あらすじ
いまだ令嬢の如き若奥様柿内園子が語る、船場のお嬢様徳光光子との異常で官能的な物語。文豪による「女性同性愛小説」。昭和6年4月、改造社より初めて単行本として刊行された。
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Posted by ブクログ
昼ドラのように人間関係がめちゃくちゃドロドロしていて抜群におもしろい。唯一マトモそうに見えた柿内幸太郎すら、なんと最終的には徳光光子と関係をもつに至る。とにかく、登場人物の誰ひとりとしてマトモな者はおらず、全員が異常者である。しかし、本作の真に恐ろしい部分は、その登場人物が展開する愛憎劇それ自体ではなく、果たしていったいなにが真相であるのかよくわからないところである。ラスト・シーンで園子の独白によって明かされるところによれば、園子と幸太郎と光子は3人で心中を試み、園子だけが生き延びたという。しかし、そこに至るまでの過程において、まるでオセロのように、セクションごとに展開が一転また一転とすぐに変わってしまう。ある人物がなにかを主張すれば、そのすぐあとにいやアレはウソだと言われる。頭の中がこんがらがってしまうが、とにかくそのような状況なので、どうして最後だけ書いてあることをそのまま鵜吞みにすることができようか。「たまたま」ひとりになったから物語が終わるのであって、もし3人とも生き延びていたら、やはりつぎのセクションでまたどんでん返しがあるのではないだろうか。そうなるとコレはもう終わりのない迷路のようなもので、じつは谷崎が伝えたかったことは、このような関係こそが男女の本質だということなのではないか。
Posted by ブクログ
よい、だいぶおもしろい。
もっと具体的にエロエロしてるかと思いきや、そういった描写はなく、どろどろと痴情のもつれみたいな話。んでもって同性愛からの夫に飛び火でとんでもない話だ。
こんなんでもおもしろくて文学してるんだから谷崎はすげぇなぁ。
Posted by ブクログ
これさー、90年前の作品だよね?ってくらい、面白かった。
谷崎潤一郎のこういう話、めちゃくちゃ面白いよね。痴人の愛的な感じでよかった。
ただ、あまりにも倒錯的、悪魔主義的だなと思うので、私は痴人の愛の方が好きだな
光子×園子、光子×孝太郎…
最後に服薬自殺を3人で図って、生き残ったのは園子なんだけど、園子が「自分だけ生き残ったのが悔しくて」って言ってたけど、それが光子の策略なのではと思うみたいなことで、死してなお、光子は園子の心を縛り続けるのか、と……すごい女だな。園子・孝太郎夫妻に薬を飲ませて続けたりとか……
こんな女、現実にいたらめちゃくちゃ怖いよね
Posted by ブクログ
2024/06/10
卍、まんじ
※書き方間違えると、ハーケンクロイツになってしまう....
全編、異様な迫力に満ち満ちた小説。
柿内園子というひとりの女性が、ある事件のことの顛末を証言していくお話。
話し言葉で書かれていて、改行がない。
文字のてんこ盛り。
本を開いただけで、異様なイメージなのに、
読んでいくと、さらに異様なワールドに巻き込まれてしまう感じ....
しかも、大阪言葉。これが、この小説の魅力をさらに倍化させている。
いくら、関東大震災を契機として、
関西に移住したからって、
東京・日本橋生まれの生粋の江戸っ子谷崎が、
勝手が違うことばの大阪弁で小説を書き上げるのは並大抵の苦労ではなかったはずだ。
※助手をおふたりつけたそうな。でしょうなあ〜
しかし、大阪言葉、関西のことばですか。
こればっかりは最強、魅力があって、他県の人間はとても敵いません。
でも、現在の大阪弁というのは、谷崎が描いた卍の戦前の大阪弁とはだいぶ変ってきている気がします。
例えば、古い日本映画でいうと、浪花千榮子ね。
浪花さんが喋っているだけで、なんか独特の大阪言葉に、聞き惚れてしまいます。
現在、浪花さんみたいな大阪言葉を話されるひといらっしゃるのでしょうか?
卍、
お話は二点三点していき、スリリングであり、やっぱり谷崎らしい、"性"についても多々考えされられてしまいます。
「蓼喰ふ虫」、中公文庫で出たようです。
20代の頃読んだが、よくわからなかった。
再読します。