あらすじ
ある地方の高校演劇部を指導することになった女性教師が部員らに全国大会の出場を意識させる。高い目標を得た部員たちは恋や勉強よりも演劇ひとすじの日々に。演劇強豪校からの転入生に戸惑い、切磋琢磨して一つの台詞に葛藤する役者と演出家。彼女たちが到達した最終幕はどんな色模様になるのか。2015年2月に映画化する、爽快感を呼ぶ青春小説の決定版!
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言葉にならないものを言葉にする
高校演劇部を舞台にした小説。
小説を読むのも演劇や映画やそういうものは全て言葉にならないものを言葉にして伝えるためのものだと思う。それを小説にしてくれた。
主人公の言う押し付けにならない高校生らしさも深い。静かな青春を感じた。
Posted by ブクログ
高校の演劇部のお話。
学校に新しい先生、吉岡先生がやってくる。「学生演劇の女王」だったそうだが、演劇には関わりたくはないらしい。さおりは先生を何とか説得。県内強豪校からの転入生中西さんも加わり、適材適所で戦力は一気にアップ。が、吉岡先生は演劇に向き合う中で自分も芝居を本気でやりたいという気持ちが高まり、戦線離脱。残された演劇部は全国大会出場の切符を掴めるのか!
最初は。「・・・だけど。」ばかりの煮え切らないさおりの思考回路を見せ続けられて辟易する。が、吉岡先生と出会い、どんどん芝居にのめりこむ中で変わっていく。思考回路が前向きに変わっていく。まわりのみんなにも優しくなれる。何かに夢中になれるって、ほんとに素敵。この本はそれを追体験させてくれます。
もちろん、人生いいことばかりではありません。おじさんになってこの本を読むと、「大人になるということは、人生のさまざまな不条理を、どうにかして受け入れる覚悟をすることです」という滝田先生の言葉についつい頷いてしまいます。
でも、さおりは吉岡先生との不条理な別れを乗り切ました。「十八歳の私たちの前には、無限の星空が広がっている。」とても爽やかな気持ちになれる一冊でした。
Posted by ブクログ
チョイスした動機は他の方のこの本の感想を見て興味を持ったため。現役劇作家の方が書いているため、演劇に対しての描写が詳しい。それでもって物語のキモである「銀河鉄道の夜」をこれまで読んだことが無い点に反省。さらに自分も劇中の高橋さおりみたいに「人の気持ちを汲み取る」という点が苦手なので、ワビスケのさおりへの想いも気が付かなかった。自分の中では知らない部分が多く自己嫌悪しながら読み進めたが、演劇にかける青春物語として興味深く読むことが出来た。実写映画化されているみたいなので、機会があれば見てみようと思う。
Posted by ブクログ
平田オリザさんは初めて読んだけど、はまりそう。
青春小説だから青臭いというわけでもなくて。
演劇の世界を垣間見られたのも楽しかったし、何よりも後半の高揚感。
続編が出ればいいのに。
部長とわび助の関係も気になる。
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地方の高校演劇部を指導することになった教師が部員たちに全国大会を意識させる。高い目標を得た部員たちは恋や勉強よりも演劇ひとすじの日々に。演劇強豪校からの転入生に戸惑い、一つの台詞に葛藤する役者と演出家。彼女たちが到達した最終幕はどんな色模様になるのか。
涙と爽快感を呼ぶ青春小説の決定版!
