【感想・ネタバレ】死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発のレビュー

あらすじ

2011年3月、日本は「死の淵」に立った。福島県浜通りを襲った大津波は、福島第一原発の原子炉を暴走させた。日本が「三分割」されるという中で、使命感と郷土愛に貫かれて壮絶な闘いを展開した男たちがいた。

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Posted by ブクログ

筆者の意見や何かしらの圧力から事実を都合のいいように扱うものが多い中で、この本では事実があらゆる視点で描かれている。その人物たちの思い、言葉、見解の違い。どれかを否定するわけでもなく事実に基づいて書かれている点がリアル。

爆発をした。放射能が大量に排出された。現在も避難生活が続く人もいる。
被害をそれ以上に大きくしないために危険な現場にとどまって想像できない不安と恐怖を麻痺させて戦い続けてくれた姿を忘れてはいけないと改めて感じた。

当たり前のように語っていた、こういう職についたからには仕事をやるべきことを優先させるという姿から彼らの責任感の強さと勇敢さに震わされる。
繰り返される地震や津波に耐えながら命をかけ続けた存在に感謝したい。

一方でそういった現場の意見を聞き入れず、現場をさらに混乱させるような体制をとる、冷静さを失っている人物たちは指揮に関わらないでほしいと心から思う。

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2025年08月17日

Posted by ブクログ

ちょうどこの3.11のタイミングで、この本と出合いました。
当時の出来事が思い起こされます。
地震発生。避難。会社から歩いて帰宅。
TVで中継されていた福島原発の様子。
そして爆発。
そんな中、現場で対応し続けた人たち。

ドキュメンタリながらも、そのリーダビリティも素晴らしく、あれよあれよと読み進めることができます。
あの時、福島では何が起こっていたのか。
そこにいた人たちの戦い。思い。
理解することが出来ました。
そして、胸が熱くなりました。
後半は電車の中では読んではいけません!

当時も思っていましたが、本書を読んで思うのは、やはり政府のダメダメさ。菅直人の行動、無能さ。
しかし、本書では菅直人からもコメントを取っていて、菅直人の立場からのメッセージも述べられています。
自分にとっては、「だから何?」ってぐらいですが..

ちょうど、本書を読み終わった翌日が3月11日でした。
14:46に黙祷を捧げましたが、当時の事、そして、本書の事が思い出され、胸が熱くなりました。

命がけで東日本を救ってくれた方々に感謝!
日本人必読の書です。

2025.3.16
アマプラでFukushima50を見ました!
涙なくては見れませんでした。
映画含めて必読、必見です

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2025年03月16日

Posted by ブクログ

福島原発事故の危機を救った人達と吉田所長の足を引っ張った人達の駆け引きがドラマが描かれている。本当に命懸けで闘っている現場と保身のために大義名分に走る人達の縮図になっている。ギリギリのところで大爆発による放射能汚染にならずに良かった。吉田所長は、命を削って日本を救ってくれた。

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2025年02月15日

Posted by ブクログ

津波と原発事故という圧倒的な『死』と戦い続けた吉田昌郎氏と現場のスタッフの壮絶な記録です。読んでいて圧倒されてしまいました。吉田氏と彼の下でともに戦った人間たちの功績があったからこそ、現在があります。




福島原発第一発電所が「3・11」の際にメルトダウンを起こした際、現場にいた当事者たちはあの時、何が起き、何を思い、人々はどう闘ったのか。その生々しいまでの記録です。読み終えた後に、僕は思わずため息をついてしまいました。ここに描かれているのが圧倒的な「死」に果敢に立ち向かっていく所長(当時)の吉田昌郎氏をはじめとする人たちの記録です。

現場の総指揮を取った吉田昌郎氏は、当時の様子を1年4カ月をへて筆者に語ったのだそうです。それは吉田氏自らが病と壮絶な闘いをしている病床でのことでした。それを皮切りに、今まで口をつぐんでいた現場の当事者たちが堰を切ったように事故当時の様子を語り始めたのだそうです。

吉田氏の頭によぎった「最悪の結果」とは「チェルノブイリ×10」。想像だに出来ないような被害をもたらさないために全電源喪失という過酷な状況下で暴走する原子炉を必死になって止めようとする現場の奮闘。

