好きになってくる。先導する今回の主役アレックスは感情移入しやすく馴染み深いキャラクターであり、同時に善性を象徴するかのような鍵となる存在。アレックスやシリーズ主人公の正崎が「善」の答に辿り着こうとする時、今回もまた絶望が待ち受けている。気付くと「最悪」を待っている自分がいる。
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過去2作の主人公から離れて新キャラ目線で進む巻。序盤、今までのショッキングさは影を潜めていて、ともすれば繫ぎの巻である感が出てしまいそうなものを、展開を持たせる問題提議と終盤の圧倒的な加速は見事。続刊早く。
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完結するのかと思ったらまさかのつづく……。
ついに世界規模に発展してしまった物語。
曲世愛、世界へ進出。
善とは――。
悪とは――。
悪の道を邁進する曲世。
正崎善は、善を守れるのか。
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何もかもが規格外、という褒め言葉がふさわしい作品。素晴らしい小説には、人の精神を高揚させる力があることを、読者自身の身をもって教えられることになるだろう。
前巻のあの終わりを引き継いで、次の巻がいきなりアメリカから始まるというのが、まずもってぶっ飛んでいる。正崎の登場を期待する読者にさっそくの先制パンチというわけだ。
何事もなかったかのように、淡々と。長い分量を割いて、アメリカの登場人物の描写が始まる。その描写や演出ひとつ取っても、憎らしいほど丁寧に書かれている。やがて、自分が知らず知らずのうちにこのアメリカ人たちに感情移入していると気づく頃、満を持して現れる正崎のかっこよさといったら。思わず唸りたくなるほどセンセーショナルなのだ。
物語は、作中に登場する自殺法の是非を登場人物に論じさせるだけにとどまらず、おそらく真のテーマであろう善悪の概念にまで踏み込んでいく。
しかし、そうして物語に没頭する間にも、読者はもう一人の主人公、曲世の影を文章の端々に感じてしまうだろう。何気ない描写でも、これは「彼女」の前触れなのではないかと、伏線なのではないかと疑わせるような言葉に、知らず知らずのうちに蝕まれていくだろう。
そして。
「考える人」がたどり着く善悪の姿とは。この上なく整えられた舞台に彼女が降り立つ時、何がもたらされるのか。化け物の生み出す小説に頭から飲み込まれる、全く新しい体験があなたを待っている。
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野﨑まどの作品には哲学がある。
一作品ごとにテーマが設定されて、その概念であったり事柄を深掘りして本質を問い質す。そして必ず作者なりの解答や見解を示すという点で、哲学であるといえる。
各国の首脳が善悪について論じ合う展開は、それぞれの国民性も相まって一旦の結論に達したかと思いきやの暗転。
一体この作品はどこに向かうのだろう。
続きを出してくださいお願いします先生。
Posted by ブクログ
いつの時代も概ね正しいのは子供の方だ。大人はわかったような気になっているが、成長とは時間をかけてくもることでもある。
そう。我々は見えなくとも、いい。何が見えたのかを後から教えてもらえればそれでいい。
生物が生きること。無機物が存在すること。何かがあり、それがあり続けること。なんでもいいんだ、ただ続けば、それていいんだ。僕らは「続く」に「よい」という名前をつけていたんだ。
悪いって「終わる」ことよ。あなたは善人、続くが好きな人。私は悪人、終わるが好きな人。
