あらすじ
デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた――。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。山田風太郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。
4デザイン会社社長野乃花、デザイナー由人、高校生正子がそれぞれの事情の中で死を考える。
死ぬ前に一緒に座礁したクジラを見に行くことになり、その中で生きる事・死ぬことへの考えが変わっていく話。
正子の絶望がリアルで苦しくなった。
母に自分のことは伝わらない、でも母の事は理解しないといけない。好きだから切り捨てることもできない。これは地獄だと思った。
おばあちゃんの、死んだ大切の人が肩に乗っていると思ってその人達のために美味しいものを食べたり、楽しい事をしたりするといいっていう考えが良いなと思った。
大切な人を失ったりすると、悲しいし一つずつなくなっていく気がする。でも’大切だ’と思えた人やモノがいたことは素敵なことだし、もしそれがなくなったとしてもその気持ちは持ってていいと思う。その人やモノのためにもっと人生を楽しもうという考えは取り入れたいなと思った。
動物界がそうであるかのように、生きるとか死ぬとか第3者からするとどうでもいいことなんだよね。
死のうが生きようが関係ない。
助けるということも自己満足。
だったら、自分のために生きようと思えた。
幸せな時にもう1度読みたいなと思った。
Posted by ブクログ
『ソラナックスルボックス』では、15歳で子供を産んだ由人の妹の姿を、物語でよくある破滅した家庭の一つだと見ていた。由人、野乃花、そして正子がそれぞれの生活に苦しみ、沖合に迷い込んで自らの死を待つクジラに各々を重ね合わせる中、クジラがいる町の役員・雅晴の自殺した妹を思った、「生きてるだけで良かった」と言う言葉に出会った。それで、私は、家庭を壊した由人の妹は、病んで自殺するよりよっぽど健全だと思った。
この物語を通して、私は「生」と言うものがいかに貴いものであるかを痛感した。生きてさえいれば、若く身籠っても親の束縛に反してもなんでもいいのだ。
Posted by ブクログ
不器用ながらも一生懸命に生きて、過ちを犯して、傷つけられて、傷つけた、察するに余りあるほどの3人(本当はおばあちゃんと雅治の2人も入れたい)が出会い迷いクジラを見に行く。
ク、クジラ、、?!?!
なんとも意表をつく展開で唯一無二のストーリー。そこをすんなり受け入れてしまえるのは、全てにおいてリアリティがすごいからだと思う。全ての登場人物が本当に実在するかのような、温度と痛みを抱えている。
もうダメかと思ったクジラが、もがきながらもう一度海へ帰っていく。その後、どれだけ生きるか、そんなことは分からない。クジラを人間と同じように考えてはいけないという、身近にいたらめんどくさそうなクジラ博士の言葉が真理である気がして胸に残った、けど。それでも、人間だから人間としての心でクジラを見た時に、やっぱり希望をもらうんだよね。重ねてしまっていいじゃない。クジラに勇気をもらった人たちが少し日が差し始めた明日へと進んでいく。それぞれにまだまだ課題は山積みのままで。なんなら何も現状は変わっていないのもしれないけど、それでも一つ大切なものを握りしめた3人が!さわやかな読後感。後書きも素晴らしかったです。
一つお願いが。↓
若本先生に連絡してあげてほしい・・・今もきっと心配しているだろうから!
Posted by ブクログ
人は人生の長短に関わらず生きているのが嫌になる瞬間がある。エアポケットのように唐突にはまってしまっった、社長と従業員、道端で拾った女子高生。この3人の再生の物語。家族というのは期待や心配という鎖で縛ってみたり、血の繋がりしかない放棄や放置してみたりと中々厄介な存在ではある。理解して欲しい、理解したい。だけど、理解なんてできないのは家族で、人生の迷路に迷い込んだ3人の出口はどこにある。「あいつもなんか、迷っちゃってんですかね」
Posted by ブクログ
Ⅰ.ソラナックスルボックス
田宮由人
北関東の農家の次男として生まれる。東京の三年生のデザインの専門学校に進む。デザイン会社に勤める。失恋と激務でうつを発症した。
溝口
由人の会社の同僚。同じデザイン学校を出た先輩。
ミカ
輸入物の子ども服や雑貨の店で働く。専門学校の一つ上の科に通っていた。由人と付き合っていたが、浮気しておるところを由人に見られた。
由人の二歳年上の兄。
由人の二歳年下の妹。
亜優太
由人の妹が中学三年で産んだ男の子。
中島野乃花
由との会社の社長。年齢不詳。潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。
畠
会社でいちばん年長の男性。経理。
長谷川
いちばん年長のデザイナー。
心療内科の医師
Ⅱ.表現型の可塑性
野々花
野々花の父
漁師。
野々花の母
缶詰工場で働く。
若本
野々花の担任で美術部の顧問。
横川英男
若本の大学の同級生。
横川英則
絵画教室の先生。若本の幼なじみで大学の同級生の息子。
晴菜
野々花の娘。
島田
由人
Ⅲ.ソーダアイスの夏休み
篠田正子
小学校入学から母に記録をつけるように言われる。
正子の父
東京に本社のある文房具メーカーの営業マン。
正子の母
最初の子を七ヶ月で亡くし、正子を大切に育てようとしている。
風花
正子と同じマンションに住む。
海老原薫
バス停で正子に水色の棒アイスを差し出した。
忍
海老原の双子の姉。
Ⅳ.迷い鯨のいる夕景
由人
野々花
正子
前園
水産課クジラ守り隊隊長。
クジラ博士
ブルーのつなぎを着た男性。
雅晴
クジラ守り隊。
ばあちゃん
雅晴のばあちゃん。