放射能という目には見えないものが渦巻く原子炉の中に男たちを突入させた動機は「郷土愛」と「使命感」だったのだそうです。後に「フクシマ・フィフティ」と呼ばれた人々のことなのだそうです。

吉田氏は本書によると、東工大の大学院を出て東電に入社するという生粋の「理系畑」の職業人生を歩む一方で、宗教や哲学にも明るく、独自の「死生観」を持った方なのだそうです。吉田氏はインタビューの中で
『こいつなら一緒に死んでくれる。こいつも一緒に死んでくれるだろう、と。』
幾度となく『死』という言葉が彼の口をついて出てきたのだそうです。生か、死か。ギリギリの状況下で大きな決断を何度も下さなければならなかった男の姿がここにはありました。

その一方で首相官邸や東電の本店ビルの混乱した様子や、菅直人首相(当時)の暴走振りによって現場がかき回される様子も余すところなく描き出されていて、当時の緊迫した様子が思い出されました。

先の見えない原発事故の収束ですが、吉田昌郎という一人の男と、彼とともに『使命』に賭けた男たちの姿は、心に留めておきたいと考えております。

※追記
本書は2016年10月25日、KADOKAWAより『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発 (角川文庫)』として文庫化されました。また、本書の主人公であり、福島第一原子力発電所事故の収束作業を指揮されていた吉田昌郎氏は2013年7月9日、食道癌のため慶應義塾大学病院にて逝去されました。享年58歳。謹んで、この場をお借りしてご冥福をお祈りいたします。合掌

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2024年12月21日

Posted by ブクログ

東日本大地震初期の段階での福島第一原発で働く人たちの、凄まじい姿に感動しました。
決死の活動を行う男たちを描いています。
そして初動の措置が素晴らしい。原発の対応に携わった方々を称えたいと思います。
また、当時の首相や政府の無能さをよく描いておりますね。

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2024年12月18日

Posted by ブクログ

あの日、あの時、あの場所で何が起きていたのか。原子力の賛否に関わらず、知って欲しい。もし自分がそこに居たら…。多くの事を考えさせられます。

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2024年03月27日

Posted by ブクログ

3.11直後の凄絶な様子が冷静に綴られた一冊。
現場第一線で決死の覚悟で復旧に携わった人たちの証言は貴重だ。特に、吉田所長の証言はこの時にしか取れなかったものだけに、より貴重で重い。
過剰に科学的、工学的、感情的、政治的にならない絶妙な内容となっていて、また人に焦点を当てて描かれているので、読みやすくて緊張感の絶えない一冊でした。

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2023年09月21日

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ドラマを見て、読みました。
門田氏作は、初めてではないが原発を、難しいものだと、無理かな?と、感じて読んでいなかった。
でも、ドラマを見ていなくても分かりやすくて、もっと早く読むべきだったな!
で、実際当時此の様な事になっていた事に、驚愕!
津波で流される家々の映像と、地震速報と、揺れ。
自分自身に起きている、わかる事にしか、思いを寄せる事が出来ていなかった。
本当に本当に、原発に携わっていた方々に、頭が下がります。

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2023年09月08日

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「THE Days」を見て、もっと詳しく知りたいと思って読む。福島でこんな状況になっていることを当時はまったく知らず。自分の無知さに愕然とする。

