【感想・ネタバレ】メタル脳 天才は残酷な音楽を好むのレビュー

あらすじ

サイコパスからいじめ、不倫まで、人間社会のさまざまな事象を読み解いてきた脳科学者・中野信子が次に選んだテーマ。それはヘヴィメタルです。重く激しいサウンドとダークな世界観で熱狂的なファンを生む一方、その音楽性やスタイルゆえに世間から疎まれがちなヘヴィメタル。しかし様々な研究によって、このサウンドが持つ効能やファンの特性が明らかになった結果、世界中の科学者からポジティブな評価を得るに至っています。「ヘヴィメタル」その特徴を本誌解釈で端的に表すと「天才が好み、天才を育む音楽」であるということ。良識的な人々が眉をひそめるヘヴィメタルには、認知機能や知的好奇心、ストレス耐性の向上など、知育に欠かせない数々の効果が認められるのです。自らも幼少の頃からヘヴィメタルに親しんできた中野が、これらのユニークな先行研究を紹介すると共に自身の経験も織り交ぜつつ「天才のための音楽」のメカニズムを解説します。脳科学・心理学的な縦横無尽のアプローチを重ねた末、中野の考察はヘヴィメタルが果たすであろう社会的役割にも到達します。世の欺瞞や偽善を鋭く訴える一方、怒りや絶望といったネガティブな感情を緩和させ、正義の感覚を醸成させるこの音楽は、現代社会における自立した個人のあり方を促すのではないか。それは、単なる反骨とも反社会とも異なる「非社会」というスタンスです。各国でポピュリズムが台頭し、民主主義の行く末も危ぶまれている昨今、閉塞した世界を変える「強い個」を生み出すのがヘヴィメタルやヘヴィメタル的スタンスなのかもしれません。予言にも似た中野の指摘は、既成概念を打ち崩す驚きを与えてくれることでしょう。次代を担う若者へ、そして彼らを育てる大人たちへ、今こそ声を大にして伝えたい。
「モーツァルトよりメタリカを聴け!」

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mac

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欺瞞に満ちた社会に対して

・悲しい時には悲しい音楽を聴くとよい。「悲しいのは自分だけではない」と無意識のうちに感じるため、
少しづつ悲しみが癒されていき、やがて立ち直る事が出来る。
泣くという行為には浄化作用がある。本当に辛い時は言語化も出来ず、意識も出来ない。
ひどい時には蕁麻疹や円形脱毛症などの症状として現れる。

しっかり意識して泣けているのは、癒されている途中であり、精神状態としてはとても望ましい状態だ。
・子供たちは「人を殺してはいけない」と教わって育つ。
だが現実にはそうなっていない。戦争に行ったら人を殺せと命令される。実際に人を殺している大人たちはたくさんいる。
それで平気な顔をしてのうのうと生きている者も存在する。歴史上そうしたことは山ほど行われてきて、今も行われている。
それなのに、なぜ自分たちは真実を教わることなく、それを否定することだけを教えられているのか?
「それは欺瞞でないか?」。そう感じながら育つ子供たちはとても多いのだ。
・人は人を殺すように出来ている。そうでなければ私たちはここまで生き残ってこられなかった。
これまで戦闘行為や戦争は数え切れないほど行われてきたし、日常的に殺人行為も起こる現実の中で、
それに目をつぶって「人を殺してはいけない」とあえて言わなければならないほど、
私たちは人を殺してきた事実を知るべきなのだ。
そのためには、やはり「人を殺してはいけない」と繰り返し言い続けるしかないが、
一方で公共の場では「人は人を殺すように出来ている」といった主張は排除される。
・条件さえ整えば、時と場合によって誰でも簡単に人を殺してしまうのが、人間の厳然たる本質である。
「自分もやっていたかもしれない」と思うことで初めて、人間がこれまで行ってきたことや、
社会で今行われている事に対して、より真っ当な理解を深めることが出来る。
そして、より自分の行動を深く見つめて、律するべきところは律しようと思うきっかけになるのではないだろうか。
・欺瞞に満ちた社会に対して、暴力に拠らずに音楽の力で強烈な一撃をくらわすこと、それこそがメタルの存在意義なのだ。

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2023年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

メタラーならなるほどと思ったり、とても共感できることが脳科学や心理学の見地から書かれている。専門的な言葉も多々出てくるが、それをわかりやすく置き換えたり具体例を示したりしながら説明してくれているので、読みやすい。
メタルなんて…というステレオタイプな反応をする人たちは、この本の言葉を借りるなら、脳が未熟な「子ども脳」であって、自分達のことをメタ認知できない人たちなのだという。
未熟な子ども脳の「大人」が声高に叫ぶせいで、世の中があらぬ方向に流されてしまうという危惧もある。
メタルという切り口ながら、世界の趨勢にまで言及されているのはとても面白い。

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2022年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「天才は残酷な音楽を好む」/著者中野信子は、残酷な音楽であるメヴィーメタルを好む/だから脳科学者中野信子は天才の一人である、、といった自惚れた本ではない(笑)。

前半、自身の性格とか辛かった過去を赤裸々に告白しながら、メタルという音楽によって救われてきた体験を語り、メタルという音楽の影響力を自身の体験を通じて語る。

この時点では、単なる著者のこだわりからくるコジツケなのか、脳科学の分析に基づく客観的発言なのかが不明であった。

ただ、著者が述べるメタルファンの特性のとらえ方は、自分(メタルの一世代前のハードロック世代ではあるものの)に当てはめてみてもかなり共感できる部分があったのは事実だ。

さて、後半に入ると、徐々に脳科学者の本領を発揮してくる。

著者自身、過去に「脳と音楽」についての研究を真剣に行っており、本書についてはずっと書きたいと思っていたテーマだったようだ。

大学や学者の「音楽のジャンルと個人のパーソナリティ」の関係性の調査結果などをもとに、クラシックのファンとメタルのファンの共通する特性を明かしたり、またはメタルファン独自の特性を明かしたり、脳の部位の働きとパーソナリティとの関係性を述べたりしている。

さらには、世界中で台頭しつつあるポピュリズム(=端的に言えば付和雷同的な風潮)を著者は、民主主義崩壊の危機と懸念しており、それにストップをかけられるのは、大衆迎合を嫌うメタル的な思考であるとまで論旨を広げている。

本旨の受け取り方は、読者様々だろうが、世間にウザい音楽と認識される傾向の強いメタルこそが、実は若年期の傷つきやすい心をケアするものであり、嘘を許せない正義感の強いものが好む音楽であり、これからも期待されるべきジャンルなのだというビュアな訴えに好感をもって読むことができた。

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2019年05月12日

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