終わりかたこれかー!アニメとは違うな。しかし、原作の終わりかた邪悪すぎる・・・こんなん善さんの気が狂う・・・どうしようもないやん。続きをよみたいような読みたくないような。
Posted by ブクログ
この章がどうして我々にとって残念なのかと言うと、自殺を大真面目に議論したところで稀代のヴィラネス曲世愛との対決と排除とはなんら関係がないことが、前章までで明らかになっていたからだ。また前章の衝撃的な幕引きを経た以上、次に必ず正崎善の家族が狙われることや、その展開が訪れるまでは単なる茶番か目眩しで実質停滞同然であることも我々は見透かせてしまえたからだ。
だから我々は、おそらく作家がそれなりに真剣に考えて練ったであろう、この章の大部分を占める他国民の思考と議論について、まともに取り合うことなく、活字を然程拾わず、おざなりに受け流して最後まで滑っていけてしまったのだった。(漫画・映像媒体の特色については触れない)ゆえに主要人物の悲劇的な最期にも当然ろくろく没入出来ないし、これで最後の引きが初めから当然視されていた範疇を出ないとなれば、竜頭蛇尾の謗りは免れないだろう。
前章最終場面で曲世愛は初めて例外的な行動をとっており、それは曲世愛が初めて見せた隙でもあったはずなのに、肝心の正崎善がこれを奇貨とし得ないまま、石に齧り付くような地道な捜査に執念深く入れ上げることもなく、ただの大統領の話し相手……はっきりと言えば無策で無能で無価値なままだったことも物語を腰砕けにした。あの弱腰では曲世愛ほどのヴィラネスでなくても嘲笑われてしまう。なんのために渡米したのか。曲世愛におそれをなして家族をおいて逃げたも同然なのにそんな自責も出来ない死に体同然の衰弱には同情するが、「正崎善が復活しない間に世の中では大変なことが起きていました」と省略できてしまう程度の話がこの章である。我々は次回に期待するしかない。
Posted by ブクログ
アレックス……!からの、曲世……!!(なにも伝わらないって)
淡白でなんならやや退屈さにも似た落ち着きでお堅く粛々と冷静に進むのに(それも、風情が全くないというような面白味のなさではないから、嫌いでない)、突然の蛮行とも言えるような終盤に、とりあえず浚われる。
記憶の遠い一、二巻の残酷さを正崎がちゃんと思い出させてくれたのに、満を持するまで予期出来なかったうっかりさである。
あまり大衆的な物語ではない気もするし、でも明らかな力を持ったわかりやすく派手な展開でもあって、なんかとりあえずどストレートなのに捻った「すごい」感。ふしぎ。。
Posted by ブクログ
えっ……まさか最終巻ではなかったとは…いやだってー終ーだし。最終巻かなと…思うじゃないですか?
まあ「考える人」による善悪の結論でこのサブタイトルは納得できますけども!むしろ最終巻でこのサブタイトルじゃダメだなってなりますけども!いやほんと終わらなくてよかったです…
うむ…やっぱり人は考え続けなくてはならんのだなあ…。
しっかし愛さんは…うーむ…そんなに「悪いこと」が好きならもっと飽きっぽくなってはいかがでしょうか?妙に一途だよね…それが愛なのかな……
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積ん読していたバビロンシリーズを、「アニメのネタバレ情報が入る前に原作を読んでしまおう」と読み始め、そうしたらまんまと一気読み。
曲世の禍々しい力は、正義感の強い正崎や瀬黒、無邪気なアレックスには効かないのでは、と予測していたら、全くそんなことはありませんでした。
そうすると、曲世は、なんで最初に会った時に正崎を「骨抜き」にしなかったのか、また、瀬黒を自殺させなかった理由は何か、という謎が残ります。
齋開花のように、正崎には何か使い道があると考えているのか……。
そして、続刊は出るのでしょうか?
