あらすじ
外国では、退位した王・皇帝に特別な呼称はない。それは、王・皇帝という地位に権威・権力が付随し、いったん退位すれば、その権威・権力はすべて次の王・皇帝に引き継がれるからである。ところが日本では、退位した天皇は「上皇」と呼ばれ、ときに政治の実権を掌握してきた。上皇による政治=「院政」という言葉は、引退しても権力を手放さない実力者のあり方を指す表現にもなっている。では「上皇」とは、どのような存在だったのか? 200年ぶりの天皇譲位を前に、上皇の歴史を辿り、現代における天皇・皇室、そして日本と日本人を考えるための視座を提示する。
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Posted by ブクログ
<目次>
まえがき
第1章 「ヤマト」の時代~平安朝
第2章 上皇による専制~白河・鳥羽・後白河
第3章 専制からシステムへ~承久の乱がもたらしたもの第4章 朝廷と幕府~御嵯峨上皇の院政を例に
第5章 古文書から読み解く院政~官宣旨から院宣へ
第6章 上皇による徳政の変容~両統迭立期から南北朝だ第7章 存在を脅かされる天皇・上皇~バサラ・義満・信長
第8章 権威としての復活
終章 近代天皇制の中で~終身在位する天皇
<内容>
来年の4月で「平成」が終わる。そこで問題視されてきた天皇の退位。近代の「皇室典範」では「終身在位」が全て。その中で「上皇」となるわけだから、大いなる問題だった訳だ。この本は、その「上皇」を歴史的に分析したもの(本郷さんの専門の一部らしいし…)。なかなか示唆に富むことが書かれている(気づかなかったこっちが勉強不足なだけだが…)。院政の始まりである平安末期は、システムとしては未熟で(当たり前だが)、システムができるのは鎌倉後半。どんどん天皇・上皇の意味付けが低下した戦国期を経て、秀吉のあたりから再浮上し、江戸時代の「国学」の台頭から「尊王攘夷」となり、明治期は「立場上トップだが、政治参加しない」のが天皇の位置づけだった。
現在の「女系天皇」が意味するものも理解できたが、近い将来に「男系」のみでは破綻するのは必至なことも分かった。