【感想・ネタバレ】晴天の迷いクジラ(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた――。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。山田風太郎賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『晴天の迷いクジラ』

というタイトルに驚いた。
迷いのクジラでもなければ、晴天に迷ったクジラ、でもない。

どういうこと??
そう思いながらページをめくっていきました。

最初は、ChatGPTに聞いた。
持っている積読をいくつかピックアップして、この何冊かの中で、自分が今読むべき本はどれか、と尋ねた。
その問いを尋ねた時の私はびっくりするくらい弱ってた。

元気が取り柄なのに、どう頑張っても元気ではいられない。
自分の意見は決まっていたはずなのに、外から入ってくる声に耳を傾けていたら、自分の気持ちがわからなくなってしまった。
自分の思うように生きれればいいと思ったのに、それすら出来なくなってしまった。
せっかく決めた、自分の生き方すら見失って、息が苦しくなった。


そんな私だからなのだろうか、この本をおすすめされたのは。


暗闇に沈んだ3人が、1匹のクジラに会いに行く物語。

それぞれが、深い闇を抱えながら生きている。
他の人の闇って、普通に生きてたらどう頑張っても見ることはできない。
みんな、他の人には見せないように、必死に自分の中に抱え込んでその闇と向き合うからだ。
それでもなんとか自分の限界まで突き進む。
でも、自分が限界だと思った時には、どうに限界を超えていて、立ち直ることすら立て直すことすら難しくなっている。

それでも、そんな3人が出会う。
出会って親子を演じて、どこか自分が演じきれなかったものに思いを馳せて、考えて、考える。
兄弟の気持ちがわからなかった人が、傷を負った兄弟をもって、子供を捨てた母親が自殺から救った子を育てようとする。
そんな中で、子は母親とは一緒に暮らせないことに気づく。


クジラの気持ちを分かろうなんて烏滸がましいと、そういう話が出る場面があった。
それは当然だと思う。
それに、人の気持ちは人にも理解できないと私は思う。


理解してくれる人じゃなくて、理解しようとしてくれる人の存在が大きい。
自分の悲鳴に耳を傾けてくれる人、自分の悩みを自分と同じ視点で考えてくれる人。
完全に理解し合える人がいないからこそ、寄り添ってくれる人に、拠り所を求める。
それが人間だなと思う。

私もそうだった。理解しようとしてくれる人に何度も救われてきたから。だからこの本を読む意味があったんだろう。

それに、あのくじらは見失ってしまった自分自身だったのだ。
酷く傷つきながらも、泳ぎ出していく姿に、各々が身を打たれる。
あのクジラは、何も言わなかった。
それでも、もう一度泳ぎ出してもいいんだと思わせてくれた。

もうひとつ。
この本の日本語が、私はすごく好きだった。
私は日常の景色を言葉に変える能力は人並みにあるかもしれないが、その言葉から情景を想像する想像力に欠けていた。
だけど、この本の日本語はすっと私に馴染んで、目の前に情景が浮かんだ。
いつまでも、いつまでも読んでいたいと思った。

だからこそ、他の人におすすめしたいなと思う。


人間誰しも自分の人生に疲れてしまう日がある。
周りの人の声に埋もれてしまう日もある。
自分の答えを見失ってしまう日もある。
そんなときは、クジラを見て欲しい。

クジラを救いたいと思った頃には、少しだけ自分も前を向けていた。

0
2026年07月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

めちゃくちゃ面白かった。
4デザイン会社社長野乃花、デザイナー由人、高校生正子がそれぞれの事情の中で死を考える。
死ぬ前に一緒に座礁したクジラを見に行くことになり、その中で生きる事・死ぬことへの考えが変わっていく話。

正子の絶望がリアルで苦しくなった。
母に自分のことは伝わらない、でも母の事は理解しないといけない。好きだから切り捨てることもできない。これは地獄だと思った。

おばあちゃんの、死んだ大切の人が肩に乗っていると思ってその人達のために美味しいものを食べたり、楽しい事をしたりするといいっていう考えが良いなと思った。
大切な人を失ったりすると、悲しいし一つずつなくなっていく気がする。でも’大切だ’と思えた人やモノがいたことは素敵なことだし、もしそれがなくなったとしてもその気持ちは持ってていいと思う。その人やモノのためにもっと人生を楽しもうという考えは取り入れたいなと思った。

動物界がそうであるかのように、生きるとか死ぬとか第3者からするとどうでもいいことなんだよね。
死のうが生きようが関係ない。
助けるということも自己満足。
だったら、自分のために生きようと思えた。

幸せな時にもう1度読みたいなと思った。

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2025年05月03日

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ネタバレ

忍には生きて欲しかった。なんであっさり死んでしまうの?正子のためにも、双子の海老くんのためにも生きていて欲しかった。あんないい子があっさり死ぬなんてつらすぎる。
さっきまでぶーたれてた忍なのに、次のシーンでは、告別式のシーン。
若いひとが亡くなるのはつらい。正子のほとんど初めてのともだちだったのに。
忍、という癌という設定の高校生の少女にこんなに肩入れするのがなぜなのかわからない。自分に同じ年頃の娘がいるからなのか、病気で生きたいと必死の子どもが死ぬのがつらいのかわからない。
忍、という少女の死が読んでていちばんつらかった。そして、この本、まだ最後まで読んでいない。

