【感想・ネタバレ】ナノカーボンの科学 セレンディピティーから始まった大発見の物語のレビュー

あらすじ

黒鉛ともダイヤモンドとも違うまったく新しい構造をもった炭素の新物質、フラーレン、カーボンナノチューブ、ナノピーポッド……。「ナノカーボン」と総称されるこれらの新物質は、異分野の研究者の交流のなかで、ある日、偶然に発見された。急進展する「ナノカーボン」研究と共に歩んできた著者が、思いがけない展開と興奮に満ちた大発見の裏側をつぶさに語る。(ブルーバックス・ 2007年8月刊)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

名古屋大学で、ナノカーボン研究を牽引している著者が、ナノカーボンの発見について、世界中の研究者がどう辿ってきたか明らかにした本。

フロリダ州立大学のクロトーと、ライス大学のスモーリーによって、1985年に質量数720のピークであるC60を発見し、この形状がリチャード・バックミンスター・フラーが1967年のアメリカエキスポで設計したドームと似ているこ「フラーレン」と名付けられた。
この発見は、論文ネイチャーに掲載され、1996年にノーベル化学賞の受賞論文となっている。

ところが、この発見の15年前である1970年に、京都大学工学部の大澤英二教授は、サッカーボール構造のC60の仮説を唱えていた。残念ながら、その論文は英訳されなかったため、世界に認められたのはくクロトーらが発表された以降のこととなってしまった。

その後、1990年には、ハイデルベルク大学のクレッチマー、アリゾナ大学ハフマンらにより、ヘリウムで満たした真空容器の中に、グラファイト棒(炭素元からなる鉱物を棒状にしたもの)に高電流を流し、昇華を行う抵抗加熱法により、C60の多量合成に成功したことが発表された。

この発表以降、名古屋大学の斎藤教授によるガス中蒸発法(抵抗加熱法と原理は同じ)、名城大学のアーク放電法(気体中での放電法)などによりC60の多量合成の研究が日本でも盛んに行われている。

1991年にはNEC基礎研究所に勤務していた飯島氏が、アーク放電で陰極の先端に堆積した硬い堆積物を透過型電子顕微鏡で観察することにより、チューブ状の物質であることを発見した。
これが世界に先駆け日本が発見した、カーボンナノチューブである。

カーボンナノチューブは、コンポジット補強材などの他に、半導体にも金属にもなる性質から、電池、トランジスターや蛍光管にも利用されている。

科学者達の成功や挫折を時系列で追いながら、話題のフラーレンについてわかりやすく解説した、素晴らしい本だと思います。

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2014年06月02日

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