【感想・ネタバレ】日本統治下の朝鮮 統計と実証研究は何を語るかのレビュー

あらすじ

1910年から1945年まで、帝国日本の植民地となった朝鮮。その統治は、政治的には弾圧、経済的には搾取・貧困化という言葉で語られてきた。日本による統治に多くの問題があったことは確かである。だが、それは果たして「収奪」一色だったのか。その後の韓国の発展、北朝鮮の社会主義による国家建設と繋がりはないのか――。本書は、論点を経済に絞り、実証主義に徹し、日本統治時代の朝鮮の実態と変容を描く。

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Posted by ブクログ

2章最後コラム
朝鮮技術家名簿は当時朝鮮に存在した内地人・朝鮮人技術者のデータブックである。これによれば、技術者の総数はおよそ6700名にのぼりうち内地人が5700名、朝鮮人が1000名である。日本統治期、このように多数の内地人技術者が朝鮮に渡ったこと、同時に朝鮮人の技術者が育ちつつあったことは注目に値する。内地人技術者の専攻は農学が最多。

3章
身長には遺伝と生育環境が大きな影響を与える。
近代日本では、経済成長、とくに戦後の高度成長にともなって子どもの生育環境が改善した結果、平均身長が大きく伸びた。戦後韓国でも、身長の伸びが顕著である。逆に北朝鮮では身体矮小化が進行している。これは明らかに、同国で住民の栄養状態が悪化したことを示す。

5章
北朝鮮に多く残された遺産
鉄道総延長は人口および面積あたりともに北朝鮮が南朝鮮を上回った。
一人当たりの食料生産能力は、北がみなみを凌駕していた。
人的側面については南での連続性、北での非連続性が説かれる。南では親日派が戦後の政治、社会、経済各界で力をふるった。北では日本統治下の朝鮮人有力者層が徹底的に排除された。


あとがき
すぐれた経済学者は、歴史にくわしい。歴史を知ってこそ、専門領域の研究に厚みが出る。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

韓国とか北朝鮮とか岩波とか朝日みたいなイデオロギーを抜きに、日本帝国の朝鮮経営って実際どうだったのよ!?に答える良書。

てっきり、もっと持ち出しなのかと思ったが、そこまででは無かったのか。
(とはいえ、米軍の爆撃が無かったこともあり、南北朝鮮に残された生産設備、発電設備等々のインフラは巨額だよね)
ただし、移入制限の政治圧力で更なる増産計画にストップがかかる程度には、朝鮮での米の増産は成功していた。朝鮮総督府、産業の育成頑張ってたんだな。


しかし、想像以上に気合い入れて鉱工業開発が進んでいたんだなと。
まさか、独力で化学コンビナートを独自に発展させている方がいたとは思いませんでした。

「戦争が無ければ、戦争経済に取り込まれなければ、更に経済的な発展が出来たっぽいよなあ、これは」というロストフューチャーに触れることが出来ました。

ちと考えれば当たり前だと思うんだけど、こういった一般向けの新書に『北朝鮮も韓国も日本帝国から引き継いだ物は実際多々あるよね』って書くのは/出版するのは関係者大変だったんだろうなと。(タブーでは無くなっても、今度は『ヘイト』扱いされそうだしな。

この著者は『開発経済』の人なので、あとはソフト面(学校教育の普及、近代法の導入等々)の側面からの物が読めれば。(あるのかしら?

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2018年10月27日

Posted by ブクログ

一般に、政治的には弾圧、経済的には搾取・貧困化という言葉で語られてきた日本の朝鮮統治について、本当に「収奪」一色だったのかという問題意識から、経済の観点に絞り、統計データ等に基づく実証主義に徹し、日本統治時代の朝鮮の実態と変容を描いている。
結論として著者は、「総合的にみれば、日本は朝鮮を、比較的低コストで巧みに統治したといえよう。巧みに、というのは、治安の維持に成功するとともに経済成長(近代化と言い換えてもよい)を促進したからである」と述べるとともに、「1940年代に入ると、米国との戦争が状況を一変させた。日本は絶望的な総力戦に突入し、朝鮮を巻き込んだ。現代につながる日韓の歴史問題は(略)、多く、この時期に根源がある」と述べる。実証研究から浮かび上がるきわめて妥当な結論だと感じた。ただ、経済的に「巧みに」統治していたとしても、だから朝鮮に対する日本統治は「良かった」と結びつけるのは短絡であろう。その判断には、統治下の人々の意識も含めた政治的な観点からの分析も不可欠である。
巨大な産業遺産だけでなく、戦時期の全体主義や統制経済といったイデオロギー面も含め、帝国日本の遺産をより多く継承したのは北朝鮮であるという指摘もとても興味深かった。

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2018年09月17日

Posted by ブクログ

朝鮮半島に対する日本による統治の実態を具体的数字を追うことによって解明しようとする試み。

特に北に埋蔵される鉱物資源を求めて、膨大な投資が民間からされていることがわかる。

教育の充実なども含めて、当時の大日本帝国の国力増強を意図したものだろうが、目的はともかく、日本統治時代のこうした事柄が解放独立以降の(特に南における)半島の発展に寄与していることに間違いはなかろう。

我が国のかかる投下資本や内地人の財産はすべて没収された上に、莫大な慰謝料を払わされたのは、不幸な結果に終わった結婚のようなものと思えばわからなくはないが、その後何十年たってもあることないことを言われ、嫌がらせをされ、謝罪を求められ、金銭をせびられるのはどうしたことか。

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2018年08月20日

Posted by ブクログ

自分も山辺健太郎の岩波新書を読んで感銘を受けた一人なのだが、今振り返ってみると、内容など二の次で、山辺が小卒ながら、史料を蒐集し研究者となったことに瞠目したのかもしれない。労働運動で戦時中徳田球一や金天海などと共に獄中にあり、山辺は金の介抱役で、金が痔か何かで尻を拭いてやったが、徳球はどんな食い物でも腹を壊すことがなく、「徳田天皇はクソまで違う」というフレーズが妙に記憶に残っている。山辺と金天海で検索したら統一教会のページが出てきたが、今となってみれば、何てこたない日本共産党の伝説である。岩波が中公に対する再反論本を出すことはなかろうが、日本統治下朝鮮の伝説も日本共産党を始めとした日本の左翼が創り出したものあるのだが、統一教会がそれを利用していることからも分かる通り、歴代反共政権も今の従北政権も根っこの民族主義は同じもの。こうした反証を行う研究者は「極右」とされるが、「良心的日本人」の党派性が問題にされることはない。

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2018年12月31日

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