【感想・ネタバレ】ソシュールと言語学 コトバはなぜ通じるのかのレビュー

あらすじ

深く考えてみるまでもなく、音声と概念とはまったく性質が違うものです。音声は波ですから見たり触ったりすることはできないにしても、とにかく物理的な実体であるのに対し、概念は決して物理的な実体とは言えません。それなのに、私たち人間がコトバを使う時には、その似ても似つかない2つのものを対応させています。しかも、その対応のさせ方は、同じ言語を使う人々であればまったく同じなのです。もちろんだからこそコトバを使って意味の伝達ができるようになっているのですが、これほど性質の異なる2つの要素を、同じ言語を使う人々がどうして正しく結びつけることができるのかは、考えてみれば不思議なことです。――〈本書より〉 (講談社現代新書)

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Posted by ブクログ

言語学はソシュールの解説本を一冊読んだのみでまるで未知の領域だが、本著を読んだことで興味関心は鰻登り。
ソシュールは構造主義の始まりの人と形容されるが実際は言語の「体系」について初めて踏み込んだ人。構造というよりも、体系の方が適している。
彼の方法論はのちにレヴィ=ストロースに継承されるが、言語学における影響力も当然のことながら甚大。
記号的要素と音声的要素が言葉を生み出す。
言葉について考えれば考えるほど頭が迷宮に入り込む。

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2024年05月13日

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前半は、ソシュールの『一般言語学講義』に見える諸概念やソシュールの学説を概説している。後半では、ソシュール以降の言語学を振り返り、各学説の功績と課題を指摘している。

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2024年03月05日

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ソシュールのことはもちろんだが、ソシュール以後の言語学者がどのようにソシュールの考えを取り入れたのかについても書かれていた。
特にマルチネのコトバの経済性の原理の考え方が面白かった。
また、構造主義言語学は、疑いようのない事実を立脚点とすることを重視し、事実に基づいて論証していくやり方であるが、この疑いようのない事実を人間の特徴から見出していたことに驚きつつ、でもよく考えたらそりゃそうだなぁと納得できたことに面白さがあった。
これは、一般的に思考する上で参考になると思った。

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2021年08月02日

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ソシュールが提示した、言語記号の「恣意性」と「線条性」、コトバを構成する「要素」の間にある「関係性」(「要素」間の差異によって各要素の「意味」が確定するひとつの「体系」)などなど、についてわかりやすく解説してくれている。後半は、ソシュール後の言語学の展開をおさえることで、ソシュールが提示したこととしなかったこと、ソシュールの何が後の言語学に影響しているのか、等を具体的に示していてくれる。その中で著者が強調しているのは、言語学は実証的な科学であってこそ意味のあるものとなる、という立場である。

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2015年03月17日

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 「これはりんごです。」、こんな当たり前の文が当たり前に通じることを不思議に思い本書を購入。
 リ・ン・ゴと言われ思い浮かぶアレと単語を結びつけているのは恣意性であるとの記述にハッとさせられた。人と人との対話の難しさの根本はここにあるのかもしれない。
 まだ言語には未解明の部分も多いらしく今後の発展に期待したい。

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2014年12月08日

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ソシュールの言語学からその後に至るまでを書いた本。
ソシュールの部分についてはとてもよく理解できた。その後の展開についてもなんとか理解できた気になったけども、最近の研究展開などにはついていけず。

とは言え全てを理解できないことが本の評価にはつながらない。
まずは肝と言えるソシュールの言語学をおさえられたので自分の中では満足でした。

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2022年08月21日

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ことばを構成する音声と概念は本来別個のものであるにもかかわらず、結びつけられる。この背景をソシュールやその系譜の学者の主張を交えながら解説してくれる。
構造主義的なアプローチによる言語学の力を信じている筆者の思いは伝わってくる。小難しく考えずに読むとおもしろい。

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2022年04月07日

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ソシュールと、彼の思想を引き継いだ言語学者たちの仕事について解説している本です。

日本を代表するソシュール研究者の丸山圭三郎は、主著『ソシュールの思想』(岩波書店)において、ソシュールの思想のエピステモロジーとしての側面に焦点を当てていました。丸山の考えるエピステモロジーは、科学的な認識の批判的検討を意味しており、そこではソシュールは、マルクスの仕事が経済学批判として解釈されるのと同様の意味で、言語学批判をおこなったと論じられていました。

