あらすじ
生涯最後の旅と予感している夫・武田泰淳とその親友、竹内好とのロシア旅行。星に驚く犬のような心と天真爛漫な目を以て、旅中の出来事、風物、そして二人の文学者の旅の肖像を、克明に、伸びやかに綴った紀行。読売文学賞受賞作。巻末に竹内好「交友四十年」を収録する。
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Posted by ブクログ
海外旅行エッセイが好きで、読んでみた。
このエッセイ…というか日記を読んでいて、なぜ自分が他人の旅行記を読むことが好きなのか、考えさせられることになる。
通常、旅行エッセイでは、筆者が旅先で眺めた風景や交流した人々、口にした食べ物から考えを巡らせ、反省したり、新たな知見を得たりとか、そういったことが盛りだくさんなケースが多い。そしてそれか旅行エッセイというもののフォーマル、典型的な形だと思っていた。
後書きにもあるが、これは完全なる日記である。目にしたこと、耳にした知人や夫の会話、食べた料理、他の旅行エッセイには類を見ないほど、淡々と記してある。
正直、最初はそのあまりの単調具合に読むのに飽き飽きしてしまった…のだけど、いつのまにかそのリズミカルな叙述、周りの自然や空気を捉える暖かな感性、そしてクスりとしてしまう、ちょっとした笑い。(狙ったフレーズじゃない所がさらに良い)僕はいつのまにか、引き込まれていた。
旅行記、旅行エッセイというものに対する考え方が変わる一冊だった。