Posted by ブクログ
高校演劇についての話。
正直なところ、これまで演劇部に明るいイメージがなかったのですが、随分印象が変わりました。私が普段目にするドラマ・映画・舞台につながる道の一つであるわけですよね。高校生のアツい部活の一つなわけです。
セリフ一つ、動きやタイミング一つにとてもこだわっているんだなぁと、(正に)舞台裏を知ることができました。
話自体はかなりサラサラ流れていきます。ラストシーンをどう変えたのかな?と興味深く読み進めました。
あのラストは、誰にでも(=観客)当てはまる普遍的なセリフであり、自分と友人との話であり、もうすぐ離れ離れになる三年生四人の話であり、吉岡先生と演劇部の話であり、そして、自分と自分との話であると思いました。
この演劇を実際に演じてほしい!是非とも観たい!と思います。
Posted by ブクログ
映画は見ておらず、著者の関わった作品も拝見していないため、この小説が初めてです。
演劇をしたことがある人なら共感する部分が非常に多いのではないかと思います。弱小演劇部で、顧問が演劇経験があるわけでもない中で、どこまで本気で芝居を続けて何を目標にして行けばいいのか、部員がバラバラであるというのはとてもよくありがちでしょう。かと言って仲が悪いわけではなく、部員の仲は良いというのはこの演劇部はとても良いところだとは思いますが、そのぶん雰囲気を悪くしないために本気になれないというのも切ないところです。
主人公目線で語られてはいますが、割と淡々と語られていくので、物語も淡々と進んでいきます。 主人公の人柄というのが自分にはいまいち伝わってこない部分があり、ちょくちょく疑問に思う箇所がありました。先輩のデートの誘い方が不器用なのは確かにその通りですが、1月2日に初詣に行くのがそんなに問題があるでしょうか? 相手を待たせてまですることではないかもしれませんが、献血をすること自体もとても素晴らしいことだと思います。 研修で泊まった施設で出る晩御飯のちくわが揚げてあっても別にいいと思いますし、友達のお母さんがサンドイッチを作るのがとても上手だという話をしている時でも、そんな人がなぜ独り身なのかなど、 基本的に一言多いような感じがしました。このような主人公に対して、別に不愉快とまではいかなかったのですが、かといってみんながそこまで信頼を寄せるにいたる部長なのかというのは多少疑問が残りました。
その他にも、お酒を飲んだり、シングルでとっているであろうホテルに二人で泊まるなど気になる箇所もありました。
高校の演劇部は二人上手い人がいればなんとかなるというのは本当にその通りです。演劇部にかかわらず誰かが自分を犠牲にして本気で旗振りをする人が一人でもいればなんとかなると言うケースはそれなりにあります。ただそれで本気でやっている人が納得の行く仕上がりになるわけではないですし、消耗するばかりでそれなりのものしか作れず、本気の人が本当にやりたいことにはなかなか近づけないものです。
演劇はスポーツと違って、みんなが一体になる必要はないというのも確かにそうだなと思いました。チームワークが必要ではあるのですが、スポーツというより野球とは、かもしれませんが少しその辺りは違います。
吉岡先生のキャラクターはなかなか好きです。お芝居に真剣ではあるのですが、変に情熱を振りかざすような、生徒たちのスペースにズカズカ入り込むような感じではなく、もし自分が高校生の頃にこういった先生がいたらよかったなという感じはあります。また対比として書かれているので仕方ないのでしょうが、溝口先生もとてもいい先生だと思います。うざったい人、演劇の深いところが理解できない浅い人というような書き方になっているのが少し引っかかりました。
吉岡先生は本当にぶれていない人で、だからこそ目標をどこに据えるか、県大会に出るかどうかというのを部員たちを呼んで聞くことができたのだと思います。芝居に真っ直ぐだからこそ、芝居の良い面も悪い面も体で知っているからこそ出てくる考え方だと思いました。
ちょくちょく吉岡先生に頼りすぎだという描写があったのでそういった伏線だというのはわかりますが、それにしても元々有名な女優で今でも芝居が好きでありそうな人が元の世界に戻るということが、そんなにショックなものでしょうか? 確かにこんなタイミングでいなくなってしまうのは不安だというのはよくわかりますが、女優に戻るなんてすごいと興奮する人が一人もいないと言うのは少し違和感です。裏切りだとまで主人公が感じるのがいまいち理解できず、同じ芝居に携わる人間だからこそ理解できるのではないかと思っていたので、手紙を読まないで捨てようかと考えるほどショックだというのはちょっとよく分かりません。
芝居のシーンの描写についてはさすがという感じで、舞台の情景が浮かび上がってきます。実際に一つのお芝居を観たような気分になってゾクゾクしました。
自分としては大会のシーンで最後でもよかったような気もしますが、後日談は後日談で微笑ましいものがありました。本当にいつか主人公が舞台演出をした舞台に吉岡先生が出演する日が来ると良いなと思います。