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2023年08月08日

Posted by ブクログ

ネトフリでみたドラマから。これが全てではないのは当然であるけれど、それでもあの日何が起きたのかを知っておくきっかけになった。読んでよかった。

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2023年06月22日

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 だいぶ前に購入して積読に成っていた。
 地震のときは茨城県日立市で仕事をしていた。経験したことのない
大きな揺れに恐怖を感じた。
 しばらく電気が来なかったので、原発事故の事は停電が復旧して
ニュースで初めて知った。
 原子炉建屋が爆発したことをニュースで見て、やばいことに成った
と感じてはいたが、事態の深刻さは分かっていなかった。
 まさか、この時、福島原発はメルトダウンしていたとは誰も気づいて
いなかったと、思う。
 本書で吉田昌郎さんが言っている、チェルノブイリ✕10倍の危機が迫って
いたとは、一般人は誰も思っていなかっただろう。
 今、想えば福島原発の崩壊により、東日本全体の原発が連鎖崩壊する危機
を免れて、本当に良かったと、しみじみ思う。
 本書を読んでいて、原発事故に当たった作業員の人達の想い、家族の
想いを読み、胸が熱くなった。
 あれから10年ちょっと経ったいま、岸田首相が原発の再稼働・新設など
を言い出した。
 信じられない……。廃炉の道筋も無いまま、将来の世代へ、負の遺産を
増やし続けて、平気なのか?
 あるいは、隣国の某国から原発へ、ミサイルを打ち込まれたら……。
 自然災害の観点から見ると、東北大地震よりもケタ違いの南海トラフ
巨大地震がいつ起きても、おかしくないと言われる中、原発は本当に
大丈夫なのか?
 日本の原発崩壊連鎖で、北半球は壊滅するという話が出ている。
北半球の壊滅。日本民族は諸外国へ散り散りバラバラ。諸外国から日本人は
白い目で見られ、残った日本人は責任の取りようも無く、かつてのユダヤ人
のように、放浪の民族と化す。そんな、日本の未来はどうしても避けなければ
ならない。
 頼りない2世3世の政治家が多い中で、日本は本当に大丈夫なのか?
政治家のみなさんには、もっとしっかりしてもらいたいものだ。

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2023年05月05日

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 こんなに闘ってくれていたなんて…

 東日本大震災の時、私は中学2年生だった。
 上履きのまま何も持たずに下校したのを覚えてる。テレビに映る津波のニュースもコンビナート火災もどれも現実味が無かった。
 正直、原発事故のことは記憶にない。
 だがその後の、住民避難や風評被害のことは覚えている。福島で何が起こっているのか全く理解できなかった。

 この本を通して、大切なことを知ることができた。この本を知るきっかけになった映画Fukushima50にも感謝したい。

ありがとう闘ってくれて。
ありがとう伝えてくれて。
私たちは第二、第三の復興を託されたのだ。

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2023年03月24日

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何度も泣きそうになって最後には涙がでた。
震災について私は何も知らなかった、こんなことが起きてるなんてと思った
命を懸けてたたかう姿を見て、人の命は何よりも大切なものだと思っていたけれど、命をうわまわることがあるのかもしれないと、はじめて感じた。
自分の生き方について考えさせられた

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2022年09月08日

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あの当時、自分の事だけで精一杯だった。
何も出来ず、ただ流れる映像を見やる毎日。
建屋が水素爆発した時も、爆発したかくらいで、これからどうやって生活していくかしか考えられなかった。
原発、放射能汚染、言葉しか分からず、どれほど危険なことか想像だにしなかった。
今になり、ある程度の知識と経験が重なるにつれ、恐怖に包まれる。
極限の中に身を置きながら、行動していた方達。
一つ一つの言葉に重みを感じます。
普段読書しながら、うるっとくることはあっても、
水滴が頬を濡らすことはありません。
でも、この本で、頬は濡れました。
胸が、熱くなりました。

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2022年09月07日

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3.11であった原発事故のこと、この本を読む前は恥ずかしながらテレビで見る情報くらいしか知りませんでした。本を読みあの日何があったか、どれだけたくさんの人が尽力したかを知ることができた。吉田さんを始めたくさんの人にインタビューをしたからここまでリアルになったのだと思う。しかし、今もまだ事故は収束していない。未だ尽力している方がいる事を忘れずにいたい。

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2021年10月02日

Posted by ブクログ

二号機のサブチャン圧力がゼロになったこと、何が起こって何故鎮静化できたのか?自衛隊ヘリによる水投下の話がやや唐突な気がする。これらを除いて非常にわかりやすく、そして読みやすい。感動できます。

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2021年09月15日

ネタバレ 購入済み

正しく「反省」「学習」する事。

著者のあとがきにも有りましたが、「3・11」の悲劇を、只管に悲しんだり嘆いたり、悪者探しする事だけではなく、
「二度と同じことを繰り返さない為に、現実的に何が必要か、何を準備すべきなのか」を、冷静且つ実務的に事態を改善しなければ、いつか又同じことの繰り返しが起きてしまう可能性が有ること、この点が一番恐ろしいと思うのです。どれだけ「反省」して「お詫び」しても、その後に「学び」が残らなければ意味が無いのです。

電力会社は、政府は、メディアは、そして私達国民全体は、「喉元過ぎて熱さ忘れる」雰囲気に成っていないと言い切れるのでしょうか?!

