あらすじ
穂高の山小屋に暮らし、誰よりも深く穂高を知る男・宮田八郎。
人気漫画「岳」(石塚真一著)に登場する小屋番「宮川三郎」のモデルにもなり、穂高の遭難救助に欠かすことのできない人物だった。
2018年4月に海難事故で不慮の死を遂げてしまったものの、
「山で死んではいけない」というメッセージを
多くの登山者に届けたいテーマとして、彼は書き残していた。
現場に長く居たからこそ経験できた山岳遭難救助の実態について、具体的な体験談をもとにレポートし、
「防ぐことができたはず」の遭難が二度と起きないように、現場からの貴重な声を登山者に届ける。
山岳遭難の現場ではいったい何が起きているのか。
長年、穂高岳山荘を基点に、遭難救助の最前線で活躍し続けててきた宮田八郎が、
山岳レスキューの実態をつぶさに紹介。
遭難救助の初体験から、霧の中の危機一髪のヘリ・レスキュー、季節ごとの遭難歳時記等、心に残る遭難救助の数々が描かれる。
穂高の小屋番であり遭難救助隊員でもあった宮田八郎が登山者に向けて残した、厳しくも暖かいメッセージ。
感情タグBEST3
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山ではこんなに人が死ぬのか、と衝撃を受けた。この本の登場人物は実在なのに故人が多い。だからこそ生きてくれという著者の真摯な姿勢が胸を打つ。著者自身も海難事故で亡くなっているので、読後妙なやるせなさがあった。
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久々に涙がこぼれた。
丁寧な文章で淡々と書かれているが、ブレることのない信念や山という非日常のなかでの人間の絆の強さを感じました。
著者のご冥福をお祈りします。
Posted by ブクログ
彼をよく知ったのは亡くなられてからで、生前小屋を訪れた時にお話し聞いておけば良かったと後悔です。レベルの差はあれ、山をやる者の社会からの疎外感、そして「人はなぜ山に登るのか」の腑に落ちる考えが圧巻でした。それはあくまでレスキューの立場であり、アルピニストを客観的に見ていたからでもありますが、長年の同じ現場で、自分の考えに磨きがかかったかもしれません。
7年前に穂高岳山荘の前で雪掻きをしている人達の写真を撮っていました。たぶんその一人が宮田さんだと思います。そんな微かなすれ違いであっても、いまこうやって本を読み終えると、自分の中にいつの間にか彼の居場所ができているのが不思議です。
Posted by ブクログ
無人島に行く船の途中、なんの娯楽もないから適当に船内書庫から引っ張ってきた本。
書いてあったのは、宮田さんの面白くも過酷な穂高小屋での暮らし。
読んでいくうちに宮田さんのキャラクターに魅入られて、自分ごとのように楽しみながら読み進めた。
だからこそ最後のメッセージは衝撃を受けたし、妙に納得もできてしまった。
この本を通して宮田さんの人生を知ることができて、良かった。ずっと覚えているだろう一冊。
Posted by ブクログ
昨今、山の番組は結構あって、日本百名山とかグレート○○とか、BSでは毎日何かしらやっているので、全部はチェックしないのですが、先ごろなんとなくついていたテレビで山の番組が始まり、見るとはなしにみていると、宮田八郎という人の特番らしく、途中からしっかりと見入ってしまいました。
山を愛するあまり10代で神戸から出てきて穂高岳山荘の小屋番をされています。
小屋明けや小屋仕舞やその日常(いえ私たちにしたら大変な非日常)の中で生き生きと動き回る宮田さんにくぎ付けです。
丸いひげ面のお顔にくりくりとしたまん丸い目、人懐こい笑顔、ほっとする関西弁、誰もがそんな宮田さんを慕って小屋に通うのは納得です。
とはいえ、穂高岳山荘という小屋は、北には槍ヶ岳反対側は西穂高岳がある穂高連峰のちょうど真ん中あたり、涸沢岳と奥穂高岳の真ん中あたりのコルにあり、誰もがおいそれと行けるところではありません。
どこから行っても難所につぐ難所の連続で、一歩間違えば命がないというようなところだと思います(私も行ったことはありません)
当然、毎年遭難事故が発生します。
本書はそういう遭難事故のレスキューの話です。
遭難事故の一報が入れば、どんな悪天候でも、何をおいてもとにかく駆けつける、「自分の命はかけられへんけど助けられる命は助ける」その精神で、山岳救助隊、エアレスキュー・防災ヘリと一丸となり力の限りを尽くす姿勢には頭が下がります。
遭難者の中には、師と仰ぐ人、友人、そんな人たちも含まれていて、その心境はいかばかりかと。