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自殺出来る権利を保障する自殺法。世界でも採用する都市が出る中でサミットが開かれる。そして曲世愛を追う正崎はFBI捜査員になろうとしていた。
副題に「終」とあったが騙された。意味が違った。世界に進出した自殺法の是非、曲世愛の行方など魅せる部分は多く引き込まれる。
しかし曲世愛は無敵過ぎてどうするのか見当もつかない。
Posted by ブクログ
サブタイトルが「終」なので最終巻かと思ったら、まだ続いてた。
舞台は一転してアメリカに。話の中心となる大統領のキャラを丹念の描いてる。そしてサミットにおける善悪に関する議論は面白かった。それだけにものすごく後味が悪い。
このお話はどこに着地するんだろう。
Posted by ブクログ
読み終える。タイトルを見直す。そして、絶望が背筋を襲う。
なんだこれは、哲学なのか、宗教なのか、野﨑まどはどこに向かっているんだ。最後の30ページほどで味わわされる、知的快感と嫌悪感。これだけ心をぞわぞわさせる読書は久しぶりだ。
日本で提唱された「自殺法」の思想が世界に広がりつつある中、対応を検討するサミット首脳たち。その思想実験とも言える過程は、考えることが好きな人間として軽い興奮すら覚える。そしてそれをすべて塗りつぶす曲世愛という“存在”。神でも悪魔でも良いが、圧倒的な存在とは人をここまで打ちのめすか。
Posted by ブクログ
知らずに読んでました。
ラスト三文字まさかでした。
タイトル鵜呑みにしてました。
横文字と視点変わってるので、一巻飛ばしたかと思いました。
色々ある意味ビックリ。
Posted by ブクログ
日本の新域で発令された「自殺法」は、世界を巻き込み始める
遂には、7ヶ国サミットで「自殺法」の是非が
各国トップにより討議される
この政治的議論の前に アメリカ大統領の
自殺、善と悪への熟考があり
キリスト教的視点から思考もある
タイトルの“バビロン”を 都市名のバビロンと思っていたけど 黙示録の大淫婦バビロンでした
聖なる者達の血に酔いしれる女
神によって焼かれ裁かれる女 p231
アニメのラストと大きな流れは同じだけれど
表現が違うところがあり
その部分については 私はアニメ派かなと思う
Ⅲに入りⅡの破滅的状況から舞台はアメリカに移り
まどさんの小説によく感じられる舞台の拡大化
結論にたどりつくまで哲学的考察が続き
曲世愛の悪の力が発揮されるのは最後になって
はあー
Ⅲまで発刊されていたので バビロンの結末を読めるつもりが 終わってない
“つづく” で締められている
このままだと Ⅲで出された善と悪の結論に齟齬が出てしまうし 悪の愛は世界に蔓延りそうだし
中途半端でどう感じたら良いのかわからないです
“つづき”乞う!
Posted by ブクログ
ページを開いたときにいきなり外国の名前で
あれ?読む本間違えたかなと思いカバー外して見たりしたが間違っていなかった…
自殺をテーマに世界に広げてきたかーと思ってしまった。
自分てきには正崎善と曲世愛がもっと出てきてほしかった。
Ⅱから話が世界にいったのでⅢでは
あまり話しが進んだ感じがなかった。
次に期待。
Posted by ブクログ
政治の話になると読むペースが落ちてしまう。アニメはこの政治部分をほぼカットしてたから楽しめたのかも。楽しめないのは自分のせいなので、悔しいなぁ。
今回愛ちゃん、全然出てこなかった。私的にこの物語の主役は善と愛ちゃんだったから、もっと2人の絡みを見たかった。愛ちゃんの頭おかしい部分をたくさん見たかった。
中学時代の愛ちゃんとか、今回の騒動に加担する前の愛ちゃんとか、騒動後の愛ちゃんとかのサイドストーリー本出て欲しい。。切に。
Posted by ブクログ
「自殺法」海外へ、といった内容の第3部
しかし、エンタメとしての勢いはガクッと落ち、広まる自殺法も結局超能力頼りっぽい所は強引すぎて少しがっかり
が、長い長い前置きを越えてからの、期待していた善悪についての議論は圧巻
難しい問いにこの作品なりの答えを出した事も大いに評価したいし
その上で「甘美なる死」に向かう理由についても納得のいく結論があり素晴らしい
ただ、この答えであれば何故前巻のラストで曲世は自ら殺しを行ったのか?
あれがセンセーショナルなシーンを描きたいだけであったなら個人的には残念
つづくのかは気になるところ
Posted by ブクログ
正崎さんは生かされて、次は家族の惨い姿を見せられるのかと思うと続きを読むのが恐ろしいです。終わるのが好きならはやく自分を終わらせてくれませんか。
Posted by ブクログ
「Ⅱ」から舞台が日本から急にアメリカに移るので、最初は戸惑いました。
テーマとなる「自殺法」をさらに掘り下げていく後半、善悪とは?生きるとは?哲学的な話が展開されます。
最後は後味がいいとは言えませんが、これも込みでこの作品の魅力かも、です。