今現在も、日本の好きな場所へ向けてミサイルを発射出来、甚大な被害を及ぼすことの出来る国家が普通に存在しています。当然自衛隊は対応しますが、核や生物化学兵器を弾頭としたミサイルの場合、どの時点で撃ち落とせたとしても国内に少なくない被害を被るのは、全く否定しようのない事実です。
著者同様、「自然災害」と「テロ」、これらに対して私たち日本人はあまりにも暢気過ぎるのではないでしょうか。

イデオロギーで反原発を騒いでいる方々もそうですが、例え今直ぐ廃炉しても使用済み核燃料の問題は未来永劫残るし、現在原発を停めている分の「代替」をしている火力発電は、更なる大気汚染を誘発するだけであるし、「環境に優しい代替可能エネルギー」とやらにはコストも危険性も非効率性も付いて回ると云う事実、等をもっと冷静且つ現実的に考えていただきたいです。

資源に乏しく、人口も減っていくわが国が経済力を維持する為に、原発は急に無くせるモノではない事も、感情論等を抜きにして考えるべき問題だと思うのです。

本書は、そうした将来の日本を考える上で「原発の危険性から目を背けない」為の、決して読み捨ててはいけない重要な一冊だと思います。

映画は観ていませんが、「熱しやすく冷めやすい日本人」にとっては、本書を詠むことを強くお奨めします。
最後に、日本の為に生命を賭けて懸命に作業してくださった全ての方々に、心からの感謝と追悼の言葉を贈ります。ありがとうございました。

#切ない #感動する #深い

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2021年08月16日

Posted by ブクログ

あの震災を知っている人は読むべき本。
知らない人にも勧めていきたい本。

日本を救った英雄たちのあの日の記録。

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2021年06月20日

Posted by ブクログ

物語としてみれば面白かったけども、著者の日常的な発言を見ていると、かなり偏った内容である可能性は極めて高い。書かれている内容が全て事実と思わない方が良いと思う。

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2020年12月13日

Posted by ブクログ

東日本大震災の直後は、津波の映像に衝撃を受け、福島原発の放水などに関しては、あんなの意味があるのかなと呑気に見ていました。
しかし、現実は「チェルノブイリ×10」以上の被害が出て、東日本が壊滅してしまう可能性がある事態に直面していました。
そして、それを救うために命懸けで日本を守ってくれた人たちのことが書かれています。
彼らの働きのおかげで、今暮らしていけています。
感謝です。

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2023年11月15日

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門田隆将(1958年~)氏は、中大法学部政治学科卒、新潮社勤務を経て独立した作家、ジャーナリスト。芸術祭 テレビ・ドラマ部門 大賞(2010年)、山本七平賞(2010年)などの受賞歴あり。
本書は、2011年3月11日の東日本大震災に伴って発生した福島第一原発の大事故について、同原発の所長を務め、現場で陣頭指揮をとった吉田昌郎氏とそのほかの多くの当事者へのインタビューをもとに書かれたノンフィクションである。2012年に出版、2016年文庫化された。また、2020年には「Fukushima50」として映画化された。
福島第一原発事故については、原子力発電に関する専門性の高いものを含めて、様々な視点から書かれた多数の著書が出ているが、過去に例のない、日本という国の国土や歴史を大きく変えてしまう可能性のあった大事故(実際に変わってしまったとも言えるが)に直面して、その時にその場所にいた人々は、どのように考えてどのように行動したのかを綴った記録として、本書は極めて貴重なものである。
私は原子力について詳しい知識があるわけでもなく、その時にその場所でどのような対応をするのが最も適切だったのかを自ら判断する能力は持たないが、本書に描かれた現場で必死にできる限りのことをしようとする人々の姿、「こいつなら一緒に死んでくれる、こいつも死んでくれるだろう、と、それぞれの顔を吉田は思い浮かべていた。「死」という言葉が何度も吉田の口から出た。それは、「日本」を守るために闘う男のぎりぎりの姿だった」というくだりに、涙を堪えることはできなかった。
事故の対応に関しては、吉田氏が東京電力本店の命令に反して注水作業を続けていた件が象徴的に取り上げられることが多いが、当時原子力安全委員会委員長を務めていた班目氏は、意思決定過程に対する不信感は示しつつも、「吉田氏の判断がなければ東北・関東は人の住めない地域になっていただろう」と述べており、原発を知り尽くした現場の長としての吉田氏の判断と行動が非常に重要な意味を持っていたと言えるのだろう。
極限状態の中で、リーダーとリーダーを信頼してついていく同志が日本を救った貴重な記録である。