これに対して本書で焦点が当てられているのは、通常科学としての言語学の中でソシュールの仕事が持つ意義を明らかにすることだと言えるでしょう。ソシュール以後の言語学者では、プラーグ学派のトルベツコイ、コペンハーゲン学派のイェレムスレウ、フランスのバンヴェニストとマルティネが取り上げられ、

現代思想には関心があるけれども言語学そのものには関心がないという読者の場合、ソシュール、チョムスキー、レイコフといった主要な言語学者の仕事についてのおおまかなイメージがあるだけで、言語学という学問の営みそのものの発展についての知識が欠けているということは、おそらく少なくないと思います。私自身もそうなのですが、そうした読者が科学としての言語学におけるソシュールの仕事の意義について知るためには、たいへん有益な本ではないかと思います。

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2017年01月17日

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ソシュール言語学とその後の変遷について、なかなかわかりやすく書いてある。バンベニストの章はフランス語の文法知識があると理解が深まるはず

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2015年06月14日

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[ 内容 ]
現代思想の原点がここにある。
コトバの本質を問う「ソシュール以後」の軌跡。

[ 目次 ]
第1章 ソシュールはこう考えた(コトバの本質を求めて―分析対象の設定 ソシュールが示した指針―体系と構造)
第2章 ソシュールの考えはどう継承されたか(最初のターゲットは音素だ―プラハ学派キーワードは関係性―コペンハーゲン学派)
第3章 花開くソシュール(具体的な言語事例を構造主義的に分析―バンベニスト コトバは経済的にできている―機能主義)
第4章 構造主義言語学の課題(疑いえない原理だけを基準に 構造の問題 ほか)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年10月09日

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非常に分かりやすいソシュール言語学の入門書。
構造や体系といった言葉の使い方も分かりやすく解説されています。

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2009年10月04日

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ソシュールの構造主義から、構造主義を継承し発展させた言語学者たちの思想や理論についてわかりやすく解説されていた。ただ丁寧に解説しすぎてやや回りくどい印象も。
「体系」というものが単語間の中で特徴・意味の違いを見出すことのできる集合である点でヨコの広がりであり、一方ソシュールの指す「構造」は線状性をもつ文というものの中での単語の関係性であるという点で、タテのつながりであるのだ、と私は解釈し、関係性の中でコトバの意味が決まるという構造主義の考えへの理解が深まった。しかしやはり現代進んだ研究の至っても、コトバとそれが伝達する意味との関係を普遍的な理論で説得力を持って説明できてはいないようだ。
また、音韻論や形態論や統語論などのあらゆる分野について、大学の言語学概論で習った内容の多くは、ソシュールを出発点としていたのだ、とこの本を読む限りでは理解され、また概論で習った内容を再確認できた。しかし、この本はそうした概論で扱った文献にくらべ、専門性に欠けており、もう少し難しいものにも挑戦してもいいかな、と思った。

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2009年10月04日

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私にはやや難しかった。
ゆっくりじっくり読んだらとても面白いと思う。
言葉の短縮が言語の経済性で説明されることや、連合関係、範列関係の説明はためになった。

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2024年09月01日

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ソシュールは一般言語学の祖。そこから構造主義言語学が生まれたという。比較言語学と違い、普遍的な言語を研究するというのは難しそうである。

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2018年10月20日

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ネタバレ

【★ソシュールにおけるコトバの原理】p161
言語記号の内容部(意味)と表示部(音素列)の間にある恣意性、記号が一列に並ぶという線状性。

比較言語学→一般言語学へ

同じ意味が伝達される過程に本質的に関わってくる要素こそが重要なのであって、ソシュールはこれを「ラング」と呼んだ。p31

個別言語を作っている要素のうちで、同じ意味の伝達に関係してこない要素をソシュールは「パロール」と呼んだ。ラングとパロールを合わせた個別
言語の全体像が「ランガージュ」である。p32
→結局のところパロールは、具体的な音声およびそれを作り出すあるいは知覚するための生理的な運動であって、何らかの方法で具体的に観察可能な現象である。そしてそういう具体的な現象は、音素という抽象的な単位として認識されてはじめて意味と結びつくことができるのだから、意味と直接的に関係するものではない。p37

ラングには「社会性」がある。p33
音にも抽象性が伴う「音素」p35
[本書においては]音素列=聴覚映像

ソシュールは、音や図形などの人間が知覚できる表象に意味が結びついたものを「記号」と呼んだ。p41

【記号の意味と表象】p43
意味=シニフェエ、表象=シニフィアン
本書では内容部、表示部

ソシュールにとって単語=「言語記号」p43

言語記号の恣意性―コトバの「第一原理」p48(可変性)
言語記号の線状性―コトバの「第二原理」p51
Cf. 慣用句や熟語 Eg. 「腹をくくる」「水をさす」
Cf2. 「複合語」 Eg. 「たこ焼き」「焼きたこ」意味が変わってくる

