【感想・ネタバレ】藻屑蟹のレビュー

あらすじ

一号機が爆発した。原発事故の模様をテレビで見ていた木島雄介は、これから何かが変わると確信する。だが待っていたのは何も変わらない毎日と、除染作業員、原発避難民たちが街に住み始めたことによる苛立ちだった。六年後、雄介は友人の誘いで除染作業員となることを決心。しかしそこで動く大金を目にし、いつしか雄介は……。満場一致にて受賞に至った第一回大藪春彦新人賞受賞作。

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Posted by ブクログ

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フィクション、ノンフィクションの点はおいておいても凄まじい物語だった。新しい視点や価値観を教えて貰えるような。単純な救いでは終わらないのも良かった。テーマは重いのにさくさく読めた。この作者さんの別の本も読みたい。

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2026年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

原発の除染作業員の経験がある赤松利市の大藪春彦新人賞受賞作。デビュー作なのに文章力、表現力がある。原発の廃炉作業にともなう利権に群がる人々の群像劇かと思ってよみすすめたら、最後は市民の矜持が勝つという話だった。
 長年、原発の作業に従事して被曝、そして自殺。
原発の除染に関わる利権を手にして、疑心暗鬼そして暴殺される。そして主人公は原発で家族を失ったキャバクラ嬢と第二の人生を生きようとする。
 ミステリー仕立ての話の展開も読ませる筋だった。

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2023年08月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東日本大震災と原発事故を題材に人々の分断が描かれていて、一筋縄では行かない本だった。
その地に住む者でないと分からないような心情も事情もあり、著者の除染作業員の経験がこの物語を生んだのだと思うが、知らない視点を与えられ驚くことが多かった。どれも他人事じゃない。圧倒される凄みがある。特にラストの迫力に息を呑んで、その余韻が残っている。

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2021年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

オーディブルで。福島の原発と除染に関連した話。
除染作業員の世界、金の流れ、震災後の歪み、そういう大きな圧には本物の迫力がある。

違和感があったのは、出来事そのものではなく、それに対する人物の心の動き方だ。人を殺すこと、友人が死ぬこと、大金を手にすること、自分が加害者になること、自分が被害者になること。それぞれの場面で、登場人物たちはちゃんと悩み、苦しんでいる。罪悪感も喪失感も書かれている。けれど、その苦しみがリアルに迫ってくるというより、「苦しんだ」と書かれているように感じた。感情は説明され、出来事は興味深いが、読者としてその苦しみの中に入る感じは薄かった。

特にマキという女性人物にはかなり違和感があった。マキはキャバ嬢で、語尾に「だっちゃ」とつける。これはぶりっ子ではなく石巻の訛りだという。東北随一の大学出身で、社会心理学を専攻していた。東日本大震災で家族三人を失い、遺体は見つからないまま弔慰金を申請した。そのことに罪悪感を抱いている。さらに、同じような経験をした人のカウンセリングをしており、相手が癒されるなら肉体関係を持つこともある。それによって自分の存在価値を確認しているが、その経験が彼女を病ませ、左腕には無数の自傷痕がある。

この人物造形は、「男性が望む女性像」が盛られすぎているように感じた。

狙ったのではない純粋な方言としての「だっちゃ」。東北随一の大学出身という頭の良さ。しかし現職はキャバ嬢で、知性そのものの描写は薄い。無償でカウンセリングを行う聖母性。カウンセリング相手に身体を許す女神性。心を病み、自傷痕があるという脆弱性とつけ入りやすさ。休日にもかかわらず白の上下の下着。そしてラストで「助けなさいよ」と言いながら服を脱ぐ。

これらが重なると、人物としてのマキというより、男性主人公の救済や欲望のために配置された「傷ついた女」のパッケージに見えてしまう。傷、知性、方言、性、聖母性、脆さ、白い下着。意味が盛られすぎている。

ラストの「さっさと助けなさいよ」は良かった。ここを、弱者権力への転換として読むなら面白い。つまり、マキがただ救われるべき女なのではなく、「私は傷ついている。だからあなたは私を助ける義務がある」と他者を縛る側に回る瞬間として読めるなら、再生に向かうことの難しさを突きつける、恐怖を伴った良いラストだと思う。

主人公には金の力に抗えず沈んでいく段があるので、マキは「弱さ」や「傷ついた立場」が持つ権力に沈んでいく人物として描けたのではないか。主人公は金に溺れる。マキは人を救いたいと思いながら、弱者であること、救われるべき存在であること、相手に罪悪感を抱かせることの心地よさに溺れていく。そうであれば、金と傷という二種類の権力が対比され、物語としてかなり面白くなったのではと思う。
「助けなさいよ」は、その可能性を持っている。しかし、そこに至るまでのマキの描写が、男性に都合のよい傷ついた女性像に寄りすぎているため、主体性の爆発というより唐突な演出に見えてしまった。

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2026年06月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者自らの福島原子力発電所事故の除染作業員としての体験から生まれた衝撃作。事故にまつわる闇をリアルに描いていて、まるで人扱いされない作業員たちの現実に触れられたのが本当に良かった。彼らの存在の上に成り立つ復興を、社会が見て見ぬふりをして働かせている歪んだ現実に胸が突かれる。1ヶ月で500万という大金を前に、自分なら正しい行いができるだろうかと考えさせられた。終わり方は突然な印象だが、社会の闇を剥き出しにする興味深い一冊。

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2026年06月17日

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