【感想・ネタバレ】上皇の日本史のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2018年09月20日

ふむふむなるほど、という一冊。歴史的には政治的権力の担い手としての上皇がいる方が当たり前であり、摂関政治とも共存して(というより混じり合って)いたこと、一方、天皇は権威の源泉として存在していたこと、それであるがゆえに、武家政権の権威づけとしての天皇が活用され(秀吉と家康の例はわかりやすい)、武家政権...続きを読むの完成形となった江戸時代を最後に上皇が存在しなくなったこと、などが私の理解です。天皇退位に伴い、新天皇との関係が気になるところ。本書を敷衍すると、結局権威の源泉は一人、という気がしますが。

0

Posted by ブクログ 2022年11月11日

「上皇」は英語訳がないんですね!
つまり、英語圏には王が退位したあとは権力をもたない、ということ。
他にもイロイロと内容たっぷりでしたが、冒頭に記載されていた、これが一番驚きました。
日本の権力構図はわかりにくい。
特に鎌倉時代後期の北条家と将軍家。

0

Posted by ブクログ 2019年07月06日

上皇の歴史を紐解く一冊
『上皇の日本史』著者の本郷和人先生は、大河ドラマ「平清盛」の時代考証も担当されました。
まず、前書きで、「地位」か「人」かということを述べています。

皇帝や王様はその国で最上位の権限をもちます。だからひとたべ皇位・王位を獲得した人は、死ぬまで地位を手放しません。「終身在位」...続きを読むが当たり前。「地位」こそが「人物」を正当化するからです。
(中略)
これに対して日本は異なるのです。「世襲」の観念が強固である。世界のどこの国でもどこの地域でも、世襲は強力な原理として機能しますが、日本はとくにその傾向が強い。そのため、「地位」よりも「人」が重視されます。
「人」を正当化するのは第一に血統であり、家柄です。「地位」が人に権限を付与するのではなく、大きな権限を創りあげた「人」がしかるべき地位を選び取る、という順番になります。

実は天皇を退いた人、上皇という位は日本にしかありません。他の国では前皇帝、前国王とは呼ばれても、それに当たる地位は無いのです。
しかし、「地位」より「人」を優先した日本では、上皇という独特の地位が誕生しました。

本書では、ヤマト朝廷の大王(おおきみ)の時代から始まり、奈良時代、天皇・上皇の誕生、平安時代の摂関政治を経て院政期、武士の台頭、鎌倉時代の承久の乱、乱後のシステム化されていく上皇、室町時代には足利将軍に取って代わられて行き、戦国時代には天下人の権威を飾るための存在になって行く。江戸時代には、太平の世で儀式に関する需要が高まり皇室の存在が思い出されるようになるも、光格上皇を最後に上皇の位は途絶えます。

このように、上皇という位の変遷を見ながら、日本の歴史が語られています。

現代の上皇
大河ドラマの影響で上皇という存在に興味は持っていたけれど、古代から今に至るまでの上皇の歴史について触れたのは初めてでした。最初の頃は上皇自身が権力を奮っていたけれど、武士が幕府を開いてからは武士に権力を奪われ、そのうち皇位の継承まで介入され…、今では皇室そのものが政治から遠ざけられています(天皇親政の復活などは望んでいませんよ。念のため)。

私は、陛下がお気持ちを表す前から「第二の人生としての上皇」というポジションがあってもよいのではないかと思っていました。天皇の公務は激務だと言われています。災害が起きれば被災地に行くし、そうじゃない時でもスケジュールがかなり詰まっているようで、もう次世代に譲ってもよいのではないかと。そう考えていたのです。

ただ、実際にお気持ちを表し、退位(譲位)が現実的になってから、上皇の位の復活は有識者会議などでもかなり渋られていたように思えました。
私としては、「堅いこと言わずにスパッと決めてあげなよ〜。保元の乱なんて1000年前の話じゃん」などと思っていたのですが、本書を読んで、渋られていたのがなんとなく分かりました。
上皇というと、歴史を踏まえればどうしても権威が連想されてしまうからです。
今回の譲位が皇室典範改正ではなく、特例法による措置にしたのもその辺りを考えてのことでしょう。

しかし、それでも、平均年齢が1000年前とは比べ物にならなくなった今、政治や権威などとは切り離した「第二の人生としての上皇」の位をどうにか作って差し上げられたらと、私は切に願っています。

0
ネタバレ

Posted by ブクログ 2018年09月21日

<目次>
まえがき
第1章  「ヤマト」の時代~平安朝
第2章  上皇による専制~白河・鳥羽・後白河
第3章  専制からシステムへ~承久の乱がもたらしたもの第4章  朝廷と幕府~御嵯峨上皇の院政を例に
第5章  古文書から読み解く院政~官宣旨から院宣へ
第6章  上皇による徳政の変容~両統迭立期から...続きを読む南北朝だ第7章  存在を脅かされる天皇・上皇~バサラ・義満・信長
第8章  権威としての復活
終章   近代天皇制の中で~終身在位する天皇

<内容>
来年の4月で「平成」が終わる。そこで問題視されてきた天皇の退位。近代の「皇室典範」では「終身在位」が全て。その中で「上皇」となるわけだから、大いなる問題だった訳だ。この本は、その「上皇」を歴史的に分析したもの(本郷さんの専門の一部らしいし…)。なかなか示唆に富むことが書かれている(気づかなかったこっちが勉強不足なだけだが…)。院政の始まりである平安末期は、システムとしては未熟で(当たり前だが)、システムができるのは鎌倉後半。どんどん天皇・上皇の意味付けが低下した戦国期を経て、秀吉のあたりから再浮上し、江戸時代の「国学」の台頭から「尊王攘夷」となり、明治期は「立場上トップだが、政治参加しない」のが天皇の位置づけだった。
現在の「女系天皇」が意味するものも理解できたが、近い将来に「男系」のみでは破綻するのは必至なことも分かった。
  

0

Posted by ブクログ 2018年12月24日

 来年、上皇が江戸時代以来、久しぶりに天皇家にお出ましになる。平安時代後期に隆盛を誇った上皇が一般的によく知られているが、本書は古代からの上皇の系譜から日本史をとらえなしたもので、新しい視点を得たことが新しい問いかけとなっている。

 元々は天皇だったのに、上皇になるととたんに世俗性を帯びて自由度が...続きを読む高まる。日本における皇位継承の認識は、「天皇」に権威による超越性を求めるのだが、上皇になると超越から降りてきて、権力化するのである。

 今後、天皇家の継続も危ぶまれるところにあって、この認識システムが何か貢献できるところがあるだろうか。

0

「学術・語学」ランキング