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2021年11月15日

Posted by ブクログ

東日本を襲った大地震と津波によって起きた福島第一原発事故の現場で、何が起きて、その現場が何を思い、どう行動したかをリアルに描いた本書。もう9年以上経っているのに、読みながらテレビで見た映像が頭に浮かんだ。当時は国も報道も混乱していて、何が起きているのかよく分からなかったが、本書では、実際日本が「死の淵」にあったこと、たくさんの人が命をかけて闘ったことが、事実を積み上げる形で描かれている。単純にこの本をたくさんの人に読んで欲しいと思うし、このようなことが2度と起きないように皆が考えるきっかけになって欲しい。

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2025年01月19日

Posted by ブクログ

チェルノブイリ×10
このワードを見るだけでもおぞましい。。
そんな事態になりかねなかったこの事故に、もう少し事実を早く知るべきだったと後悔してます。
ホントにギリギリのところまで死を覚悟して福島を守る人たちの、綺麗事抜きに心打たれました。
非番の直長が集結したり、最後まで戦うことを決意したり、地元を守るという強い気持ちで闘う人々らに圧倒されました。
ただ感謝ですね。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

あの日。福島第1原発で何があったのか。
当時の所長、故、吉田昌郎氏をはじめ、様々な関係者に話を聞いた貴重なルポタージュ

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2023年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2011年3月11日14時46分ごろ、国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した東日本大震災の発生から今年で11年が経とうとしています。皆さんは当時の記憶がありますか。
当時、私は高校生で、卒業式を3日後に控えていました。友達と学校にいるときに地震が起こり、その日はそのまま数人の友人たちと学校に泊まることになり、宿泊行事に参加しているときのようなワクワク感と、状況がわからない不安で眠れない夜を過ごしたことをよく覚えています。こっそりと盗み見た校長室のテレビには、映画のワンシーンのような津波の映像と、赤く染まった日本地図が映し出されていました。計画停電による交通麻痺や、デマの拡散による物資不足。それでも連日のようにテレビで目にする被災地の映像は、いつまでたっても遠い国で起こっていることのように現実感がありませんでした。
今回紹介する門田隆将著の『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』は、あの日地震の影響で発生した大津波によって暴走した、福島第一原発の原子炉でいったい何が起こっていたのかを、ジャーナリストである著者が、90人以上の関係者に取材してまとめたもので、映画『Fukushima 50』の原作になります。毎日のようにテレビや新聞で取り上げられた原発事故は、わたしたちに大きな衝撃を与え、一時は日本の国土の半分が数十年立ち入り禁止になるのではないかとまで言われました。ただ、それらのニュースに対し実際に命の危機を感じた人は果たしてどれくらいいたでしょうか。きっと専門家が何とかしてくれると心のどこかで思っていたのではないでしょうか。この本には、死と隣り合わせの状況で懸命に原発と向き合った人々の姿が記録されています。あたりまえですが、彼らも私たちと同じ普通の肉体を持ち、家族がいる人間です。もっと言えば私たち一般人以上に、原子力や放射能の知識がある分だけ、その状況への恐怖も大きかったでしょう。
 11年が経過した今、一時は立ち入り禁止になっていた福島の一部地域も立ち入り可能になりました。福島第一原発も手続きをすれば一般人の見学も可能です。ここまでの10年は短かったでしょうか。それとも長かったでしょうか。ぜひ今の皆さんで考えてみてください。