2年ほど前、友人と登山口で車中泊をしているとき、さあ寝よかと横になると、スマホを見ていた友人が、「○○さんが、シーカヤックやってて伊豆で行方不明やて!知ってる?」「えっ、そうなん?知らんけど・・・」となんとも愛想のない返事をしたのを思い出しました。
これが宮田さんのことだったんだと今確信しています。
友人は山の知識も技術も豊富なので、穂高にも幾度も足を運んでいるでしょう。宮田さんとも面識があったのかもしれません。そんな彼女につれない返事をしてしまって、ごめん。
そうです、宮田さんは海の事故で無くなってしまわれました。番組の途中からこの方は今はおられないのかなという気がしていましたが。
山で自然の脅威をいやというほど知らされていたのに、海という環境は違えど、やはり自然には抗えなかったんですね。
小屋番を亡くした穂高岳山荘も穂高の山々も、今日も変わらずにその存在は偉大であると思います。
宮田さんの遺志を忘れずに、心して入山したいものです。
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ボランティアの山岳救助。穂高の山小屋での多くの経験を記した一冊。筆者が不慮の事故で早逝したこともあり、命の重みや登山という行為について実に考えさせられる。
漫画「岳~ガク~」の素材にもなっている穂高の山岳レスキュー。警察とは別の山小屋の方々の献身的な努力に支えられている。
山に登るという行為、なぜ人は危険を侵してまで挑むのだろうか。著者も含め本書の登場人物の多くが亡くなっているだけに、考えさせられる。
安易な登山者にこそ読んでおいてもらいたい。登山者の安全はこのような山小屋の方々に支えられている。
Posted by ブクログ
息子と涸沢から奥穂高へ登った翌年に亡くなってしまった。今思い起こせば穂高小屋に着いたとき外にいた男性はハチさんだったのではないかと思わずにいられない。下りのザイテングラードってそんなに遭難が多かったのは知らなかった。ゆっくり着実に下るのが肝要。
Posted by ブクログ
読書前に知って読んだけど、文章を読んでいくうちに、宮田八郎さんという人、山に対する思いやレスキューに対する考えが分かって、、最後の追悼文には最後が分かっていただけに切なく熱い気持ちがこみ上げた。ずっとずっと山に携わって来た人が海難事故で命を落とすって
死と隣り合わせで生は輝く
ご冥福をお祈りします。
2019.8.8
Posted by ブクログ
宮田さんは どんな経緯で遭難したのであれ
助けられるなら 必ず行く
と明言されていました
遭難とは 自己責任を超えた
自分では どうしようもない状態になったことであり
それは 助ける一択しかない と
人が人を救うのは 当たり前
そして 何度も
何故 人は山に登るのか ということを
自問自答されてました
Posted by ブクログ
岳の漫画を読み始めてから、こんな人達がいるんだって知り、実際に山小屋で救助活動をしている人のことが気になり読んでみました。岳でも感じたけど、凄まじいし山では本当に人が呆気なく死ぬんだと思いました。
登山が趣味だけど、山で遭難しないよう、死なないよう準備を含めたリスク管理と、慣れてきても油断しないようにしようって肝に銘じました。どんな山でも登山をするかぎり危険は伴うけど、まずは遭難しないようにすることが、登山者として何よりも大事だと思いました。
特に雪山での大量遭難の現場が凄まじすぎて、心がぎゅっとなった。登山客の医師と看護師も救助に加わったらしいけど、自分がその壮絶な現場に居合わせたとして何も出来ないと思った。本当にすごい。ヒーローみたいな人達がこの世界にいることが知れて良かったです。
山での遭難の時に助けてくれる方々の仕組みについて知れるのも良かったです。山小屋の方をはじめ、ヘリや警察など多くの人達が関わっていることを改めて知りました。岳の三歩みたいに1人で助けに行くことはなく、チームワークを発揮して、チームで助けに行く。本当にヒーローに思えた。
Posted by ブクログ
日本で3番目に高い山、北アルプスの名峰、奥穂高岳(3190m)への足掛かりとなる穂高岳山荘の支配人だった宮田八郎さんのコラム。この山荘は岐阜県と長野県のほぼ境界にあり標高2996mにある。毎年多くの登山者を迎える山荘であると同時に、多くの遭難者の救出活動の前線になる山荘だ。宮田さん自身、遭難者の救助に全力であたってきた。山を愛する気持ち、山で遭難してほしくない気持ちが、痛いほど伝わってくる。漫画「岳」に宮川三郎の名前で登場する宮田さんが、実はわりと近い存在であったことを知ったのは、残念ながら2018年4月に彼が海で亡くなってからであった。ぜひ生きていてほしかった、そして穂高岳山荘で話をしてみたかった。