ある特定の時点におけるラングの状態=「共時態」⇔「あした」というような語形をもつ単語の意味が千年前から現在へと時間が経過するにつれて変化したような事実を「通時態」

単語の意味は体系をなす⇔集合 eg. 自然数 p63

【連合関係と差異の体系】p66
連合関係:体系に含まれる要素の間にある関係
体系に含まれる要素の価値がお互いの差異で決まることから、コトバが示す体系を「差異の体系」と呼ぶこともある。
eg. 「持つ」英語では:have, take, hold
日本語と英語では全体としての単語の体系が異なる

【連辞関係と構造】p69
連辞:複数の単語によって構成される単語よりも大きな単位
連辞関係:連辞の中にある単語の間に見られる関係
連辞の作っている単語の並び方や意味的な関係を明示的な形で表したものを、後になって「構造」と呼ぶようになった。

【ソシュールが設定した言語学の課題】p72
ラングが示す体系と構造の性質を明らかにすること。

[構造主義の含蓄]p75
事物が体系を作り、事物の性質が体系に含まれる他の要素との関係で決まってくるという考え方は、単語の意味だけではなくて、社会制度でも建築物でも、さらには人体を作っている諸器官についても、広く適用できる一般的なものである。

「プラハ学派(プラーグ学派)」p80
最初のターゲットは音素

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2013年08月16日

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現代言語学の祖と言われるソシュールの功績を構造主義を中心に、その後継者や現代にどう受け継がれているかを述べ、現代言語学へのあり方への警鐘を鳴らす。

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2013年01月21日

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ふぇぇ・・・連辞関係とか共時態とかむずかしい言葉ばっかりで全然意味がわからないよぅ・・・。

この本を読んで理解できるほど、精神が発達してなかったかなーと思う。でてくる言葉が難解で、途中からところどころ何の話をしているのか分からなくなってしまうので。

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2011年12月02日

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ネタバレ

構造主義の祖と言われるソシュールの講義を元に彼の教え子がまとめた「一般言語学講義」の原理を解説し、彼の影響を受けてその構造主義的分析手法を発展させていった言語学者達の業績を追う。個人的にマルチネの主張した、言語の中の「経済性」が興味深い。社会言語学という分野に興味をそそられる一冊。

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2011年03月18日

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ソシュールというかソシュール以後の言語学について。

自分は言語学そのものじゃなくて構造主義がすきなだけなんだなと気付いた。
ことばの分析は面白いと思ったけど、数学的な手法は苦手だ。

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2010年12月26日

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ソシュールと、それ以後の言語学の変遷。言語学入門、とかにしてしまわないのは、やはりそれほどソシュールという人が言語学の世界で、ネームバリューを持っている証か。

内容としてはソシュールについて簡潔にまとめたあと、そこからの展開がメイン。

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2010年05月08日

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言葉について考えたかった。
一番考えたいところではなかったけれど、これを読んだことで、もう一度構造主義についての本を読み返そうと思えた。

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2010年03月22日

Posted by ブクログ

ピンときてなかった「構造主義」が何となく理解できたかなーって感じ。

言語学自体の話は正直よくわからんわ。

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2009年10月04日

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ソシュール以後の近代言語学の構造言語学の歴史について、主にヨーロッパ構造言語学の復習ができる本。
 『20世紀言語学入門』のように、単に言語学史を体系的に示したものというよりは、著者の町田先生の自論も紹介されており、随所で考えさせえられる。個人的に町田先生の意見に納得し賛成できないところもあったが(例えば言語が変化する理由、とか)、とにかく自分で言語学の問題に大して色々考えるためのきっかけを与えてくれる。また言語学に関する基本的な知識を持ってる人にとっては、新たな視点を得ることができ、面白い。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

第1章 ソシュールはこう考えた
 1 コトバの本質を求めて 分析対象の設定
 2 ソシュールが示した指針 体系と構造

第2章 ソシュールの考えはどう継承されたか
 1 最初のターゲットは音素だ プラハ学派
 2 キーワードは関係性 コペンハーゲン学派
 3 言語過程説

第3章 花開くソシュール
 1 具体的な言語事例を構造主義的に分析 バンベニスト
 2 コトバは経済的にできている 機能主義

第4章 構造主義言語学の課題

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2009年10月04日

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