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2023年10月10日

Posted by ブクログ

物語形式の小説だと思って読み始めたら、事実がひたすらに書き連ねてあって少しばかり読みづらいと感じてしまった。でも、あとがきを読んで記者の方が書いたと知り、この本を書くに至った筆者の想いを想像してこの書き方が最適だったのだと納得した。
あの時起こった事実を、世間の皆が知りえなかった真実を、出来うる限り読みやすい形に整えて世界に提示することが目的だったのだから、こういう作品になったのだな、と思った。
筆者の並々ならぬ使命感が、当時現場にいた方々への丁寧な取材と筆致から伺えた。
吉田所長含め、当時現場で奮闘された方々と、今も現場で作業を進められている方々に、改めて感謝の思いが溢れてきた。
この本を読んだことをきっかけに、あの震災以来初めて津波の映像等をYouTubeで観た。亡くなった方達のことを思うと涙が溢れてきたけど、未来に繋げなければと思い、防災グッズの備えについて家族に共有するに至った。
この本も素晴らしかったが、映画があるらしいのでぜひ観てみたいと思う。映像で原発のスケールや構造についてもう少し知っておきたい気持ちになった。

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2023年02月23日

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すごくリアル…でも話し言葉が主な証言とと状況説明が織り交ぜられていて読みやすい。

p.184 「現場で作業を終えて帰ってきて(検査を受けるべく)待っている作業員の前で、“なんで俺がここに来たと思ってるんだ!“ってどうなったんです。一刻の総理が、作業をやっている人たちにねぎらいの言葉ではなく、そういうことをしたわけでね。これはまずい、と思いました」

p.275 吉田屋現場の人間が戦ったのは、会社のためでも、自分のためでもない。世の中で1番、大切なものを「守るため」ではなかっただろうか。それは「命」である。原子炉が暴走すれば、多くの命が失われる。福島の浜通りに住む人、そこを故郷としている人々の命が失われるだけでなく、日本と言う国家の命さえ失われるのである。それがわかっているからこそ、吉田は海水注入を止めなかった。その本質をわかっていない人たちは、上から命令された通りのことをやるしかなかったが、吉田をトップとする現場の人間は、戦いの奉仕と言う失うことがなかったのである。

p.303 「中操に入っていったら、そいつがもう泣いていました。バツ悪そうに。私は、黙ってマスクの上からゴンって殴りました。なんていうか、やっぱり、交代に来てくれるって嬉しいんですよ。人間ですから」伊沢自身も、地震と津波の後、プラントが最悪の状態に突き進んでいった時、中操に駆けつけてくれた仲間たちの存在がどれだけ嬉しく、心強かったかしれない。俺たちがお前を見捨てるわけないだろ。後輩のマスクの上から黙ってゴンと叩いた伊沢の心境は、きっとそういうものだったに違いない。

p.315 「最期はどういう形で現場の連中と折り合い中か、そういうものをつけるか、と言うことです。それは、プラントとの折り合いをどうつけるかと言う意味でもあります。それから、水を入れ続ける人間は何人ぐらいにするか、誰と誰に頼むかとか、いろいろなことがありました。極論すれば、私自身はもう、どんな状態になっても、ここをはめられないと思っていますからね。その私と一緒に死んでくれる人間の顔を思い浮かべたわけです。これは発電班よりも、特に復旧班なんですよ、水を入れたりする復旧班とか、消化班とかですね。もうここまでくると、そっち側の仕事になるんでしょう。私、福島第一の補修部門では、30代の初めから働いてますからね、一緒に働いた連中、山ほどいますから、次々、顔が浮かんできました」

p.317 「吉田さんは、その後、ゴロンと横になったんです。ハット思いました。ああ、吉田さんもいよいよ、と思いました。吉田さんは、しばらく横になったままでした。私たちには吉田所長だけが頼りでした。吉田さんは来鳥ない人というか、素のままの人なんです。見た目大きいですが、実際に人間として大きい。どんなことがあっても、逃げない人で、みんなが頼りきっていました。その吉田さんが、そういう状況になってしまったんです。私はもうダメなんだと思ってしまいました。うちの千夏工房の人間が机の下で倒れている吉田さんに“しっかりしてください。大丈夫ですか?“と声をかけて起こしたのは、30分ぐらい経ってからだったと思います」