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2026年06月02日

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ネタバレ

日常に疲れ、心が重たくなった人に手渡せる本として読みたい一冊だった。

死を考える3人の過去を読むのは結構しんどかった。
「死にたい」と思っている人に「死ぬな」ということは簡単だけど、何の解決にもなってない。そんな思いを抱えている人にはぜひ読んでほしいと思った。

「生きることがしんどい」と感じる人たちの物語でありながら、ただ暗いだけではなく、それぞれが自分のすべきことを見つけていく過程に静かな希望があった。

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2026年05月28日

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ネタバレ

 『ソラナックスルボックス』では、15歳で子供を産んだ由人の妹の姿を、物語でよくある破滅した家庭の一つだと見ていた。由人、野乃花、そして正子がそれぞれの生活に苦しみ、沖合に迷い込んで自らの死を待つクジラに各々を重ね合わせる中、クジラがいる町の役員・雅晴の自殺した妹を思った、「生きてるだけで良かった」と言う言葉に出会った。それで、私は、家庭を壊した由人の妹は、病んで自殺するよりよっぽど健全だと思った。
 この物語を通して、私は「生」と言うものがいかに貴いものであるかを痛感した。生きてさえいれば、若く身籠っても親の束縛に反してもなんでもいいのだ。

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2025年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

不器用ながらも一生懸命に生きて、過ちを犯して、傷つけられて、傷つけた、察するに余りあるほどの3人(本当はおばあちゃんと雅治の2人も入れたい)が出会い迷いクジラを見に行く。
ク、クジラ、、?!?!

なんとも意表をつく展開で唯一無二のストーリー。そこをすんなり受け入れてしまえるのは、全てにおいてリアリティがすごいからだと思う。全ての登場人物が本当に実在するかのような、温度と痛みを抱えている。

もうダメかと思ったクジラが、もがきながらもう一度海へ帰っていく。その後、どれだけ生きるか、そんなことは分からない。クジラを人間と同じように考えてはいけないという、身近にいたらめんどくさそうなクジラ博士の言葉が真理である気がして胸に残った、けど。それでも、人間だから人間としての心でクジラを見た時に、やっぱり希望をもらうんだよね。重ねてしまっていいじゃない。クジラに勇気をもらった人たちが少し日が差し始めた明日へと進んでいく。それぞれにまだまだ課題は山積みのままで。なんなら何も現状は変わっていないのもしれないけど、それでも一つ大切なものを握りしめた3人が!さわやかな読後感。後書きも素晴らしかったです。

一つお願いが。↓
若本先生に連絡してあげてほしい・・・今もきっと心配しているだろうから!

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2024年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

Ⅰ.ソラナックスルボックス
田宮由人
北関東の農家の次男として生まれる。東京の三年生のデザインの専門学校に進む。デザイン会社に勤める。失恋と激務でうつを発症した。

溝口
由人の会社の同僚。同じデザイン学校を出た先輩。

ミカ
輸入物の子ども服や雑貨の店で働く。専門学校の一つ上の科に通っていた。由人と付き合っていたが、浮気しておるところを由人に見られた。

由人の二歳年上の兄。

由人の二歳年下の妹。

亜優太
由人の妹が中学三年で産んだ男の子。

中島野乃花
由との会社の社長。年齢不詳。潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。

畠
会社でいちばん年長の男性。経理。

長谷川
いちばん年長のデザイナー。

心療内科の医師


Ⅱ.表現型の可塑性
野々花

野々花の父
漁師。

野々花の母
缶詰工場で働く。

若本
野々花の担任で美術部の顧問。

横川英男
若本の大学の同級生。

横川英則
絵画教室の先生。若本の幼なじみで大学の同級生の息子。

晴菜
野々花の娘。

島田

由人


Ⅲ.ソーダアイスの夏休み
篠田正子
小学校入学から母に記録をつけるように言われる。

正子の父
東京に本社のある文房具メーカーの営業マン。

正子の母
最初の子を七ヶ月で亡くし、正子を大切に育てようとしている。

風花
正子と同じマンションに住む。

海老原薫
バス停で正子に水色の棒アイスを差し出した。

忍
海老原の双子の姉。


Ⅳ.迷い鯨のいる夕景
由人

野々花

正子

前園
水産課クジラ守り隊隊長。

クジラ博士
ブルーのつなぎを着た男性。

雅晴
クジラ守り隊。

ばあちゃん
雅晴のばあちゃん。

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2024年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2013年(第6回)。6位。
いろんな目にあって、迷ってる3人と迷ったクジラの話。
人間がクジラを救うとか、おこがましいね。すべて自然の摂理。
って、由人くん、きもい。ミカかわいそうw
ののか、会社がんばれ
まさこ、親と離れるは正解

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2024年09月02日

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