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高所恐怖症なのに山が好きです。ドキッとしたことも何度かありますが、あの達成感は何物にも変え難いと思います。だけどやっぱり怖い。"岳"よりもずっと怖さのリアリティがありました。そんなに生き急ぐことはなかったのに。残念です。
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これは本当に、この世かな?と思うくらいきれいな景色を見せてくれる山だけど、気を付けていようと、慣れていようと関係なくふとした弾みで命を持って行ってしまう。自然の険しさと、そこに生きる人と、またふらりとやってきて帰っていく登山者の感覚と、かなりのドラマがありました。しかし、どんな猛者であっても、自然の前には関係ないのだな、と山の恐ろしさをひしひしと感じる本でもありました。気を付けよう。
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3000メートルを超える穂高岳の山小屋支配人を務めた宮田八郎。彼の仕事は山小屋の運営、客のもてなしに加えて、山での遭難救助。本書は多くの遭難救助に立ち会った宮田氏の活動の記録。
山での遭難について、よく言われるのが自己責任論。本書の記録の中には登山者の無謀、無知が原因による遭難も多い。が、宮田氏はそんな救助活動についても決して登山者を責めないし、恨まない。関西弁でツッコミを入れて、笑い飛ばす。彼にとって、救助とは自分の役目であり、助けることができるのあれば助けるし、助けてあげたい。それだけで彼は行動する。
そんな境地に達したのは、山で彼の師や友の死に何度も接したからだろう。どんなに注意しても、経験を積んでも人は山で死ぬ。それを理解したうえで、彼は第一に自身の安全を確保することを心がけてから、救助活動をこなす。
そして、当然自分の死についても考えていただろう。2018年、彼は海で遭難死する。山で死ななかったことは彼のプライドだったのだろうか。追卓のあとがきは彼の妻が記す。
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漫画『岳』の宮川三郎のモデルとなった穂高岳山荘元支配人・宮田八郎の日記、遺稿集。
宮川氏が穂高山荘で働き始めた頃から考え続け、伝え、遺してくれたレスキューの記録。
山岳遭難に対応し続けたプロの岳人、彼が遺した記憶は、レスキューする者の立場から書かれた者ではあるが、遭難しうる側としてのアマチュアな我々にとって、危険に向き合うことについてきちんと考えさせてくれる。
それは、おそらく山の危険についての対応だけでなく、普通の生活者にとっても、考えておくべきことのように思える。
Posted by ブクログ
各地にある有人の山小屋。
宿泊施設としての役割りとは別に、遭難の際の救助の前線基地という側面がある。
そんな山小屋の小屋番をされていた宮田さんの手記。
リアルな話から「いかに遭難する登山者を減らしたか?」という希望が見える。
遭難しなければ、山は怖いところではないわけですが、遭難する人はゼロにはならないのが現実。
そこをゼロに近づけたい。そういう願いが込められている。
宮田さんが亡くなられたのは残念でならない。
Posted by ブクログ
漫画岳のモデルの人のレスキュー日記。本人はカヤックで海に出た際に行方不明になる。
山の体験記は実話ゆえに惹かれる。遭難の恐ろしさと救う側の奮闘が読める。みんな、登山はほんと安全にねっ!
Posted by ブクログ
山に魅せられた人たちの本を読んでいて、ふと救助する人たちは何を思っているのかが気になり手に取ったと思う本
穂高連峰の美しさは知っていても、登るではなく見るのが好きなので各名称は知らず、1章の終盤はネットで名称を調べ、こんなところを人が歩くのかと驚愕しながら読んだ
今年も大型連休、というか山開きをしてから遭難しているニュースをよく見る
登山する人が増え、きっと山に対して畏怖を抱く濃度も範囲が増えたから救助を呼ぶ頻度も増えたのかなと思った
助けてもらっておいて荷物取ってこいって…そういう粗暴な人だから遭難するんじゃないのと思ってしまった私は短気
救助を呼ぶということはその人の命を危険に晒すということ
たとえ救助隊員側に命をかける意識がなくても、山は誰にでも牙を向く
登山する前に一読し、再度装備やルートを検討するのがいいのではないかと思った
山は美しい、その分恐ろしい