それは、「日本」を守るために、戦う男のギリギリの姿だった。

〈関連書籍リスト〉
・船橋洋一『カウントダウン・メルトダウン』
・共同通信社原発事故取材班『全電源喪失の記憶ー証言・福島第一原発ー1000日の真実』
・NHKスペシャル『メルトダウン』取材班による『福島第一原発7つの謎』

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2023年01月25日

Posted by ブクログ

福島第一原発事故の現場では何が起こっていたのか、関係者の証言をもとに書かれたノンフィクション。

線量が徐々に上がっていくギリギリの状況の中、死ぬ覚悟で事態収束にあたった人々には頭が下がる。

この有事に対し、冷静に現場を動かした今は亡き吉田所長と、冷静さを失い現場に恫喝する首相の姿は、対照的に描かれており、どちらがリーダーとして相応しいのかということがよく分かる。

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2021年07月08日

Posted by ブクログ

3.11 から10年、福島原発事故は風化され私たちの記憶から忘れ去られようとしています。

東日本大震災は巨大地震と大津波により、世界最悪レベルの原発事故を引き起こしました。

最も震撼した最悪の事態はかろうじて回避されましたが、福島第一原発では命を懸けて必死に戦い、世界からFUKUSHIMA50 (フクシマ·フィフィティ) と呼ばれた原発スタッフの驚愕の真実がありました。

登場人物はすべて実名。吉田所長をはじめ東電や協力企業、自衛隊、政治家、科学者、地元住民など多岐にわたり、多くの関係者の取材をもとに事実に忠実に再現されていると言われています。

現場パニックは凄まじく想像を絶するものでした。原発事故から1年間、この本が世に出るまで、殆んどの国民はこの真実を知りませんでした。
原発事故の報道に一石を投じる一冊です。

原発の是非を問う前に一度手にされることをお薦めします。

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2021年05月22日

Posted by ブクログ

3.11に発生した福島第一原子力発電所での大規模な事故。この事故がとんでもなく被害が尋常で、福島が放射性物質で汚染された、ということは(当然ではあるが)知っていた。もはや国民であれば知っている事故だと思う。原子炉建屋が爆発したことも知っていた。
しかし、「事故が起きた」ことは知っていても、「なぜ事故が起きたのか」「どこに異常があったのか」「事故後にどのような対応を行い、事故終息へと向かったのか」はほとんど知らなかったので、本作を読んだ。
とてもわかりやすい内容だったし、チェルノブイリのドキュメンタリードラマを見たり「チェルノブイリの祈り」を読んだりしていたので、「チェルノブイリ×10」という最悪の想定の恐ろしさに震えた。
2011年のあの時、大地震こそ起きたけど自分の家は無事だったし避難も必要ないし、テレビがずっと事故の情報ばかりだなあなんて思いながら、私は呑気に過ごしていた。福島でのこの事故も、事故ってて大変そうだな、としか捉えていなかった。私が住んでいた地域は「チェルノブイリ×10」になってしまったら避難が必要な地域なのに。当事者意識がまるでなかったことで恐怖を感じずにいられたことは逆によかったかもしれない。
本作は福島第一原子力発電所で働いていた優秀な技術者、そして政府(政治家)、東京電力(本店)や、自衛隊など、様々な立場の人がどのように尽力し、この事故を終息させていったのかの記録だ。
あの現場にいた方々が逃げずに戦ったからこそ、最小限の被害に抑えることができ、最悪の事態になるのを防いだのかと思うと、尽力した方々に対してどう敬意を表せばいいのかわからない。極限状態に置かれた人間が、自分の命を厭わず、急性放射線障害になりかねないという状態の中、それでも福島のため、日本のために戦ったというのが本当にすごいなと思った。自分の命よりも見知らぬ他人を思いやれる人々があの現場にいたからこそ、今の日本があるのだと思う。

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2023年09月27日

Posted by ブクログ

3.11のことを忘れたくないと思い、読んでみることにしました。
原子力発電所で必死に働く人々と政府のすれ違いなど、様々な事情があったことを知りました。
葛藤や国民からの非難がある中、最後まで戦い続けた人がいることを忘れてはいけないと感じました。

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2022年02月25日

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