あらすじ
鉄剣を磨き、馬を養って時に耐える大海人(おおしあま)皇子はついに立った。東国から怒濤のような大軍が原野を埋めて近江の都に迫り、各地で朝廷軍との戦いがはじまる。激動の大乱のなかの息詰まる人間ドラマの数々。歴史学をふまえて錯綜する時代の動きをダイナミックにとらえた著者渾身の歴史長編。
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Posted by ブクログ
鉄剣を磨き、馬を養って時に耐える大海人皇子はついに立った。東国から怒涛のような大軍が原野を埋めて近江の都に迫り、各地で朝廷軍との戦いがはじまる。激動の大乱のなかの息詰まる人間ドラマの数々。歴史学をふまえて錯綜する時代の動きをダイナミックにとらえた長篇。
1997年7月27日購入
Posted by ブクログ
下巻では、大友皇子に天皇位を奪われ、出家して吉野に隠遁していた大海人皇子が綿密すぎるほどに計画し、挙兵するまでの様子を描く。宮滝に落ち延びてからも決して態度を変えず大海人に寄り添い続ける勝気な妻、鸕野讃良との絆の深さも印象深い。
身分に隔たりのある舎人たちと心を通わせるなど、懐の大きな大海人に心を寄せるものは東国にも王族にも朝廷内にも多く、彼らは近江朝廷に愛想を尽かしてしばしば大海人を慕い、挙兵を促す。しかし大海人は舎人たちにさえギリギリまで本心をひた隠しに隠して、水面下で準備を推し進めていく。
決戦の日に備え、部下たちに土地勘を養わせたり、より強力な武器を製造させたり、まだ皇太弟として権威を失っていなかた頃からの、用意周到さは驚嘆に値する。
ただ、本のボリュームに対して「決して気づかれるな」という、同じ場面の繰り返しがあまりにも多くて少し飽きてくる。解説や自説の展開も多い。小説としてのテンポや流れは決して良いとは言えない。
しかしそれぞれの人物の個性や心情の移り変わりは鮮やかに魅力的に描き出されていて、強い印象を残してくれた。